知らないセンソウ

(言い伝えの伝承は誰も聞く耳を持たない。聞くものがいたとしても、話半分に聞き流すくらいだ。大昔にカッパが出た沼、神が降り立った山を人間は平気で埋め立て、削り取る。それは言い伝えだからだ。言い伝えになってしまった事実はもはや事実ではなくなる。)

いけない。それだけはやってはいけないと言い伝えで言われておるのだ

 黙れジジイ!もう言い伝えで支配されるのはうんざりだ。てめえは古臭い閉塞的な時代を俺たちにまで押し付ける気か?

違う。わしはただ、お前たちに平和な世界を残さなければならないという先祖からの教えを守りたいのだ。この小さな村の中で生きていれば、争いも地位の上下もない。昨日と同じ明日が来るのだ

 そればっかりだ。お前は先祖のために俺たちを押さえつけていたに過ぎない。俺たちのためじゃない。お前と先祖のためじゃないか。俺たちは明日もわからぬ世界の中を生きていきたいのだ。刺激が何より重要なのだ

なぜわからない。センソウは恐ろしいことなのじゃ。やっと人類はセンソウをこの世から排除し、自分達の世界を狭めることで平和を守ってきたというのに

 知ったこっちゃないね。平和とは停滞ではない。停滞は退化と同義だ。おいぼれは時代と共に死んでいけ。俺たちは出ていくよ

待ってくれ、話せばわかる。殺すことはいつでも…

 悪いな。俺たちはもっと世界を知りたい。センソウなんかただの作り話だ。時代は変わっていくものなのさ。

 なんせ俺たちはセンソウを知らない

まわりまわって、世の中が幸せになる使い方をします。