女流プロはなぜ弱いのかを考える


てか女流プロって弱いの?


結論から言おう。女流プロは強い。

わしはMリーグが始まる前、近代麻雀編集部に「優勝予想を立ててくれ」とお願いされた。そこで迷わず、わしはこう答えた。

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1年目は、本来のエースであるはずのトップ女流・魚谷プロが、おそらく自転車で買い物中、気づかぬうちに白蛇でも踏んだのであろう。不運の地獄モードにハマったせいで、セガサミーは勝ち上がれなかった。

しかし2年目は自転車で買い物中、気づかぬうちに白鳥でも踏んだのであろう。いつもの実力を発揮できて個人成績、圧倒的なポイントの首位で、レギュラーシーズンを颯爽と泳ぎきった。強すぎた。

「女流は弱い」と馬鹿にされていた時代が、とうとう終わったような気がする。セミファイナルを抜けていった6チームのうち、半分の3チームにおいて、女性選手がチーム一番のポイントゲッターとなった。セガサミーの魚谷侑未プロ、コナミの高宮まりプロ、雷電の黒沢咲プロの3人である。名前を見れば分かる通り、女流プロなのである。

アベマズの日向藍子プロも、プラスの成績でチームに貢献した。

おそらく一番、麻雀ファンの男性陣からナメられていたであろう、若手かつモデル、サクラナイツの岡田紗佳プロも、あの石橋プロより多い登板数で、あの石橋プロよりも勝っている。そしてパイレーツの瑞原明奈プロはデビュー時に無名ながらも、あの石橋プロと同じ登板数で、あの石橋プロよりも勝っている。

わしは石橋プロが、一番女性に優しいプロだと思っている。


…というように。
一流プロばかりが集まった麻雀の祭典に、若い女流プロを混ぜてみたら、脂ぎったオッサンだらけの男性プロをしのぐばかりか、普通に強かったのである。

「Mリーグって、たかが数十戦のリーグ戦じゃん。そんな短い試合数で勝ったところで、強いなんて言えないよ」なんて言い返す男性麻雀ファンもおるかもしれない。

逆に問おう。
強いって何かね?

こういう大舞台の本番勝負が訪れた時に、勝ちきって結果を出せるように、麻雀を長い時間かけて鍛錬してきたのではないか?
ここで勝たずに、どこが麻雀人生の本番勝負になるのじゃ。

馬鹿者が!


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さて、女流プロ達が強いことは、今年のMリーグで女性陣が結果で見せつけてくれた。もう今さら議論する必要はない。女流プロは強いのじゃ。

しかしなぜ今まで「女流プロは弱い」というイメージが、麻雀業界につきまとってきたのであろうか?

そこを、わしなりに考察していきたい。

無責任にっ!


男性社会で生き抜く、女性の護身術。


これはスペネコさんが持っていた画像を、わしが勝手に拝借した。
かなり大昔の雑誌企画「女流座談会」の写真である。

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「付き合ってる彼氏が麻雀やめてよって言ったらどうする?」
「やめるやめる!男が大事!
「うんうん!男を取る!」

…という内容である。

この文面を読むだけで簡単に「女流プロって、いい加減だな!」と非難してはいけない。だいぶバブルの香りがしていた頃の女流プロだ。「サバサバと本音を言う女性がカッコイイ!」という風潮の時代で、そういう「女性のホンネ」に聞こえる言葉を雑誌や読者が求めていただけである。

女流プロも頭が良いので、エンターティナーとして空気が読めている。ちゃんと求められているものに、抜群の正解で応えてしまうのだ。仕事を依頼する側も、目にする読者も男性ばかりである。

男性が求めるものに、ファンサービスとして応えていた…だけのはずだ。

この「頭が良くて、空気が読める」が、女流プロが馬鹿にされてきた元凶になってしまったところが強いように感じる。


男性はいくつになっても、頭の中は男子小学生。大人のフリをするのが上手になっても、中身は子供の頃と変わっていないのである。母親に褒められたい少年のままなのだ。わしも44歳になり、つくづくと痛感する。

