見出し画像

シンプルライフとは何なのか?ミニマリスト、ゆるミニマリストとの違いは?

シンプルライフが何のか、ミニマリストとどう違うのか、よく分からなくなってきたので、頭の中を整理するためにこの記事を書いています。


日本におけるミニマリズムの台頭

まず、ミニマリストがどういうものか簡単におさらいしたいと思います。とは言え、昔ながらの質素倹約という概念とかにまで遡って言及するつもりはありません。

日本でいわゆるミニマリストが広まるきっかけは、2015年6月に出版された、佐々木典士さんの『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』や彼を取り上げたTV番組だということに異論はないかと思います。Googleトレンドで「ミニマリスト」というワードを調べてみてもそれくらいから急激に検索数が増えていることが示されています。

ミニマリストの存在が認知され出した当時、何もない部屋の床にミニマリストが一人ポツンと座るようなビジュアルは本当に強烈でした。モノであふれる生活空間がデフォルトだった多くの日本人の興味関心を引いたことは想像に難くありません。言わずもがな僕もその一人です。

正しい定義かどうかはさておき、多くの人は、ミニマリストとは「必要最小限のモノしか持たない人」のことだと受け取ったはずです。

持ち物を極限までそぎ落とす(徹底的に持ち物の数を減らす、サイズを小さくする)スタイルの行き着く先(ゴール)は「空き室のようにほとんど何もない部屋」でした。何をもってミニマリストと呼ぶかには、個人差のない、ある程度客観的な基準があるものだと考えられたと思います。

実際、色んな人がミニマリストを名乗り、自分の部屋や持ち物をSNSやブログで公開すると、「全然物が多い。そんなのミニマリストじゃない」といった、「俺の方が少ない」マウンティング合戦が起こりがちでした。

そのようなマウンティング合戦への反論として、多くのミニマリストは「必要最小限というのは、客観的に決まっているものではなく、主観的でいい」と主張しました。

ゆるミニマリストが主流派に

極限までそぎ落とすように徹底してやれる人は極少数です。当然、モノを減らすという考え自体には共感・賛成してもそこまでやるのはやりすぎだと感じる人が出てきました。「完璧じゃなくていい、ゆるい」ミニマリズムを採用する「ゆるミニマリスト」を自称する人たちです。

「必要最小限とは主観的なものだ」というのは確かにその通りですが、悪く言えば、ゆるミニマリストが発信する「頑張らない」の自己正当化に利用された一面もあると思います。

現在、色んなミニマリストのブログや動画を見る限り、「ゆる」を付けようとそうでなかろうと、ミニマリストを自称する(目指す)人の大半は、「モノの数は人それぞれでいい」という考えを持っていることが見て取れます。

興味深いのは、一回徹底的に持ち物を手放した人達でさえ、「結局ほどほど(少し少ないくらい)が一番」という結論に至るパターンが多いことです。実際、「ミニマリストやめました」発言もよく目にします。

宗教に例えると、原理主義(完璧にしなくちゃ)派と世俗主義(ゆるくやろう)派の紛争で、後者が勝利したような感じだと思います。頑張らないダイエットなどと同じで、ガチのミニマリストよりゆるいミニマリストになろうという考えが支持を得やすいのは自明の理ですね。

シンプルとミニマルの違い

「基準は人それぞれ」と言えば寛容で聞こえはいいですが、一方でミニマリズムというものが曖昧になってしまったことは否めません。

ミニマリズムとシンプルライフ志向の違いは何のか?ミニマリズムとゆるミニマリズムの関係のように、シンプルライフの究極系がミニマルライフなのか?

僕のブログも含めて、ミニリストやシンプルライフ系のブログやYoutubeチャンネルは腐るほどあれど、その数に比してこの違いについて考察または言及している記事や動画は少ないです。

そんな中、ミニマリストの第一人者しぶさんは、デザインや印象(イメージ)的な話になりますが、次のように説明しています。

同じ物を見てもシンプルだと感じる人もいれば、ミニマルだと感じる人もいる、という前置きをした上で、シンプルとミニマルの概念自体には明確な違いがあるとしています。

  • シンプルとは、調和であり、無印良品のインテリアのように、モノがたくさんあってもすっきりしていること。つまり、モノの数はそこまで重要ではない。無難で居心地が良い空間。

  • ミニマルとは、強調であり、モノの数は重要。モノが少なければ少ないほど、一つ一つがが際立つ(良い意味で目立つ)。何かを目立たせるために他を削ぎ落す、とも言える。厳選された少数精鋭の空間。

これはしっくりくる説明です。しかし、今度はゆるミニマリストが分からなくなりました。決して原理主義に立ちたいわけではないのですが、ゆるいミニマリストというのはパラダイムやコンセプトとして成立しない気がしてきます。

そぎ落とすのがミニマリズムだとすると、中途半端なそぎ落としでは何も得られないのでは?ゆるいミニマリズムってそれはもうただ平均よりちょっとモノが少ない以外の何者でもないのでは?

