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mento主催HR Night#2〜女性活躍推進で見落とされる「水面下の課題」〜

2023年9月22日、「女性活躍推進の落とし穴」をテーマにHR Night第二回を開催。当日は、女性活躍をはじめとした「DE&I」を積極的に推進されているパナソニックホールディングス株式会社様、株式会社メルカリ様にご登壇いただき、これまでのお取り組みや知見をお話いただきました。


当日のパネリスト💡
-- パナソニックオペレーショナルエクセレンス株式会社 DEI推進室長  
兼パナソニックホールディングス株式会社 ブランド戦略グループ 杉山秀樹様
-- 株式会社メルカリ People and Culture HRBP / 社内コーチ 唐澤圭様
-- 株式会社mento COO 丹下恵里

HR Nightとは💡
コーチングサービスを提供する株式会社mentoが主催する、人事や人材開発に関わる方々の交流イベントです。
人事戦略や施策について情報を交換し、成功の秘訣から失敗談までをフラットに語り合える場として好評を博しています。

※本イベントレポートは2部構成となっております。
前半はこちらからご覧ください。

女性活躍推進で見落とされる「水面下の課題」とは?

「女性活躍推進」を押し進める際は、採用や研修など主にハード面から取り組んでいくことが多いですが、水面下の課題も決して無視できません。

イベントの後半では、水面下で起きる意識課題について議論を深めていきました。

水面下で起きる意識課題

知らず内に押し殺されるバイアス

パナソニックグループ杉山様:
ほぼすべての課題は思い込みに端を発していると言えるぐらい根深いですが、その深刻さは現在過小評価されているように思います。

日常の中にある思い込みをどのように表出化して議論のテーブルにあげていくかが、組織の取り組みとして重要になっていくのではないでしょうか。

例えば、自分の中にもやつきが生まれるコミュニケーションに遭遇しても、日常の中ではすぐに忘れる場合がほとんどでしょう。そして、それが何度も繰り返されることで「これが当たり前なんだ」と自分で自分を納得させてしまう。結果として表出化する場面がなくなります。

大切なことは、もやっとした瞬間に言語化する機会をどう作れるか。
上司の関わりや外部の機関・サービスの中で「問いかけられる」環境が大事です。

社会のあたりまえに隠された自分の核

メルカリ唐澤様:
女性自身の水面下の課題という意味では、最初の重要なステップは自己理解です。自分を理解し、大切にしたい価値観や信念、進むべきキャリアの方向性を明確に言語化することが、課題解決の出発点となります。

自分に自信を持てなかったり、マネージャーになることを躊躇したりする理由の一つは、自身の中で価値観や理想が曖昧であるために、決断を下すことが難しいためです。

つまり、当事者にとってはライフパーパスや価値観を明確にするプロセスが支援となります。
コーチングはその中でも効果的なアプローチの一つですが、ピープルマネジメントのスキルを備えた上司が真摯に向き合い、支援を提供することも非常に有力な方法です。

参考:目に見えない部分に意識を向ける


また、DE&Iでは「女性を理解しよう」といった風潮が強いですが、男性も同様に苦悩している場面があるという視点を持つことも重要です。男性も、女性とは異なる困難に直面しています。

例えば、男性は昔ながらのイメージに従い仕事に100%コミットすることが期待されることがあります。実際に、「家事や育児にもっと時間を割きたいが、社会的な制約があって難しい」と悩む男性に多く出会ってきました。

多様な環境と社会的なバイアスが存在する中で、個人の価値観やキャリア志向を尊重し、それぞれの視点があることを理解する。そして、個人の目指す最高の成果と組織が求める最高の成果を調和させる取り組みが、組織の変革に繋がると信じています。


解決よりもまず傾聴を

パナソニックグループ杉山様:
さらに、特に見過ごされがちなことが「傾聴」です。
人にじっくり聴いてもらう機会は、思っている以上に限られているのではないでしょうか。

以前、コーチングの勉強をしていた際に、上司に1on1で問いかけたことがあります。「このチームは2年後どうなることが理想ですか?」と。その瞬間、雰囲気が変わったことを鮮明に覚えています。

マネージャーにとっても、改めて問いかけられ、言葉にするプロセスは、内に秘めた信念や理想を深化させる機会となります。
同様に、マイノリティの人々にとっても、「聴かれる機会」そのものが重要な場合があります。