そして女性は、若くて未婚でも「母親の素質」を持っている。男子小学生を相手に、どう言えば機嫌が良くなるか、どうこなせば面倒を回避できるか、生まれつきの直感で身につけているのである。

昔の麻雀業界は今以上に「オラついてる親父」が、内にも外にも多すぎて、女性が業界内で生きていくのには、かなり面倒が多かったはずだ。

しかし相手は所詮、中身が男子小学生である。「わあ、すごいですね!」と男のイキリを前に、メンツを立ててあげれば、カブトムシを持って鼻をこするガキ大将のごとく「えっへん!」である。機嫌を取ってあげないと、すぐに駄々をこねる子供の面倒くささ。自分よりひとまわり、ふたまわり年下の仮想母親に八つ当たりである。

実際に、麻雀番組が今ほどなかった時代。それこそ一つくらいしか思い浮かばない時代。かなり強いオッサン達の権力と圧力に負けて、ひどい目にあって泣き寝入りしてきた女流プロがけっこういたそうだ。男性が強く、風通しの悪い時代である。

もしかしたら、今のMリーグ関係者の中にも、かつて弱い女性にだいぶオラついていた男性がまぎれこんでいるかもしれない。いつも同じ名前ばかり聞かされる。過去を反省して今後は女流プロ地位向上のために、ピエロとなって走り回って欲しい。罪滅ぼしじゃ。

そんな面倒くさい男性社会で、身を守るために。そして面倒を回避するために、男性を立てて、男性を持ち上げざるを得なかった結果。

いつしか麻雀業界に巣食う中年親父たちの間に「女性は我々男性を上と見てる。じゃあ女性は俺たちの下だ!」と大きな勘違いをしてしまった、男子小学生オジサンが大量に増えてしまったのではないか?

…なんて想像してしまうのである。

今も雀荘などで、女流プロに対し上から目線でオラついている「痛い雀荘客」の報告は、ほとんどが良い歳したオジサンである。


きれいな花は、土の下で根を伸ばす



花の命はけっこう長い♪
女ですもの、女の保険♪

…そんなCMソングが昔、テレビから流れてきていた。

「命短し、恋せよ乙女」の逆をついて、面白さを狙ったキャッチフレーズである。しかし、若い女性の青春時代は、若い男子よりもあまりにまぶしく、貴重すぎる。キラキラしすぎているのだ。

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天鳳
というネット麻雀で、青春の時間を麻雀研究に捧げている、若い男の子は数多い。2、3年の自主勉強の時間を積んで、十分な麻雀の理解を身につけてから、多くの若い男子が「麻雀プロの世界」に飛び込んでいった。

比べて女子はどうだろう?

青春ド真ん中の若い女の子が、天鳳に大ハマリしている様子は、ほとんど見ない。天鳳にハマってるのは、心に深い闇を抱えている女子が多く、身も心もキラキラとした健康的な女子はほとんど見なかった。その話については、以前の「天女杯騒動」の記事を読んでいただきたい。

そりゃそうだろう。

キラキラ輝いているまぶしい時間を、毎日何時間、2年も麻雀研究に費やすなんて、わしが女の子でももったいない。わしが可愛い女の子に生まれておったら、オシャレして街に飛び出している。自撮りを5億枚くらい撮っている。

鏡の前では、女の子♪
後ろをのぞけば、それはなあに?
ヒミツ、ヒミツ、ヒミツ、ヒミツ
実は、後ろにはさんで隠したオチンチーン!

…なんて遊びを鏡の前でしたいくらい、女の子の青春がうらやましい。

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女の子に生まれて、麻雀の勉強なんかに、日陰で時間を使っていられるか!

