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嘘日記#1 遥か空の彼方にて

宇宙航行日誌 246日目 (地球時間2309年11月2日)

私の乗る船も航行に出てはや、8ヶ月を超えたところ。特に何もない。恐ろしいほどに平穏な日々を送る。

ゼリー状の宇宙食、スペースウイダーミートソース味にももはや飽きてきた。結局箱今日地球の日本食が食べたくなる。宇宙船の中で生成される水の元を辿ることはしばらく前に辞めた。想像すればするほどにトイレに行きづらくなる。

宇宙の最大の脅威は孤独感だ。この時代に宇宙船で事故に遭うなど宝くじに当たるより珍しい。孤独感は事故の危険が取り去られた後に生まれた新たな脅威だった。叫んでも反響すら返ってこない。壁を叩き返してくる迷惑な隣人もいない。実に味気ない。

今朝寝ぼけて飛び起きた。誰かが寝室のドアを叩いたように思ったのだ。それは結局勘違いで宇宙を飛ぶ小石が船に当たっただけだった。

明日の朝ごはんは何にするかな。久々に梅茶漬けウイダーでも食べることにしようかな。やることといえばリモート会議を行いながら、といっても僕の声が地球に届くのは2時間後だが。この効率の悪い時間を埋めるために船の先端に座り、ただただ宇宙の果てを眺めるのみだ。

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