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栄養成分表示を考える

加工品などの裏に書かれている、熱量、たんぱく質、脂質……などの項目が並んだ「栄養成分表示」について、ちょっと考えてみました。


いよいよ表示に関するお問い合わせが!


うかspice+で育てている、自然栽培のハーブたち。これを使って作ったハーブソルトが、ありがたいことに、すこぶる人気です。
個人のお客さまがリピートして買ってくださったり、「知人へのギフトにしたいから」とまとめ買いをしてくださったり。
最近では、お店で取り扱いたいという嬉しいお話もずいぶんいただくようになりました。

そんななか、「栄養成分表示」の話が出てきました。

現状、うかspice+のハーブソルトほか、すべての商品には栄養成分表示がありません。取扱店さんのなかには、栄養成分表示がついていないことを心配されるところもあるようで、お問い合わせを受けたのです。

以前、ハーブティーを栽培・製造なさっている同業者さんから、「栄養成分表示をつけるために検査機関に依頼をしたが、金額も安くはないのでキツイ」という話を伺っていたので、いよいよ来た!感が。

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素朴なギモン。そもそも成分は入ってる?


栄養成分表示についてよく知らないな、ということで、遅ればせながら調査開始。うかspice+にとって必要そうな情報だけをざっくりまとめると、このような内容です。

1. 日々の健康管理に役立てるために、従来の「食品衛生法」「JAS法」「健康増進法」を統合して2015年に施行された法律(食品表示法)
2. 表示の準備のため、しばしの猶予期間を経て、2020年4月より義務化
3. 管轄は消費者庁
4. 対象は、一般消費者向け(業務用は除く)の加工品すべてと添加物すべて
5. 単位あたりの、熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量の5つが表示必須項目。

ここで、かねてより「」と思っていたことが、さらに「???」に。

「ハーブソルトって、たぶん、たんぱく質も脂質も炭水化物も入ってないんじゃないかなぁ」

ハーブソルトの原材料は、ハーブ数種類と天然塩のみ。もっといえば、うかspice+のほかの商品は、ドライハーブだけの「ドライハーブティー」、スパイスだけの「カレーパウダー」、同じくスパイスだけの「チャイミックス」など。これらに至っては、食塩相当量すら該当しません。

検出されないものをわざわざ費用をかけて調べて、商品自体が小さいものなのに、さらにスペースを割いてゼロ表示するというのはいかがなものか。

表示を省略できるケースを発見

そうしたら、ありました。

消費者庁が発表した「<事業者向け>食品表示法に基づく栄養成分表示のためのガイドライン 第2版(平成30年5月)」。
10ページ。
第1−2「表示が必要な栄養成分」の(2)に「加工食品、生鮮食品、添加物における栄養成分表示の規定」とあるのですが、その「ア−(イ)」に「一般用加工食品における栄養成分表示を省略できる場合又は表示を要さない場合」を見つけました。

栄養成分表示が義務付けられはしましたが、省略できる場合、または表示を要さない場合があるとのこと。該当するケースは①〜⑤まで用意されていて、そのいずれかに該当すれば表示を省略することができます。
うかspice+は、③と⑤に該当。もしかすると④にも当てはまるかもしれません。

順番に見ていきましょう。


省略理由その1「メインの栄養源ではないこと」

③ 栄養の供給源としての寄与の程度が小さいもの(次のいずれかの要件を満たすもの)

そう書かれていまして、表示しなければならない栄養成分5項目すべてがゼロである場合、または、一般的に考えて、1日に食べる量が微量である場合は表示しなくてもいいようなのです。

ハーブソルト、1日に大量に摂りませんよね? 

