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読書感想文|東野圭吾

手紙

「我々は君のことを差別しなければならない。
自分が犯罪を起こせば家族を苦しめると犯罪者に思い知らせるために」

強盗殺人の罪で服役中の剛志と、弟が交わす手紙を中心に描かれた物語。
恵まれない環境で育った兄弟。自分たちの生活のために罪を犯した兄。社会に残された弟は、差別や偏見を受け、幸せを掴もうとするたびに兄の存在が障害になります。
前科者本人が償いをしたつもりでも、被害者側の傷が癒えることはありません。
社会不在になったものが前向きになろうとすることは、身勝手で容認できることではないという風潮があります。
身内も悪者として社会的制裁が及ぶのは仕方ないことなのか?
社会から弾き出されてしまえば、再びレールに戻ることはできない "世間" という特殊な構造。排除された者は一生負い目を背負い、不幸に慣れて生きていくしかない。
結局、人は自分中心で物事を捉える。救いなどない残酷すぎる現実があります。

白夜行

「思ったまましか言えないし、全部顔に出ちゃう。
それがどれだけ幸せなことなのかわかってない。
本当幸せなんだよ。その子。思ったこと思うように言えて、しかも、それがすごく幸せなことだと思ってもいない。
気づかないほど幸せなんだ」

残酷な運命を背負った少年少女と殺人事件を追っている老刑事の執念の物語です。
大阪の廃墟ビルで質屋経営の男が殺害される。証拠が見つからないまま事件は迷宮入り。
被害者の息子・亮司と、容疑者の娘・雪穂。あってはならない悲劇が連鎖していく。

桐原は自分の人生を「白夜の中を歩いているようなもの」と例えていて、雪穂も自分の人生を「太陽のない夜」だとしているんですね。読んだあとの重厚感がものすごいです。

流星の絆

「ここで辞めたら、これからの人生、いやなことがあるたびに逃げちゃうような気がして続けてきたの」

両親を惨殺された三兄妹が親の仇を討つべく復讐計画を企てる物語です。
洋食店アリアケに生まれ育った功一、泰輔、静奈。
子どもたちが流星群をこっそり見に行った夜、何者かによって両親が殺害されてしまいました。兄弟以外は信じず世間を敵視する彼らは詐欺行為を働きます。
時効直前になって犯人を突き止める最初で最後のチャンスが訪れますが、両親を殺したと思われる人物の息子に恋をしてしまう妹。
傷を負いながらも、生きていこうとする彼らにとって、"アリアケ" での思い出はかけがえのないものばかり。功一は両親の形見として、"アリアケ" のレシピが書かれたノートを大切に持っています。このノートは、もう戻ってこない両親との絆でもあります。
人間の弱さがたくさん出てくる作品です。ただの復讐劇には終わらずに、兄妹の絆を感じさせる展開に切なさを感じてしまいました。

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