よって、麻雀勉強をするより先に、キラキラ輝く女流麻雀プロの世界に飛び込んじゃっている女流プロは多い。新人デビューした時点では、圧倒的に男子の方が、強い新人プロが多いであろう。

しかし、男子プロの勉強時間も所詮、大学生時代に見つけた2、3年程度なのである。男子学生が、学生が集まるチェーン店で、ドヘタな親父客相手に勉強した麻雀なんかよりも。プロのベテランの先輩から学ぶ麻雀の方が、濃密で深いのである。

たまに濃密すぎて、男女の関係になったりするヤツもおるが。
いいじゃないか。夢がある

というわけで、スタート時点の実力差は、いくらでも追いつけるのである。
もっといえば、プロになった後の麻雀に対する姿勢は、女流プロの方が勤勉で実直な人が多いように感じている。


女性が麻雀議論をしてるの、あんまり見かけないぞ」という声もあるかもしれない。

バッカ、女流プロが麻雀の話をしたとたん、うまぶり男子小学生オジサンが「教えてあげるよ」なんてワラワラ大量に寄ってくるじゃろ!

やるわけねえだろ!

そういう面でも、女流プロは損しているところもある。
アピールしなくても、影ではしっかり隠れて勉強しておるのだ。


女性は麻雀トークが苦手?


これだけは、わしも感じている。

一部の女性に叱られるかもしれないが。
女性のトークは、相手に中身を伝えるのが下手だなと感じる事が多い。

「今日映画を見たんだけど、すっごく面白かった!」

で、会話が終わりがちだ。男性側は返事に困り、キョトンとする事が多い。
なにがどう面白かったのか、まず説明して欲しい。後に続けない。

しかし女性同士だと、その面白さを相手に説明しないまま、楽しげに会話が続いたりする。

「へえ面白いんだあ、私も見たい。そういえば私、あの映画も好き」
「それ私見てないけど、見てみたい。面白いの?」
「面白いよ、見なよー」
「見るー」

面白さの説明なんていらない。口に出したところで、満足が終わってることが多い。そういうガールズトークの空気に馴染んでるせいか、相手に内容を説明してわかるよう伝える習慣が、男性より機会が少ない感じがするのだ。

男性同士は、いかに相手に伝えるか…が、トークの勝負所だったりする。いかに映画が面白かろうが、その面白さを他人に伝えきれなかった時の敗北感、そんな環境の中で育っている。

女性に「文章で説明してください」とお願いすると、時間があるので十分上手にできるのだが。もっといえば男性より上手だったりする。女流プロのブログの方が、圧倒的に面白い。

しかし咄嗟の会話の中では、ちょっと不慣れなところも多く。解説できる女流プロが極端に少ないのも、そんな事情があるのでは?…と、勝手にわしは思い込んでいる。

勝手な思い込みだ、怒らないで欲しい。

よって麻雀についての説明を、トークで言葉に変換するのは、男性の方が得意な人が多い。女性は男性ほど得意ではないが、麻雀を理解していないわけではないのだ。トークの慣れの問題である。


…わしが今の時点で、感じるところはそんなところである。

男性プロも女流プロも、正直ピンキリである。
ホヤホヤの新人を含めると、女流プロの方が下手な子は多い。

しかしトッププロになると、女性は30代の若さでも、身につけた麻雀技術と経験で、40後半のコッテコテのベテランおじさんプロ相手に、バリバリ戦えるのである。

先日の日本プロ麻雀協会のトッププロが競い合うFuzzカップ。ベテラン女流の愛内よしえプロは、ずば抜けて上手かった。ああなると、不勉強な男性プロは歯が立たない。あんな強い女流プロがMリーグの外にも、まだまだいっぱいおるのである。わしらが勝手に「弱いはず」の先入観で、よく見えていなかっただけかもしれない。

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新人2年目、ドリブンズの丸山奏子プロは、これからさらなる修行を重ねて、3年目のMリーグにまた現われることであろう。その成長の度合いによっては、女流プロは弱いの認識が改まるどころか、女性の方が強いんじゃないか?…なんて、また違った勘違いが生まれるかもしれない。

ぜひ勘違いしたい。

楽しみである。

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