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苦手なのに、じっと意識を向けてしまう梅雨の路面のあいつ。

これが好き、これが嫌い、と強くあるわけではないんだけど、でも、どうしてもこれだけは苦手、という生き物。いますか?

わたしはとにかく、カエルです。カエルがだめなんです。

両生類ならではの湿り気のあるぴとっとした皮膚は、さして苦手ではないんです。なんなら、田んぼの隅ですいすい泳ぐアカハライモリなんかは、かわいい。見つけるとじっと観察してしまうし、手の届く場所にいたら、すかさず手を伸ばし、指先でやさしくなでようと試みます。

ならば、なぜカエルはだめなのか。理由はいたって単純で、飛ぶからです。飛ぶのが、ほんとうに怖い。いつ、どの方向に、どのくらいの距離、飛ぶのか。予測不能であることが、なによりも恐怖心を掻き立てている気がします。

でも、道路脇に田んぼが並ぶような田舎だと、きっとどこでもあるあるだと思うけれど、梅雨時期ってカエルの量がすごいんですよね。

雨がよく降り、道路がすっかり湿っている日なんかは、もう大変。車を走らせていると、右からぴょんぴょん、左からぴょんぴょん。車の目の前をカエルが横切ろうとします。何匹も、何匹も。

たまに「なにやっとんねんー!」と突っ込みたくなるのが、どんぴしゃタイヤの進む先に飛び込んでくるカエルさん。「うわ!」っと間一髪、ハンドルをきることで、なんとかお互いの身の安全と心の平穏を保ちます。もし、車で轢いてしまったら…と想像するだけで、おそろしい。

そんなわけで、雨の日の運転はいつも以上に真剣です。路面に視線を落とし、じっと見つめながら車を走らせます。飛び込んでくるやつはいないか?座り込んでいるやつはいないか?と。

そんな風に苦手なカエルに意識を向け続けていると、最近、不思議なことが起こるようになりました。眼前を横切るカエルがなんだかいとおしく思えてくるのです。「あいつ、よく飛ぶなあ!跳躍力がすごい」「あら、この子全然進んでない。チビちゃんやなあ。」一匹一匹の違いが目に留まり、それをちょっとだけ面白がっている自分。

いいなあ、と思っていた人が自分に気を寄せてくれた途端に「なんで好きだったんだっけ?」「気持ち悪い」と思ってしまう現象を「蛙化現象」というけれど、ずっと嫌悪感を抱いていた対象なのに、避けよう、避けようと意識を向け続けていたことで、いつの間にか気になってしまう自分がいる、という今のこの状況。言うなればそれは「逆蛙化現象」なのでは!

ははーん。なるほど。と、うまいことを考えついた気になって、勢いよくここまで書き切ったけど。・・・なに言ってんだ?

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