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道を想う~京都絞り見学

普段着として、着物を着るようになって、約1年ほどになります。
とはいっても、毎日着物ではなくて、気が向いたときに着ています。

着物は子供のころから好きで、節目には着せてもらっていたし、中学生頃になると、ご近所の着付できるおばちゃんの家に押しかけて、お祭りの日は着せてもらっていました。

大学はミッション系に行ったので、卒業式がガウンだと入学式の時に説明会で知り、ひどくがっかりしたことを覚えています。
…だって、袴ってさ、教師にでもならなかったら、卒業式くらいじゃない?

でも、ミッション系といっても、クリスチャンだけではない学校だったので、実は、卒業式は2日間あり、1日目が袴、2日目の本番?がガウンでの学位授与式という、柔軟な学校で、袴を着ることができました。

大人になってからも失われない、持ち前の好奇心と探求心で、着付を習い始めたのが昨年の初夏。

だんだんと好みが分かってきて、糸紬ぎ、反物の産地、染めの技術…を知ると生まれてくるのが、現地に行きたい、職人さんに会ってみたいという気持ち。

例えば、普段着着物の代表は、木綿着物でしょうか。
伊勢木綿や片貝が有名のようです。
そうなると、近くの呉服屋さんでも置いてあるところはあるのですが、伊勢や片貝(新潟)へ行きたくなるのです。
大島紬を見れば奄美大島に思いを馳せ、絞りを見れば、愛知の有松や京都を想像するのです。
(単なる、旅好きでもある)

以前、金沢に住んでいたときには、お気に入りの九谷焼工房を見つけ、直接、工房までお買い物へ行っていたし、倉敷に住んでいたころには、備前焼の窯元の若女将と仲良くなり、いろいろと教えていただいたりしました。

前置きが長くなりましたが、
私は、その土地、それを作っている人のそばに行きたい思いが強くあり、少し前になりますが、京都へと行ってきました。

私は、絞りが特に好きで、浴衣や着物も絞りを着ることが多くあります。
(初心者なので、リサイクルでお手頃に求めたものばかりです…)

まず、絞りを体験してみたい!と、雪花絞りを体験できる工房へお邪魔しました。
大判の風呂敷を染めていきます。

旅行 引用 写真コラージュ

染料を溶かした水に漬けること30分。

傾いてしまって、てっぺんが出てしまっているのですが、本来は全部浸かります。
染まらない部分は、三角の真ん中あたり。
これは、布が水を吸い込むスピードと染料を吸い込むスピードが違うために起こるのだそうです。
あんまりゆっくり染料に入れると、布が先に水を吸い込んでしまい、染まりが悪くなるようです。

そして、出来上がったものがこちら。
奥のブルーは、何でも青いものを選んでしまう友人のもの。
同じ畳方でも、抑える圧力や染料の色で、全く違って見える不思議。

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やわらかな赤に染まり、大満足でした!

染めている間、工房を見学させていただきました。
私たちが絞りと聞いて思い浮かべるのは、有松絞に代表されるようなものかなと思います。
布の一部を小さく引いて糸で縛り、しぼとよばれる立ち上がりが出来る染めの技法。

このすべての工程を手作業でするものを、【手疋田絞り】
布を針先で引くものを【針疋田絞り】
針で縫い締めて染まらないようにするのを【縫締め絞り】
染まらない部分をビニールで覆い縛り上げるのを【帽子絞り】
染めない部分を木桶の中に入れて蓋を締めて染めるのを【桶絞り】

京絞りといわれるものは、鹿の子が有名ですが、たくさんの技法があり、実は、私たちも目にしたことがあるようなものが多かったりします。

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写真の左と真ん中は、何十メートルにも織られた1枚布に、職人さんたちが、染めによって鳥獣戯画を描かれたものです。
縁の葵の葉は、帽子絞りだったかな。
動物たちの黒い縁取りの線は、縫締め絞りの上に、絵描きさんによって色が付けられているそうです。

これ、何をしているかというと、『オリンピック』なんです!
動物たちが、生き生きと、オリンピック競技をしている絵巻。
遊び心たっぷり。

テレビの取材が来た時に、
「若い人たちの感性ってすごいですね!」と言われたそうなんです。
でも、これを作られた職人さんたちの平均年齢は…70歳!!
若いとか関係ない!

約30年くらい前に元号が昭和から平成に変わった時、同じように1枚布に鳥獣戯画を描かれたものを、作成されています。
令和になるタイミングでオリンピックが決まったので、これを作ろう!と再び立ち上がる職人たち。
もちろん仕事じゃありません。合間に作られる気概。
この2枚が一緒に見られるのは、ここしかありません。
(オリンピックやりそうだけど、これを国立競技場に飾ってほしいなぁ~)

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この後、桶絞りの職人さんとお話をさせていただきました。
この道、50年。
絞りは、1職人1工程なんだそう。
ひとつの反物の中に、疋田絞りも帽子絞りも使われてくるけれど、それは別の職人さんがするのは普通だそうです。

お話を聞かせてくださった職人さんは、桶絞り専門なんだけど、帽子絞りもできたら、1回の染めでできること増えるなぁと思って、数年前に帽子絞りをはじめられたそう。
そして、今は、染めも自分でできたら…と染めもチャレンジしていると。

道というのは、1本に決めて歩いてきたとしても、そこが何年も何十年も歩いてきたところだとしても、その横にある道に行ってもいいし、そこから伸びた枝葉を楽しんだっていい。
そこに年齢や思考を挟ませて、重たくなってるのは、自分でしかないんだなと教えていただきました。

ひとつの技術を真摯に淡々とやり続けてこられてきた職人さんの時間は、私が想像したってし足りることはないけれど、お話を聞きながら、涙があふれて、守り続けてきてくださってありがとうございます、ありがとうございますと繰り返すことしかできませんでした。

「若い人が興味を持ってくれるのが嬉しい。来てくれてありがとう」と、言葉をくださったことに、また、感謝があふれてきました。

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この後、まんまと、まさに文字通り、清水の舞台から飛び降りた私ですが、暑さのピークがやってくるころには、手元に届くかなぁ…とワクワクしております。


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