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R5.11.8 MECHANICA-うさぎと水星のバラッド-【いつか論じてみたいゲームの話1】

作品内容について

『MECHANICA――うさぎと水星のバラッド――』は同人サークルLoser/sから出ている18禁RPGだ。主人公はミュージシャンを営んでいるものの過去の失敗からまったく売れなくなってしまい、水星日本領「ギロチンシティ」でほそぼそと生活していた。ある日適当に買い物をして適当についてきたくじ引きでメイドロボットを当ててしまう。2人はギロチンシティで会話をしたり音楽で気分を盛り上げたりして楽しんでいたのだが……。出会ったその3日後に月が降ってきてしまい、世界が滅んでしまう! そこから3日間を繰り返し水星を救うタイムループが始まった。

ダラダラとあらすじを書いてしまったが、内容をまとめると探索型「ムジュラの仮面」。街を歩いて人に話しかけ、求められたら音楽を聞かせて情報を聞き出すというもの。

この作品は音楽の力を存分に引き出したゲームである。
その時その時の感情は、その感情に適した音楽によって増幅される。

音楽は場を支配する。
その音は人の美的感覚に訴える。

治安の悪いギロチンシティでも音楽は人の心を打ち、覚えていないはずの記憶すら呼び起こす。そうして半分トリップ状態の住人は思い出話を始める。

愛と勇気

この作品が音楽を題材にしたRPGによって何を表現できているか言葉にしてみたら危ない作品のような空気が出てしまったが、根幹にあるのは「愛」と「勇気」であり、滅んでしまう世界を救うという王道ストーリーである。

人が思い出す内容は基本的に温かいものだ。

「メカニカ」が感動的なポイントは音楽によって感情が奮い起こされる感覚が普遍的な感情であるからだ。

終わり行く街「ギロチンシティ」では刹那的に生を消費していく人が多くいるのだが、瞬間的に燃えていく生にも前史がある。
この作品は同時に過去から今へと繋げていく話でもあり、前作『うさみみボウケンタン』やもっと前に作られたノベルゲームの内容も踏まえたものである。

シナリオライターの逢縁奇演が得意とするのはキャラクターに情熱的に思い出を語らせ、過去を瞬間的に燃やすことだ。

凝縮されていく今……。

その今への精一杯の愛が表現されている。

運命と巡り合わせ

残酷な世界にも幸運なところはある。

誰かが誰かを想うことによって救われている誰かがいる。

主人公は世界を滅ぼす犯人を探し出すために住人たちに話を聞き出そうとする。その末に多数の住人に見えなかった繋がりが出てくる。

舞台は5029年の水星であり、内容はSFで、出てくるキャラクターたちの設定は今はまったく私たちの人生と重なりあるような境遇がない。しかしどこかその巡り合わせと感情には共感するところがある。

この作品が照らし出す、音楽の力と巡り合わせの温かさとは何かをいつか論じたい。

次回→『Demons Roots』

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