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2022年7月に見た新作映画まとめ ~1日目から面白い映画が目白押し!~

こんにちは、uhikoです!

猛烈な暑さで映画館の冷房が心地よい、そんな季節ですね。

今月は7/1が金曜日と重なったこともあり、初日から注目映画が目白押し。
夏の興行シーズンが本格始動したことで、大作映画も続々と公開され、
ポップコーンやコーラと共に思いっきり楽しめる季節ですね。
ぜひ皆さんも映画館にぜひ足を運んでくださいね。

というわけで、7月に見ることができた、夏の蒸し暑さも吹き飛ばす
新作映画はこちら! 

・『わたしは最悪』@新宿武蔵野館
・『リコリス・ピザ』@TOHOシネマズ新宿
・『バズ・ライトイヤー』@新宿バルト9 
・『エルヴィス』@TOHOシネマズ新宿
・『ソー:ラブ&サンダー』@TOHOシネマズ日本橋
・『モガディシュ 脱出までの14日間』@新宿ピカデリー
・『キングダム2 遥かなる大地へ』@TOHOシネマズ新宿
・『ボイリング・ポイント/沸騰』@渋谷TOEI
・『グレイマン』@Netflix
・『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』@TOHOシネマズ新宿

1本1本の感想をかるくこちらに書き留めておきます。

『わたしは最悪』

30代を迎えようとしている奔放な女性が人生に迷いながら、自らの決断に戸惑いつつも生き続ける姿を描いたノルウェー映画です。昨年のアカデミー賞でも外国語映画としては『ドライブ・マイ・カー』に次ぐ評価を受けた作品でもあります。
タイトルの通り、主人公の女性は自分の人生にどこか物足りなさを感じていて、客観的にみると無鉄砲で無責任なふるまいもしているのですが、その姿が本当にいとおしさを感じさせます。誰もが断片的ではありますが重なる部分がある映画なのではないかと思います。私自身も映画の主人公と世代が近い部分があったので、自分の人生もまた不合理な意思決定を積み重ねてきたけど、でも不思議とそんな自分も嫌いじゃないと思えました。ノルウェーの美しい風景で撮影されていることも相まって、人のいやな部分もちょっと浄化されて、タイトルのネガティブ感とは異なり、とてもポジティブで最高な映画でした。20代~30代の人には特におすすめの1本です。

『リコリス・ピザ』

『マグノリア』や『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』で知られる、文学系映画を牽引する名監督、ポール・トーマス・アンダーソンが自身の故郷を舞台に、25歳の女性と15歳の少年の恋愛模様を描いた1本です。難解なイメージのある監督の作品ですが、本作は圧倒的にストーリーがわかりやすく、とても見やすいです。1970年代のハリウッドを舞台に当時の街並みやファッション、そして音楽(デビッド・ボウイの流れるタイミングが特に名シーンです)に乗せながら2人の不器用な恋模様が描かれていくのですが、その展開が予測不可能で目が離せません。とにかく主演2人の魅力が素晴らしく、人生に迷いがある女性と、世の中を良い意味でなめている少年だからこそ生まれる疾走感やアンバランスさに心が動かされますし、それを象徴するかのように2人がお互いのために走るシーンや車を走らせるシーンがあるのですが、そのどれもがショットも計算されてて「お見事!」と心の中で拍手を送っていました。
粗削りな青春映画でありながら、ディテールにこだわったウェルメイドな作品でもあるという見事なバランス感は稀代の天才監督だからこそ実現できていると思いますので、これまでなんとなく難しそう…と敬遠していた人にもぜひ見てもらい、彼の作品の沼にはまってもらえればと思います。

