Mリーガー・ポーカフェイス最強決定戦ファイナル!
ポーカーフェイス四天王、ラストバトル!
「わたしなんか、グラビアでは可愛いって言われるのに
動くと急に、顔が獅子舞みたいって言われるからなあ。
いっそ一緒に牛乳ふくんで、クール目指そうかしら?」
そう言って牛乳をゴプゴプと口に貯める、まつかよ。
選手の方へいきなり振り返り、ご自慢のまつかよスマイル。
油断してはならない。
こういう女である。ラストバトルはもう始まっている。
しかし、さすがはポーカーフェイス四天王の
黒沢・魚谷・高宮・瑞原である。
まつかよの奇襲にも驚くこともなく、顔面の表情筋はアストロンが効いたままである。一流麻雀プロともなると、麻雀も顔面もガードが固いのだ。
この4人を笑わせることができる人間など、いるのであろうか?
ここであの萩原が動いた。
あまりに顔面にシワがよるので、たかはると並んで「肛門仁王像」と呼ばれている、あのハギーだ。
「俺、こうなったら禁断のアレをやってもいい…!」
急にカバンから「風と雲と私/熊谷幸子」のシングルCDを取り出すハギー。そう、知る人ぞ知るドラマ「夏子の酒」の主題歌である。ハギーが前妻・和久井映見と共演し、結婚するきっかけになった人気ドラマだ。
「だったらボクは、和久井映見をやってもいい…!」
瀬戸熊が言った。
ハギーは「いや、瀬戸熊さんはオッサンじゃん! 誰か他の女流プロ、元嫁の役やってよ!」と代役を探したが、連盟トッププロの「女装は恥ずかしいけど、やってもいい」の強い押しに、全員がオリるしかなかった。
そして四天王が待つステージに、あの主題歌が流れた。
気がつけば、いつか雨は止み〜〜♪
雲の切れ間から、青空が、のぞいてた〜〜♪
BGMとともに演じられる、ハギー本人による、ハギー熱演ダイジェスト。
「夏子の酒」ならぬ「咲子の酒」である。
黒沢咲子役の瀬戸熊はメイクに3時間をかけた。
客席は静まり返っていた。
なにせ1994年のフジテレビ放映のドラマだ。
27年前のドラマなのである。
若い女流たちは放映当時、誰もがまだ幼く、日本酒作りのドラマなど見ていない。当たり前に、もちろん大スベリである。
しかし。
黒沢が泣いていた。
プロフィールによれば24歳の年齢設定の黒沢、当時まだ生まれていないはずだ。しかし「草壁くん良かったね! あのシーン大好き!」とハギーの役名を連呼し、牛乳をビタビタ床にたらしながら、敗者ルームに去っていく黒沢。
しばらくして「誰だ、わたしのビッグチキンカツ弁当食べたのは!」という怒鳴り声が聞こえ、みんなが集まると、日向の後頭部が精米された白米みたいにヘコんでいた。これぞ黒沢の酒造りである。
残るは、魚谷、高宮、瑞原の3人となった。
石橋が急にいなないた。
「コバゴーがロボットダンスしたらウケるんじゃね? ほら、こんなふうに。 コバゴーもそれっぽく踊れるだろ、ロボットダンスくらい?」
石橋がクイクイと踊って見せるほど、その腹回りの肉がプヨプヨと揺れ、まったくロボットらしい硬質感が出ていない。
「ロボットのメタリック感がないですよ石橋さん。メタボリック感しかないです。もっとこうですよ、こう! …ああっ、ンガッ!」
見本を見せようと踊り始めた朝倉だが、新婚は腰が弱まっているのか、その場でうずくまってしまった。ギックリ腰である。
「わかった、ボクが行こう。ロボットダンスならラーニング済みだ。」
青魔導師みたいなセリフを吐いてステージに向かう小林。
しかし小林がロボットをイメージし、踊り出したダンスは、まわり大勢が想像しているものとは、ちょっと違っていた。
そうなのだ。
小林剛44歳。TRF世代である。
しかしTRFも、こんなフリのダンスを踊ったことはない。
ロボットというより、風に吹かれた田園のかかしである。
小林は狙いを一人に定めた。
チームメイトの瑞原である。
さすがの瑞原も、至近距離で踊るコバゴーに顔を歪めた。あまりの距離が近すぎてダンスも見えず、もはや真顔のコバゴーの顔アップで視界が埋まっているが、かすかな声で小林が歌っている「イージードゥダンス、イージードゥダンス、君だけを見ている〜〜♪」に耐えられず、視線をそらす瑞原。
しかし、瑞原の視線の先に待っていたのは…
腰を痛め動けずにいるところ、馬マスクをかぶせられた朝倉。
さすがの瑞原もここまでが限界であった。
瑞原、沈没ッ!
こうして残るは、魚谷、高宮の2強となった。
このどちらかが、ポーカーフェイスの頂点に立つのである。
続いて浴衣姿の前原が国士無双をアガり「んもう、弱いんだから。それより私の水着姿見たい?」…という、別の高宮まりDVD作品を演じて見せたが、また同じように鬼の形相の高宮がそこにいるだけであった。
そんな時である。
ステージから、一人の女性が駆け出してきた。
ならば、てへぺろと、桃ディスはやっているのか?
思わぬブチギレで、ここで魚谷が散った。
その後、魚谷は和久津と2週間、そしてポコチャのライバル、松嶋は魚谷と1ヶ月も口をきかなかった。そんな様子を、魚谷を追うポコチャプリンセス、米崎奈棋プロがニヤリ。
しかしこれで、とうとう決定したのである。
Mリーグで一番ポーカーフェイスの、最高にクールな選手。
高宮まりがグランプリ受賞である!
変わらず牛乳をふくんだまま、この静かな勝利のポーズである。一度、勝負に徹した彼女を、笑わせることができる者など、この世に一人もいないのだ…!
いた!
(おわり)
ご機嫌がよろしい時、気分で小銭を投げていただくと嬉しいです。ただあまり気はつかわず、気楽に読んでくださいませませ。読まれるだけで感謝です。