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JAZZバー

 2,3年前くらいの浦安の方へ引っ越して1年くらいたった頃の話。「BLUE GIANT」という漫画にハマり、JAZZにハマる。JAZZは大人の音楽でホテルの最上階のお洒落なバーとかで村上龍的な人が葉巻をくゆらせながら聴いている音楽で、敷居が高いものだと思っていた。漫画を読んで、こんなに熱いものなのか、と衝撃だった。実際、音源を聴くと、通常盤よりかはLIVE盤の方が圧倒的に熱いものが多い。セッションというものがあるからだとは思うけども…。

 ぼんやりとセッションという言葉の知識はあったものの、こんなに楽しそうに自由に心地よかったり、カッコよかったりする音で楽器を鳴らせるものなんだ。と、感動した。即興コントと似ているような気もする。ルールに乗って、設定を守り、キャラを踏まえた上でいかに面白い事が言えるかの勝負のような。JAZZだとコードとか、曲の雰囲気とかリズムに乗って、いかに気持ちいいメロディやフレーズを出せるか、みたいな事だろうか。

 タモリさんの昔のインタビューとかで「JAZZは意味がないからいい」みたいな事をおっしゃていて、意味なんかないのか、ただ体感すればいいのか。と敷居の高さがなくなった気がした。けれども、JAZZの人は全員演奏が死ぬほどうまい。電子ドラムを買ってみたものの、どうもうまく叩けず。演奏するにはとても敷居が高い。

 生で聴いてみたくなり、LIVEに行ってみようかと調べていたら、近所にJAZZバーがある事を知り、思い切って行ってみる事にした。週末にLIVEがあるらしく予約した。

 店は高架下の少し横にあり、こじんまりしているものの外観はお洒落。ためらいつつも扉を開けると、7~8人くらいの人が座っていた。奥にステージがあり、7人くらいのうちの3人がドレスだったり、楽器を持っていたりしてLIVEをやる感じの雰囲気を醸し出していた。店主らしき人がこちらに来て「予約の方?」と聴かれ、答えて、席を促され、ビールを飲んでいると、周りの常連さんらしい人がなんだか新しい客が珍しいのか歓迎ムードで、すごい話しかけてくれる。 


 店主は老人だけど、ロン毛で髭も長く、ヒッピーのようないで立ちだけど、オダギリジョーが年を取ったような雰囲気でとてもお洒落。これこそがまさに本物のOfficial髭男dismではないかと思う。公式の髭ダンディ。やがて、演奏が始まり、ベースとピアノとボーカルのトリオのようで、ドラムはないんだ。と残念に思いつつも、生のJAZZだべ、と興奮。
しかし、始まったものの、素人ながら私の中の桃井かおりが「あれぇ、なんか合ってなくなぁい」となり、なんだか演奏がぎくしゃくしてる感じがする。何曲か演奏したあと、♪LOVE~ふんふふんみたいなCMとかで使われてた曲が流れてきて、聞いたこともあるから、おお、と思っていたら、だんだんと、リズムが合ってきて、ピアノの普通のおばさんというか、おばあさんが、テンション高めに弾き始めて、ソロも長く、感動的で、気が付いたら泣いてしまった。この境地に至るまで、一体どれだけピアノを弾いてきたんだろう。と「BLUE GIANT」の宮本大の演奏を初めて聴いたユキノリの如く泣いてしまった。

 泣いているのがバレて、ピアノのおばあさんから「リクエストある~?」と聴かれ、あんまり詳しくないけどどうしようとなったけど、唯一タイトルを知っているルイアームストロングの「ワンダフルワールド」をなんとか頭の中から引きずり出して、リクエストした。ワンダフルワールド、なんてすばらしい世界、と引っ越したばかりで町になじめずにいた今、やっとなじんだかもみたいな気持ちもあり、また泣けてきて泣いてしまった。

 帰り際、おばあさんに気にいられたのかCDを貸してくれた。
いい気持ちで初JAZZバーを後にした。

ただ、あれから一度も行ってない。不義理。

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