『バズ・ライトイヤー』

ピクサーの原点にして代表作の『トイ・ストーリー』シリーズの劇場版スピンオフ作品です。主人公の一人であるおもちゃバズが、今回の『バズ・ライトイヤー』という映画で人気を博したことで『トイ・ストーリー』の世界で販売されるようになったという設定になっています。
内容としては王道のSFアクションといった感じの作品で、前半は光速での冒険を続けるバズが帰ってくると仲間たちが年を重ね衰えていく様を目の当たりにするという孤独で切ない物語となっており、なかなか攻めているなと好感を持てました。しかし後半の冒険パートは近年のディズニーの悪癖である、自分たちのやらかしのためにテンポが悪くなるするという形になり、バズの周りのキャラクターのポンコツ感がむしろストレスになってしまっていくのが残念でした。最後の悪役は前半の設定を活かしたうまい着地だっただけに、後半のストーリーのぎくしゃく感が本当にもったいない感じでした。この映画に果たしてアンディ(バズの持ち主)が心惹かれたのかな?といういらぬ疑問も生まれてしまった部分もあるので、スピンオフを作るなら、むしろ普段のピクサーとは全く違うタイプの硬派な作品に振り切っていたらより面白くなっていたのではと感じた次第でした。

『エルヴィス』

「キング・オブ・ロックンロール」とも称される伝説的ロックスターの生涯を、『ムーラン・ルージュ』など鮮やかな映像やきらびやかなセットで知られる映画を手掛けるバズ・ラーマンが映画化した1本です。主演のオースティン・バトラーが見事にエルヴィスの繊細さとパワフルさを見事に両立させ、彼にしか出せない見事な存在感を醸し出していて、それに相対するマネージャー役のトム・ハンクスも普段の彼とは異なる強欲で傲慢なマネージャーとして強烈な印象を残しました。エルヴィスの才能が世界を席巻するさま、彼なりに世界の出来事と向き合いどのようなメッセージを出そうとしていたか、マネージャーがラスベガス資本と組んでエルヴィスを利用していく様子など、それぞれ印象に残るエピソードで構成されています。ただ、『ボヘミアン・ラプソディ』や『ロケットマン』とは異なり、ストーリー全体の大きな流れやクライマックス見えづらく、伝記ものとしては消化不良な作品なのは否めない出来でした。クライマックスを音楽と共に盛り上げるというアーティスト伝記映画の十八番を外してしまっていて、あまり心動かされず、エンドロールではエルヴィス本人の歌声ではなく、まさかのラップアレンジ。ひょっとしてバズ・ラーマン、そんなにエルヴィスのことが好きではないな…と感じました。
一般的なアーティストの伝記映画としてではなく、一人の男が周囲に翻弄されていく様や、ショービズ界の闇を描く映画としてはありかと思いますし、主人公の人生をある程度網羅するという意味では勉強になる作品ですので、ぜひそう言った認識で映画を見てもらえると、ちょっと違った印象になるのではないかと思います。

『ソー:ラブ&サンダー』

今や世界最強の映画シリーズ、「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」の最新作にして、主要キャラである雷神ソーを主人公に据えた映画としては4作目の作品になります。ちなみにヒーロー単独の作品で4作目はMCUではアイアンマンやキャプテン・アメリカでもやっていない初の試み。前作『ソー・バトルロイヤル』をエンタメ要素抜群に描き大ヒットさせたタイカ・ワイティティ監督の手腕が問われる1本となります。
実際に劇場で観たところ、前作同様にカラフルで楽しい色使い、くすっと笑えるユニークなキャラクターのやり取り、そして70~80年代のロックサウンドを中心に据えた音楽(今回はガンズ・アンド・ローゼズ推しでした)などエンタメ要素が抜群で観ていて本当に楽しめました。一方で久しぶりの復帰となったソーのかつてのガールフレンドであるジェーンの物語、本作のヴィランの哀しい過去などについても正面から重々しく描く部分もあり、主人公ソーの成長をさらに促していく物語としても真面目に作られていると感じました。ヴィランとの戦いでは映像面でもこれまでのMCUでは意外と試したことがなかったであろう映像演出もあり、そこにはかなり驚かされました。ラストでは心温まるタイトル回収も行われ、しっかりとスキのない1本になっていました。
MCUのファンは必見ですが、そうでない方もソーを主人公に据えた過去の3作品を見ておけば十分に楽しめるストーリーとなっているかと思います。予告で出てるガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの面々とのやり取りのシーンは意外と少なく、そこはファンとして寂しい部分もありますが、全体的にはエキサイティングながら心温まる、ワイティティ監督らしい仕上がりを楽しめる1本でした。王道エンタメ作品としておすすめです。

