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海外での日本語教育と大学入試

ユタ日本語補習校高等部のを立ち上げるにあたって最も重要な考え方は「生徒中心」です。一人一人に合わせましょう、ということですね。

補習校というのは、海外に住む日本人が運営する学校です。比較的新しい補習校は、同じ場所に住む日本人が草の根的に集まって設立しています。歴史のある補習校の場合は、商工会議所が母体となって設立したものが多いようです。土曜日など現地校がない日に、日本の国語、算数、社会などの教科書を使って授業を行います。保護者会がお金も人も手配し、事務・教務のオペレーションもやっているようなものです。財政的にも大変ですが、1人としてフルタイムの職員がいないということも特徴です。私も高校の担任をしていますが、エンジニアが生業です。

高等部のある補習校で一般的なのは「教科」を教えるという考え方です。国語表現、公民、といった具合に。ところが、このようなカリキュラムが長年現地に住んで、日本に帰国する明確な予定のない生徒に合っているかというと、どうでしょうか。日本に帰国する予定があったとしても、自分が身を置く環境で勉強や部活などすでに十分やっているのに、更に日本の高校のカリキュラムの一部をこなすなんて大変ですよね。生徒数が減っていく補習校が多いわけです。

日本の高校生が受けるカリキュラムやテストの観点から海外に住む高校生を見れば、足りないところが目立つかもしれません。でも、アメリカの高校の授業って、相当高度なものです。補習校の生徒には大学レベルの授業(APクラス)を一生懸命受けてい子も多くいます。これだけ可能性のある人材に柔軟性のないカリキュラムを押し付けて、日本との関りを減らしてしまうのはもったいないですよね。

ということで、教科書を使って授業をして、指導要領に書かれている項目をカバーしよう、などという考えには固執しない様にしました。一人一人に合わせて、楽しく、無理なく、しっかりと。どんな学習機会が提供できるか、私たちの挑戦です。

生徒中心、という方針に加えて更にフォーカスを与えてくれるのは「大学入試に役立つ」ということです。生徒も保護者も何だかんだで気になるところではありますよね。アメリカの大学入試でも、日本の帰国子女入試でも、学力は「現地校の成績表」で見られます。一方でエッセイやActivity list、面接などを通して、「社会で活躍できる力」があることを示すこと、また、自己理解が出来ていて大学とマッチしていることを示すことは、成績同様に重要です。プロジェクト活動をしたり、ワークショップで新しいスキルや考え方を身につけたり、実際に働いている人の講話を聴いたり、いろんな活動をしますが、「入試に役立つ」という視点は明確な指針になります。例えば、日本の帰国子女入試での小論文は手書きです。少なくとも、私が生徒一人ひとりインタビューした中で出てきた日本の大学の小論文は手書きでした。ですので、ノートに手書きで書き込んだり、毎週書記・副書記を決めて板書してもらったりする機会を意識して入れることになりました。

一方で、あまり大学入試に役立つから、という話を強調しすぎない様にしたいとも思っています。生徒は大らかに考えているようですし、私もそれぐらいが丁度いいのではないかと思っています。大学入試に役立つからボランティアする、などというのは何か矛盾してますよね。日本と世界を豊かにする公共心のある人を育てる。この考えは本来大学側が見ようとしている力と矛盾しないはずです。自分の為、ではなく、自分達の為。そういう視点を常に持てるようにしていきたいと思います。




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