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#49 ボールパーク&"ちくわパン"買える自販機 工事現場に…/株式会社 創伸建設 岡田吉伸さん #BOSSTALK(廣岡俊光)

 北海道を愛し、北海道の活性化を目指すボス達と北海道の未来と経営を楽しく真剣に語り合う「BOSS TALK」

 今週のゲストにお迎えしたのは、株式会社創伸建設 代表取締役の岡田吉伸さんです。

<創伸建設> 1990年に創業。本社は札幌市豊平区で、民間工事を中心に、ホテル、商業施設、病院、工場などを設計・施工管理し、協力会社とともに大規模建築物の新築から改修までを手掛けています。 2022年夏から、「ちくわパン」でも知られるパン製造販売の「どんぐり」とコラボ。どんぐり閉店時、店頭にあるパンを工事現場に設置した自動販売機で販売し、フードロス削減や建設業をより身近に感じてもらう取り組みにも力を入れています。

「北海道ボールパークFビレッジ」のレストラン建設で注目されるだけなく、人気パン店「どんぐり」とコラボでも話題に。あのちくわパンが買える冷凍パンの自動販売機を建設現場に置き、フードロス削減も進めています。発想の源泉は?岡田さんにうかがいました。


■ボールパークのレストラン棟建設「うれしい仕事」

―― 手がけた建物で代表的なものは?

 北広島市のボールパーク内の建物のひとつ、レストラン棟「トリュフ・ベーカリー」の施工を手掛けました。

 今後も北海道の中心的な建物。任せていただけたのはすごくうれしい仕事をさせていただきました。

 1981年生まれ。小・中・高は札幌市で過ごし、大学から東京へ。日本大学工学部で建築学科を専攻。大学卒業後、大手ゼネコンに就職し15年勤務。約5年前に札幌市に戻り、今の会社を継ぎました。私で2代目。父が1990年に創業、私が2020年に事業を継承しました。

―― 大学卒業後すぐに継がなかった理由は?

 大きな建物や社会を見てみたいという想いでしたし、父からは「会社を継いで欲しい」と言われたことがありませんでした。広い世界を見て、"建設"を知り技術力を高めたうえで、漠然と「いつかは継ぎたい」とは思っていました。


■父の会社継承…きっかけは東日本大震災「作っているのは人の思い」

―― 北海道に戻ったきっかけは?

 2011年、東日本大震災が発生しました。多くの職人さんとともに、岩手県盛岡市の現場にいました。職人さんが帰るところがない。社会すべてが止まっていると感じました。

 その後、"復興"に携わらせていただきました。スプレーで建物に○と×のサインが書かれていて、○が撤去OK、×が壊さないでくださいという意味でした。

 僕らから見るとどちらも建物として機能はしてません。そこには「まだ壊したくない」という持ち主の建物に対しての思いを感じました。僕らが造っているのは建物ではなく「人の思い」。そこにはそれぞれの人生ストーリーがあり、そのうえに建物が建っています。

子どもたちに職人の技術を知ってもらうための「キッズ現場見学会」

 建物の奥にある"人の思い"を形にする仕事ができるのではないだろうか。地元・北海道の父が創業した会社を継ぐのを決意しました。

―― 大手との違いに戸惑いは?

 当時、中小企業と言えるようなレベルの会社ではないですが、父が堅実に30年以上積み上げてくれた。自ら創業される方々より、有利な状態で会社経営ができたのはありがたかったです。

 そこで、会社の"リブランディング"。住宅メインの事業から大規模な建物に対応できるように方向転換しました。


■「職人さんはかっこいい」3Kのイメージは内部の思い込み

――岡田さんの上着の左腕に「SOUSHIN」のロゴ。会社の制服ですか?

 建設業というと、なんとなく"作業着"のイメージ。その常識を覆すために若い人にも「いいですね」と言われるような、機能性とデザインを重視したユニフォームを作り、会社の理念も一新しました。

――建設業界の慣習をどう考えますか?

「建設業界といえばキツい、怖い、汚い」という印象を持たれていると、僕たちが勝手に思っているのではないか。内部の人たちが勝手に判断していることかもしれません。働いている職人さんたちはめちゃくちゃかっこいいんです。建設業は最新の機械を使い、他の業界に負けないくらいすごいことをやっていると思っています。


■建設現場にパンの自販機設置…フードロス削減へ

――現在力を入れている事業は?

 一つの建物に数百人、数千人が携わることもあります。毎日すごい人数が建設現場に来ます。何かできることはないだろうかと考えました。そこで、創伸建設と、どんぐりが異業種コラボ事業。どんぐりの閉店時に残ってしまうパンを買い取り、建設現場に冷凍パンの自動販売機を設置し、職人さんへの販売を開始しました。

フードロス削減を建設業界から発信


※株式会社どんぐりの野尻雅之さんには、22年2月に番組にご出演いただきました

"フードロス削減"を建設業でも取り入れるチャンス。自販機は道路に面したところに置き、地域のみなさんともいっしょに解決していこう取り組んでいます。

――"マチづくり"にも関心をお持ちですか?
 マチづくりが僕たちの最大の仕事。株式会社「川見」を設立し、川を見る”川見”という文化を作りたい。

建物づくりはマチづくりへとつながっていく

 豊平川を「経済特区」と認めてもらい、行政や地域のみなさんといっしょに川へ還元したいです。サケが触れて、川から学べるようにし、世界へ発信。観光資源の一つになるのではないかと考えています。

 若い学生と地域の経営者が朝の時間を活用する「本気のリーダーの朝会」を開催し、大人が学生の背中を押せるような空間づくりもしています。

 いずれ、北海道・札幌市を支えるスタートアップの精神や、マチづくりにつながるといいなとか考えています。

 すべては"人"。"人の思い"からすべてが始まっている。物づくりも、建物も、マチも"人の思い"があると思うので、「人づくり」に真剣に取り組んでいきたいです。


■「次の誰かのために」「本物をつくる」100年以上続く会社目指す

――どんな未来を描いていますか?

「次の誰かのために」が会社の理念で、「本物を作る」がテーマ。創業34年。"成長し続ける"ことも大切にしています。100年以上続く会社、かつ事業規模ももっと大きくなれるよう、がんばっていきたいと思います。


■ 編集後記

「建設業界といえばキツい、怖い、汚いという印象を持たれていると、僕たちが勝手に思っているのではないか」

岡田さんのこの言葉を聞いてハっとしました。これは建設業界だけに当てはまる話ではありません。自分たちの世界で「当たり前だ」と思っていることこそ疑いの目を向ける。そこに安住して思考停止していないか疑う。そしてそこから新しい価値観を産み出す。客観視できる目があるからこそ、どんぐりとの異業種コラボも実現したはずです。

「次の誰かのために」という思いは、関わる建物のみならず、人づくりにまで貫かれています。こういう思いを持った大人のことばと姿が、きっと次の世代を育てるのだと刺激を受けました。


<前回の放送>
株式会社 光映堂 代表取締役 関山亜紗子 さん

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