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苗の力を信じて、そっと手を添える

今年も、江田集落(神山町)で米作りに取り組む「エタノホ」の田植えに参加させてもらいました。昨年に続いて、2度目。

素足のまま田んぼに足をつっこんだときの、あの「じわ〜」っと沈みゆく感じも、「どろっ」っと足の甲に重たく乗っかってくる感じも、味わうのはひさしぶり。「そうだったそうだった」と、懐かしい気持ちが湧いてくる。体はよく覚えている。

まずは、田んぼの縦・横に一本ずつ、垂直に交わるよう紐を張る。その紐に沿うよう一列に並べるのは、手作りの田植え用定規。数十年も前から集落で大事に引き継がれてきたというこの定規は、苗と苗との間を均等にとるための必須アイテム。

定規1枚の幅に2〜3人ずつ着いて、目盛りを頼りに1束ずつ苗を植えていく。

「苗を束から割くときは、下方向に。横に引っ張ってしまうと、根がちぎれてしまう。自立するのに根はとても重要なので丁寧に。」

「一つの束は、2〜5本を目安に。多すぎず、少なすぎず。」

昨年も伝えられたはずの注意事項を、すっかり忘れていたことに気付かされる。改めて、左手に抱えた苗の束に意識を向け直す。

右手の親指、人差し指、中指で苗をつまみ、すっと割いて、その手を田んぼの中へ。

柔らかい土に、そっと差し込む。

深く差し込みすぎると、成長点まで埋もれてしまう。
かといって、浅すぎると風の影響を受けて流されてしまう。

いい塩梅、で植えていくことが何よりも肝心。

「苗の力を信じることが、大事なんだろうな。」と、そういえば昨年の田植えでも同じように感じていたことを思い出す。やはり、体はよく覚えている。

「しっかり支えてあげないと自立できないだろう」と、こちらの思い込みで手をかけすぎてもだめ。「まあでも、大丈夫でしょ」と、意識を緩め、苗の力を過信し過ぎてもだめ。その間の、ほどよい加減で、手を添える。

そんな風に苗とのちょうどよい関わりあいを、ひと束、ひと束探りながら進める田植えは、とってもおもしろい。

きっと、人の関わり合いもこんな風に相手を信じることから始められると、よい関係が育っていくんだろうな、と。(昨年も同じことを思ったけれど、その後すっかり忘れてしまっていた。思うは易し、行うは難し・・・。)

今回とても印象深かったのは、今年の春に、高校を卒業して神山から巣立っていった寮生たちが田植えのために帰ってきていたこと。

毎年の恒例行事としてある田植えが、このまちで育った子たちの帰ってくる理由になっていて。新たにまちに住み始めた子たちと出会い、関係性を育んでゆく。そんな機会として機能していた。

米づくりという、集落の営み、文化を繋いでいくことが、人と人との関係を紡ぎ、育てゆくことを感じられる時間だった。

学び多き、心豊かになる時間を過ごせたのは、エタノホのみなさんの日々の田んぼへの手入れや、準備、たくさん積み重ねている時間があってこそ。いつも丁寧に手をかけ、関心を持っている人を前向きに迎え入れてくれ、貴重な時間を提供してくれてありがとうございます。

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