「やさしいけど奥深い」ユーザーインタビュー実践のための教科書
この本は、デザイン学校に入った時にいただいた本です。UXデザインを開始してまもなく、ユーザーインタビューの練習をしたのですが、その時にインタビュー調査計画書を作る必要があり、この本に掲載されている具体的な例を参考にさせてもらいました。
その後、UXリサーチの提案をする機会があり、改めてこの本を最初から読み直しました。「ユーザーインタビュー」というテーマだけでここまで詳細に書かれた本があることに驚きましたが、実例が豊富で、筆者の経験に基づく具体的なアドバイスがとても役に立ちます。この本は、インタビューを学ぶだけでなく、実際にプロジェクトで使える実践書として何度も読み返せる一冊です。
1.ユーザーインタビューの計画
実践で考えると、この本の構成は以下の様になっているので、大まかに何を実施するのかという大きなタスクを洗い出すことができます。今度紹介する「UXリサーチの道具箱」も大きなタスクの流れが書いてあって分かりやすいのですが、何よりも計画段階で必要なドキュメントの実例が具体的に載っているので嬉しいです。
はじめに
計画
準備
実施
考察
計画段階では、インタビューの計画(計画書作成)→質問と流れの設計(インタビューガイド)の解説があり、Appendixにはその具体例が掲載されています。またサポートサイトも用意されていて、そこではインタビューテンプレートなどもダウンロードできるので、実践の用意の際に私も活用させてもらいました。
2.準備で押さえるべきポイント
インタビュー参加者のリクルーティング(スクリーナーの作り方)→会場インタビュー時やオンラインインタビューでの準備などが事細かに記載されています。
インタビュー中の記憶の想起を支援する仕組みなども書かれていますが、Appendixについていた脳内マップシート(ある場面で頭の中に気になっていること、関心を向けていることの比率)や、24Hライフスタイルシート(1日の時間の使い方を、それぞれ詳細に聞き出すことに特化したもの)などは実際のインタビューでも使えそうなアイデアです。脳内マップシートなどは、例えば私たちで言えば、患者が医師の診察中はどんなことに気にしているのか、などはこのようなマップを使うととてもわかりやすそうです。24Hライフスタイルシートなども、1日の生活リズムを追いかけるのにとても良さそうで、カスタマージャーニーマップを作る際の有用な情報になりそうだと思いました。
なお飲み物はペットボトルの水かお茶がいい、お菓子は咀嚼音が大きくならないものがいい、朱肉・印鑑マット・ティッシュの捺印セットは忘れずに、などはかなり実体験に基づいているような細かい内容もあり、実際のインタビュー時にはこの本に載っている内容をチェックシートにしてしまうと、とても心強いのだと思います。(ちょっとやってみようかな)
3.インタビュー実施のポイント
ラポール作りのために・・・・本当にいろいろな工夫点が挙げられています。きっと筆者が試し試しやりながら蓄積してきたノウハウなのかな、と思います。このラポール構築に30ページくらい使っています。
一歩目が自らの見た目に気を配ること。
どんな装いの人にも普通に笑顔でお迎えする。
最初の挨拶で緊張をほぐす。
わたし、傷つきませんので!と宣言する(これはユーザビリティ試験などでは有効そうですね)
共通点や共通の話題を探す。
自分の話もする。
敬語が絶対ではない。(必要に応じて表現をやわらかく)
あとは実際のインタビューでの、クローズド・クエスチョンによる深堀り、5W2Hでの問い(When|いつ、Where|どこで、Who|だれが、Why|何をきっかけに・あるいはどんな意図や理由で、何を|What、どのように|How、どう思いました?|How did you feel)による周辺をほっていくというテクニックなどが、実際の会話例とともに紹介されています。
4.この本の活かし方とこれから
「ユーザーインタビューのやさしい教科書」は、そのタイトル通り、初学者でも安心して読み進められるやさしい語り口ながら、インタビューの計画から実施、考察までを網羅的に、かつ実際の経験に基づくような内容を深く学べる内容になっています。また、サポートツールやAppendixには実例もあるので、プロジェクトでの実践にすぐに役立ちます。
特に印象に残ったのは、インタビュー中のラポール形成や効果的な質問方法についての解説で、筆者の豊富な経験が反映された現場のノウハウが詰まっています。この本を手元に置いて、これからのプロジェクトでさらに活用していきたいと思います。UXリサーチやユーザーインタビューを学ぶ方は、一読をした方がよい本だと思います。
*私はこれからユーザーインタビューを本格的に実施していきますので、きっとこの本に書いてあることの重要性を、この後に身にしみるのだろうなと思います。