微笑みの惑星

(この星の人間は様々な文明を抱える。そして、その文化にはそれぞれに神を擁し、それぞれの建築物を建て、それぞれの民族衣装を編む。しかし、なぜだか全ての人類に共通する要素も存在している。笑顔である。)

ついに到着か。長かったな

 ええ。5年の宇宙航行に8度のワープ。太陽系から遠く離れた新たな銀河にたどり着いて、ようやく目的の星に辿り着くのです。あらゆる危機を乗り越えてきた。小惑星の群生や恒星の放つ強烈な放射線。彗星の特攻などを乗り越えて、ついに辿り着くのです。感無量だ

いや、まだ感動するのは早い。まだ我々は何も成し遂げていないのだ。いくら地球に似ている星であっても住んでいる人々がどのような生物かは分かりはしないのだ。

 そうですね。慎重かつ繊細な作戦を遂行します。さて、着陸だ


美しい。気候は温暖。心地よい湿度。木々には鮮やかな身がなっている。楽園だ

 そうですね。遠くには愛らしい生物の群れも見えます。果てしない緑の続く世界と明るい青に染まった海。ここがパラダイスなのか

よし、環境の美しさに浸るのはここまでにして、早速探索だ。拳銃の安全装置は外しておけ


 あれは?住民ですか?

そのようだ。しかし、様子がおかしい。あの表情は一体

 恐ろしい。憤怒のこもった目。食いしばった歯。我々が宇宙艇を止めた場所は、もしかしたら聖地か何かだったのでは

そうかもしれぬ。相手の科学力もわからず言葉も通じるかわからない。危険だ。撤退するぞ


おや、行っていまいましたね。一体どうしたというのだ

 わからぬ。彼らの母性で緊急事態でも起こったのだろうか。せっかくおもてなしをしようと思ったのに

ええ、我々にできうる最高の笑顔で迎えたのですがね


笑顔は地球では共通である。しかし、宇宙においても共通と言えるだろうか。


まわりまわって、世の中が幸せになる使い方をします。