疑問は尽きませんが、一旦保留して話を進めます。

ミニマリストとシンプルライフ志向の違い

ミニマリズムとシンプルライフ志向は「モノの少なさ」という点で共通していて違いが分かりにくいですが、ある方は両者の違いは焦点の違いであると述べています。

ミニマリストの場合、とにかく焦点が「自分」に当たっている。ライフスタイルは関係なく、自分を基準として「欲しいもの」や「やりたいこと」以外を削ぎ落としていく。ミニマリストによっては、断捨離対象に「普通の暮らし」や「恋人」などが当てはまる場合もある。<中略>シンプルライフの場合、とにかく焦点が「暮らし」に当たっている。まずは一般的な暮らしを基準として「よりシンプルな暮らし」を追い求めていき、その結果として「豊かな暮らし」を手に入れるのがコンセプトだ。だから、ブログの内容も基本的に「暮らし」の枠を出ない。

引用元:ミニマリストとシンプルライフの違いをそろそろ誰かが決めてしまおう (satoriot.com)

「焦点が違う」というはまさにその通りだと思いました。シンプルライフには「ライフ」が付いているように、「暮らしにフォーカスしている」というのは、言われてみれば当たり前ですね。

また、単純にモノを減らせばいいということではなく、対象についてよく考えることによって生活の質を向上させるのが目的である、とシンプルライフを洞察した次のような記事もありました。

例えば掃除において、簡便さを追求するならば、極論すればロボットに掃除をさせればいい。しかし、生活の場でのシンプルさとは、それをホウキとチリトリで済ませることだ。細分化された道具をたくさん揃えるのではなく、少ない道具を工夫をして使いこなす。重要なのは、この「工夫して使いこなす」ということだ。 対象についての深い洞察が、作業の本質を浮かび上がらせる。それが作業の質を向上させる第一歩だ。つまり、シンプルライフとは、物を減らすことが目的なのではない。生活の質を向上させることこそが最終目的なのだ。

引用元:シンプルさを保つということ:Crazy for life(セイカツ イチバン、IT ニバン):エンジニアライフ (atmarkit.co.jp)

これらの引用記事を踏まえて、僕なりの解釈は次の通りです。

  • ミニマリストの本質は、仕事であったり、趣味であったり、何かしら自分の最重要事項に一点集中すること。そのために他を削ぎ落すことであり、ミニマリストの典型的なイメージであるすっきりした部屋はあくまで副産物。

  • シンプルライフ志向は、日々の暮らしが最重要項目になっている。「ライフ」は「人生」という広い意味合いではなく、「日常生活」という限定的な意味で用いられている。特に家の中でいかに快適に過ごすかが主眼であり、そのため話題の大部分が居住空間や家事(家の中でのタスク)に関するものになっている。

  • シンプルライフ志向は、快適な生活のために、ミニマリストの「モノを減らす」というメソッドを部分的に借用している。

ゆるミニマリストとシンプルライフ

さて、話の展開が理路整然としていなくて申し訳ないのですが、上述の「ゆるミニマリストとは何のか?」の疑問に戻ります。多くのゆるミニマリストの発信を見る限り、彼らの焦点も暮らしに当てられています。

一般的には、ミニマリストとゆるミニマリストの違いは、極限まで少なくするか、そこそこ少なくするか、という程度の差であるように定義されています。しかし、ゆるミニマリストは暮らしに焦点が当てられている点で、ミニマリストというよりシンプルライフ志向だと考える方が自然かもしれません。

ミニマリズム的に考えると、ほどほどに削ぎ落すのは中途半端でしかないように思います。なぜなら、ミニマリストの魅力や価値は、突き詰めて初めて現れる美しさだからです。一方、シンプルライフの場合、バランスが重要であり、極限まで削ぎ落すのは不便で本末転倒ということになります。ほどほどにモノを減らすという考えは「快適に暮らす」という視点に立っているからこそでしょう。

自分はミニマリストなのか、シンプルライフ主義者なのか

自分を含めて、モノを減らすというアプローチをもってしてミニマリストを名乗っている人が大半なのではないでしょうか?

結局のところ、ミニマリストとは自分にとっての「一番」が「明確」になっている人のことでしょう。シンプルライフではそれが暮らしなんじゃないかと思うかもしれませんが、「生活全般」では「広すぎる」ということなんだと思います。

よくよく考えると、自分にはそこまで明確な一番がありません。その意味で、適切な肩書(自分を当てはめる名称)を選ぶならシンプルライフ主義者(ちなみに、シンプリストという言葉は本来誤用)になるのでしょう。

その一方で、極限まで突き詰めるミニマリストの美しさに惹かれていることもまた事実です。なので、プロフィールからミニマリストの単語を外すかどうかは保留としたいと思います(苦笑)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?