『モガディシュ 脱出までの14日間』

昨年度の韓国No.1ヒット映画で、ソマリア内戦の際に敵対する韓国と北朝鮮の大使館職員が互いに協力して脱出したという、にわかには信じがたい実話をもとにした作品です。
近年の韓国映画のクオリティの高さは今さら言うまでもないですが、本作も上質なポリティカルサスペンスとしても、迫力あるアクションとしても、心動かされるヒューマンドラマとしても、本当にレベルが高く最初から最後まで心が動かされっぱなしの2時間でした。序盤は比較的テンポよく当時の韓国と北朝鮮の関係の悪さ、ソマリアを舞台に、腐敗した政府、過激な反政府組織も巻き込んだ生々しいロビイングの様子が描かれて、社会背景がすんなり頭に入ってきます。そして中盤に入ると実際に内戦に巻き込まれ、いつ自分たちが殺されるかもわからない切迫感あふれる演出にドキドキされ、最後の脱出シーンは『マッドマックス』並みの迫力があります。しかし一方で激しいシーンだけでなく、韓国と北朝鮮の職員がお互いに心を許しあう過程は、食卓を一緒に囲むシーンなどそれぞれの温かみや思いやりが感じられる部分もあり、終盤にはトーンは静かながら、ただの美談ではないという強烈なメッセージを、構図と表情だけで見せるという見事な演出となっています。
アクションに心動かされながら、学びにもなるという、充実した2時間を楽しめる、本当に面白い映画でした。公開規模が思ったより少なかったので、サブスクで観る方が多いかと思いますが、この作品は要チェックです。

『キングダム2 遥かなる大地へ』

大人気コミック『キングダム』の劇場版2作目ということで、前作に続き現在大ヒット中の1本です。実は私は原作を全然読めておらず(興味を持った時にはものすごい巻数になっていて諦めました笑)、映画で追っている身なのですが、前作は日本映画離れした見事なアクションを本当に楽しめましたので、本作も楽しみにしていました。
まず日本映画でここまでのスケール感を感じる作品が近年あったかなと感じ、その迫力に終始圧倒されていました。漫画の実写映画というのは駄作・珍作も多い中ではありますが、本作はキャストやアクション、世界観の作りこみを真面目にやっているからこそ、その出来に感動させられるのだなと感じました。メインキャストの3人はそれぞれの個性を発揮していますし、彼らを支えるベテラン俳優陣も全力演技で、本当にそこにいるかのような説得力を感じました。何よりも壮大な合戦シーン(日本映画以外で合戦というのかは微妙ですが笑)の迫力は、前作からの剣劇のアクションに加えて本作では騎馬での戦闘のスピード感や、戦車の絶望感などさらにパワーアップした映像が見られて大満足でした。
日本の娯楽映画シリーズとして今後も続くことはおそらく間違いないかと思いますので、本作もぜひ映画館で観てください。大人が本気で作ったエンタメ作品はやっぱり面白いと感じた1本でした。

『ボイリング・ポイント/沸騰』

ある架空のロンドンのレストランの一夜の様子を、カメラ一つでノーカット、ノー編集で描く、オンライン演劇のような実験的映画です。
レストランで起きるスタッフ間の対立、お客さんからの無茶ぶりなどの様々なトラブルの様子をカメラがとらえていくのですが、一つ一つはそれほど深刻でないコミュニケーションのすれ違いや、いやな客がいるなあ…という感じなのですが、ノーカットで見せていくことによってトラブルの積み重ねが深刻になっていく様を体感することができ、飲食店で少しでもバイトしたことのある方は嫌な思い出がよみがえるかもしれません。
それぞれのトラブルは人種差別や賃金の低さ、セクハラなど社会のあちらこちらに転がっている問題であり、私たちの生きる社会の縮図をハイスピードで観ている気持ちになり、タイトル通りストレスが「沸騰」を迎える瞬間は、それまでの様々なトラブルを見ていたからこそ、他人の話とは思えないと思わせる切実さがありました。実験映画ながら、世の中を多面的に切り取ったなかなか見ごたえのある1本でした。


