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Veneziaという街。

はじめて訪れたのは、大学の卒業旅行。
なぜだか私はどうしようもなくこの街に魅せられてしまったのだ。
2度目は社会人3年目。少し仕事に疲れて、お酒の味も覚えはじめた時だった。
3度目はついこの前。カーニヴァルに行きたくて、随分前にチケットを抑えた。
何度訪れてもこの街の空気は、不思議なほど私の身体に馴染んでいく。

「あんなところ、ただの観光地だよ」
2度目の旅行の前に、当時の上司が言った言葉だ。
それを聞いた時、私は何て浪漫がない人なのだろう、と思った。
確かにヴェネツィアはイタリアが誇る観光地で、カーニヴァルの時期は狭い小道が人で渋滞するほど観光客で溢れている。
でも迷路のように入り組んだ道は外界を遮断し、一歩足を踏み入れると別世界に入り込んだかのように思える。


窓の外に吊るされた洗濯物がひらひらと揺れ、水面はきらきらと陽光を反射する。風は潮の匂いを運び、静けさが空間を支配する。

朝はエスプレッソと焼きたてのパンの香りに誘われて、人々が近所のカフェに集まる。
昼食時は運河沿いのレストランが笑顔で溢れ、時折ゴンドリエが歌うSanta Luciaが聴こえる。
夜は電燈の光が街をオレンジ色に照らし、昼の賑やかさとは打って変わって神秘的な一面を見せる。
カーニヴァルの夜はそれはそれは美しく、豪華に着飾り仮面をつけた人たちが、薄暗い道を歩いていく。絢爛なドレスの刺繍が煌めき、仮面が白く怪しく浮かぶ。

私のベネツィア旅行にはいくつかルーティンがある。
・1度は苦手な早起きをして、朝のサンマルコ広場を散歩する。
・大好きなお菓子屋さんでS字のクッキーを買う。
・イカスミのパスタを絶対食べる。
・食後のエスプレッソは忘れない。

あとはゆっくり、のんびり街を歩くだけ。
船に揺られて近くの島に行くのもいい。

いつか沈んでしまうかもしれないこの街を
贅沢に存分に愉しむのだ。


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