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足りない女

「お土産渡したいから空いてる日教えて?」

ある日、女友達から連絡がきた。
忙しさもあり2ヵ月くらい会っていなかった。

彼女は時々電話をかけてくる。
些細な悩みについての話だった。女子特有のオチのない話だ。

「恋愛の相談に乗って」と口を開けば、合コンで出会った人とごはんに行くか迷っているとのこと。彼は結婚相手にするには足りない男らしい。
付き合ってなければ、好きにもなっていない男。なにそれ。
見てもない作品の査定を聞かされて面白いわけがない。
せめて体の関係を持った男くらい登場してくれ。

彼女は空気を読まないことに長けている。
一見彼女からアクションを起こしているが、運営はこちら任せなのだ。嫌いになることもないけれど、親友にもならないだろう。

「お土産」はどんなものなのか。何かと聞くのもいやらしい。
仕事の繁忙期と重なり突発的な残業が多く、週末はしばらく予定が入っていた。
無理をしてまで時間を作って食事に行くのはしんどい。

わざわざ用意してもらったのに悪いなあと思い、仕事終わりに先方の家に行くことにした。

ハワイのお菓子をくれた。
お土産は小さいジップロックに入っていた。
ホノルルクッキーが3枚。

「あ、ありがとう。これ美味しいよね。ハワイでしか買えないし嬉しい!」

上手く反応できただろうか。
確かにホノルルクッキーは大好きだ。この間コストコで大容量を買ったばかりだった。
「お土産」と宣言するには重量が軽すぎた。
きっと職場の人に休憩中に配るのに相応しい。

お土産をもらえるだけでありがたい。
気を遣ってもらって申し訳ないとも思えなかった。私が旅行にいくと彼女が知ったら、お土産を期待するかもしれない。
「お土産メンバー」に選抜された私は彼女にとってのベストメンバーなのだろうか?

ジップロックに小分けにすることで、フランクで気兼ねなく受け取れる演出をされている。
車で30分かけてもらいに行く価値はないと思った。
せめて、もう2枚は入れてほしい。


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