加えて、書いてあります。

「⇒例えば、コーヒー豆やその抽出物、ハーブやその抽出物、茶葉やその抽出物、スパイス等が考えられます。ただし、スパイス等のうち一度に多く使用する場合が想定され、かつ、その場合に栄養の供給源となり得るものについては、栄養成分の量及び熱量の表示を省略できません」

ビンゴ。しっかりと「ハーブ」「スパイス」の文字がありました。
カレーパウダーの場合は「一度に多く使用する場合」や「栄養の供給源となり得るもの」に当てはまるかどうか微妙なところもありそうですが、個人の判断に委ねられる範囲内といったところでしょうか。



省略理由その2「小規模事業者であること」


⑤は、文言が長いので意訳すると、消費税法の基準にのっとって、消費税を収めることを免除された小規模事業者であること。
消費税法にある、免税事業者とはズバリ、課税売上高が1,000万円以下の事業者のこと。しかも、従業員数が20人以下であること。
うかspice+は、今のところ売り上げもボチボチ以下ですし、育てて作って販売して、というのもほぼ1人でしていますから、どちらもドップリ当てはまります。

ということで、栄養成分表示の省略が可能です。

ついでに④も見てみます。
④は「極めて短い期間で原材料(その配合割合を含む。)が変更されるもの」とされていて、日替わり弁当などのようにレシピが3日以内に変更されるものや、合挽き肉や白モツなどのようにその都度原材料の部位などが変わるものも省略してよいようです。

うかspice+のハーブソルトやドライハーブティーは、商品名に「季節の」と付けているくらいに、季節によって収穫できるハーブの種類が変わってくるため原材料が流動的です。
大きなくくりでは「ハーブ」ですが、細かな原材料は都度変わる。よって、④に該当すると言えなくもありません。


「省略」のお墨付きをもらいに


これですっきり!のはずなのですが、あともう一押ししたい。
「あなたの商品は栄養成分表示の必要はありませんよ」というお墨付きが欲しいなと思い、消費者庁に問い合わせをしてみました。

入力フォームに問い合わせ内容を細かく書いて送信したところ、後日、消費者庁食品表示企画課よりお電話をいただきました。

消費者庁は、
「栄養成分表示の有無を判断する立場にはないこと」
「判断は事業者自身に委ねられていること」

この2点を冒頭にお話しされた上で、「③と⑤に該当すると事業者さん自身が判断されたのであれば、そのようにしていただいて結構です」と。

「え?そうなの?」と、少しばかり拍子抜け。ただ、途中何度も、「表示をしていただく分には構わないので、ぜひ」というニュアンスを漂わせてはいらっしゃいました。

これで本当にすっきりです。

うかspice+は、当面、現行商品に栄養成分表示はしない方向でまいります。


数値も大事、でも、五感も大事


今回、栄養成分表示について調べるなかで思ったことがあります。それは、ヒトはあまりにも数字に依存しすぎているのではないか?ということ。

私たちは、何かあるとすぐにエビデンスを求めたり、科学で証明されたことなら信じる気になったりするけれど、自分の感覚を信じることができたら、生きることはもっとシンプルになる。そんなふうに思うのです。

ハーブや野菜を育てていると、どうしてもカレンダーが必要になります。いつタネをまいて、いつ植え付けて、いつ頃収穫をして……。何月何日というデータは必須です。
なんなら、昨年度のメモやエクセルデータを引っ張り出してきて照合したり、本やインターネットで情報を引っ張ってきて栽培に活かしたりもします。それもやっぱり、何月何日という数字がカギになります。

ところが、何月何日という数字は、年によって変わる天候のズレに対応できないこともあるのです。

今年は暖かくて例年より早く野菜が花を咲かせてしまった、とか、逆に、今年は気温が上がるのが遅くて苗の成長がすごくゆっくり、とか。カレンダーの日付だけを見ていては対処できないことのほうが、実際は多い気がします。

温度や湿度、自然界の植物たちや昆虫たちの動き、草木が咲かせる花の香り、それらをキャッチする感覚を信じ、養い、動く。それって、シンプルだし楽しい。

今回の栄養成分表示は、暮らしに必要な栄養素をきちんと摂れるようにという目的で作られましたが、必要な栄養素は、個人差もあるし、その時の体調によっても違います。数字化されたものを基準に自分の食べ物を選ぶなんて、ちょっと寂しいなと思ってしまいました。

今の自分に何が必要かは、本当は自分がよく知っているはずですから。

その感覚を大切にしていきたい、と、今回あらためて思い直しました。

お問い合わせをいただいた取り扱い店さまには、本当にいい機会をいただきました。ありがとうございました。


                                



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