過去にマイノリティの方と話す中で印象的だったのは、「私たちはただ聴いてほしいだけです」という言葉です。
そもそも自身の抱えるもやつきを話す機会がないことが問題ですが、いざ話そうとしても聴いてもらうこと自体が実は難しい。

多くの場合、対応策がないと判断されて話が終わってしまったり、大きな課題として取り上げられ、すぐに解決へのアクションへ舵が切られることがあります。
「文句を言いたいわけでも、大騒ぎしてほしいわけでもない、ただ困っているんだということを聴いてほしかった。」
これが当事者の本音でした。

メルカリ唐澤様:
組織サーベイでも同じことが起こりえますよね。
結果をもとに、メンバーはまずは話をきいてほしいのだけれども、マネージャーはすぐ解決しようと走り出してしまう傾向があります。

マネージャー自身も聴いてもらった経験がないため、「ただ聴いてほしい」気持ちにピンとこないんですよね。
コーチングでは「認知」というスキルがあります。「あなたはそう思うんだね」と認知してあげるプロセス自体が大切になることもあります。


当事者と周囲が本当に必要としている支援とは?

日常的なコミュニケーションに宿る真実の瞬間

パナソニックグループ杉山様:
立証できているわけではないので自分理論になりますが、マーケティング業界で使われる「moment of truth(真実の瞬間)」という考え方が一つのキーワードになると考えています。

moment of truthとは、顧客満足度に影響を与えるほんの僅かな時間のことを指します。
例えば、飛行機に乗っている際に、コミュニケーションの長さではなく、15秒ほどの短い瞬間が最も顧客の満足度に影響を与えると言われています。

DE&Iにおいても、当事者とのコミュニケーションにおける真実の瞬間は存在すると考えています。
特定の人物との対話の中での一言や一瞬が、個人のモチベーションや意欲に大きな影響を及ぼすことがあります。
この真実の瞬間は日常的なコミュニケーションの中にあり、特定できるものだと考えています。

意識課題を解決するファーストステップは自己理解

メルカリ唐澤様:
当事者の自己理解と自己肯定の促進がファーストステップだと捉えています。
自分自身の軸や大切にしたいものをクリアにしたうえで、流されているのではなく、自分でこれを選び取っているんだと確信を持てることが重要です。

その手段が、コーチングや上司、同僚との対話。チャットのようなカジュアルな対話ではなく、琴線に触れるような深い対話ができる環境や文化の提供です。
また、周囲という意味では、マネージャー自身の自己理解を深める支援も大切です。マネージャーが自己理解できており、自己尊重することで、チームメンバーの多様な価値観を尊重しやすくなります。

普段忙しく内省機会がおざなりになるマネージャーこそ、自身を俯瞰するために、第三者的な目線で投げかけてくれたり、壁打ちしてくれる支援を提供していきたいです。

参考:女性リーダー育成支援のポイント


mento丹下:
私もかつて事業開発部署におり、組織内でのマイノリティの経験を持っています。
その際に「私が我慢すればいいのだ」と自分を大切にできない瞬間が何度もあったことを覚えています。今振り返ると、その瞬間に誰かが本当に私の話を聴いてくれていれば、プロジェクトを諦めずに済んだかもしれないし、デモチベーションに陥ることもなかったかもしれない、今もその会社で頑張っていたかもしれないと思うことがあります。

今日お二人のお話を聞いて、大切な瞬間を支える支援の重要性を再確認しました。


無意識バイアスがテーブルにあがった瞬間

ここでお話いただいた意識課題は、当事者である女性だけではなく、きっとすべての人の胸の内で起きているのではないしょうか。

テーブルトークでは、各参加者が実際にこれまで感じてきた意識課題も取り上げながら議論が続きました。

参加者のコメント:

女性が自身を持って活躍するために「まず自分を知る・言語化する」「自分の軸を明確にする」というプロセスが大事というお話が印象的でした。発展途上の当社では、まずここから着手していきたいと考えております。貴重な機会をありがとうございました。

各社の課題感や取り組みが知れて、自分自身DE&Iへの向き合い方が少し変わりました。

mentoでは今後も様々な人材や組織に関わる課題をテーマにイベントを企画していきます。
次回の開催を楽しみにお待ちくださいませ。



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