『グレイマン』

Netflix限定配信のアクション映画で、監督は『アベンジャーズ エンドゲーム』などで知られるルッソ兄弟、主演には今をときめくライアン・ゴズリング、彼に立ちはだかる敵をクリス・エヴァンスが演じている、大資本の力をひしひしと感じる1本です。

ルッソ兄弟のアクション映画は、キャラクターが多い中でも、今何をしているか、これから何をしなければならないかという構図の作り方が巧みで、画面がスタイリッシュなのですが、本作でもその腕前は健在です。飛行機内の発煙筒を用いたアクションシーンの映像的面白さに加え、プラハを舞台に展開される文字通りの市街戦では、『ヒート』のような街の中でのガンアクションに加えて、路面電車の中で囲んだ敵をテンポよく倒していくシーンには爽快感もありました。本作で主人公と組むバディを演じるアナ・デ・アルマスも『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』で見せたキレッキレの動きがさらにパワーアップしていて、これはぜひ大画面で観たいアクションと感じました。
続編も現在制作中ということで、Netflixの名物シリーズになっていく期待感も大きい作品です。余計なことは考えずに、シンプルにアクションを楽しめる映画としておすすめです。

『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』

スピルバーグ監督が作り上げたパニック映画の傑作『ジュラシック・パーク』シリーズ。2015年からは『ジュラシック・ワールド』に名前を変えて再出発をし、大ヒットをしてきたシリーズが遂に完結です。私が恐竜を好きになるきっかけになった『ジュラシック・パーク』のメインキャスト3人が再集結し、もはや恐竜というより怪獣映画になっている『ジュラシック・ワールド』の完結編にどのような彩を加えるのか、心をワクワクさせながら劇場に足を運びました。
結論から言うと「こんな完結作、納得できない!」という『スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け』を見た時のような感想を抱いてしまいました…。本作は前回に引き続き、恐竜の遺伝子を悪用するバイオ企業に主人公たちが立ち向かう話なのですが、その結果生まれる最も厄介な敵が恐竜ではないのです…。(もうすでに各所にネタバレが出ていますが念のため伏せておきます)そのため本シリーズの主役ともいえる恐竜たちが全然おいしい役割でなく、ただの舞台装置となってしまっており、その恐怖もカッコよさも、ある種の畏敬みたいなものも全く感じなくなってしまっているのです。なので恐竜映画というより、恐竜がいる世の中で展開されるスパイアクション映画という印象の方が強いです。したがってオリジナルメンバーが久々に終結しても恐竜の知識を活かせる部分は少なく、ただのファンサービス的なキャストにしかなっていないと思います。
そして何より一番大きな問題は「恐竜と人間は共存できるのか」という前作が残した最大の問いに対して、本作では全く答えられていないと思います。つまり前作までの積み上げがほとんど活かされていないため、過去作のオマージュも表面的な形となってしまっております。ということで「恐竜が出るパニック映画」としては面白いのだろうけれど、映画史に残るエポックメイキングなシリーズの完結編(リブート版の完結編ともとらえることができますが)としては、テーマ性も迫力も欠いた残念な1本になってしまったのかと思います。今の映画界の流れ的に、またリブートがされる気がしますが、その時には真の意味で恐竜を主人公に据えて、人間と自然の向き合い方というテーマに真正面から挑む骨太な1本が見たい、今はそんな気持ちです。

まとめ

以上、7月に劇場で観ることができた映画たちでした!
お金のかかった大作映画はツッコミどころが多い一方で、野心的なアート映画には思った以上に心がひかれるという、映画というカルチャーの奥深さを改めて感じた1か月でした。

来月マストで見る予定の映画はこちら!
・『ロッキー4』に未公開映像を加えた再編集版『ロッキーvsドラゴ』
・『ミッドナイトスワン』の内田監督が阿部寛を迎えて送る人間ドラマ、『異動辞令は音楽隊!』
・奇才ジョーダン・ピールが描く新たなサスペンス『NOPE』

7月に比べるとゆっくりと映画を楽しめる1か月になるかと思います。
9月がまた楽しみな映画の公開が続くのでゆっくり体力を蓄えていきます。

来月もお楽しみに!

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