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1on1がうまくいかないマネージャーへ、プロ2人からの処方箋

1on1がいつも進捗確認で終わってしまう。メンバーに何を聞いたらいいかわからない。ーーこんな悩みを持っていませんか。ではどうすればいいのか解決策を探るため、株式会社EVeM CEOの長村禎庸氏と、mento CEOの木村憲仁が対談を実施しました。1on1やコーチングのプロが伝授する、コミュニケーションの秘訣をまとめました。

※本記事は、2024年4月25日(木)に実施されたオンラインセミナー『実践ワーク一体型セッション EVeM編 「1on1」を学ぼう!見てみよう!やってみよう!』の内容から作成しています。セミナー全編のアーカイブ動画視聴はこちらから

この記事のポイント

  • 1on1には「ティーチング、コーチング、フィードバック」という3種類のスキルが必要

  • 「質問する目的」を考えるのが、いい1on1の第一歩

  • 質問は「種類、構造、視点」の3ポイントで考える


ーー「学ぼう」「見てみよう」「やってみよう」の3パートで構成された本イベント。特にユニークなのは「見てみよう」パートで、長村さんと木村が公開1on1を行ったことです。長村さんが実際に抱えているというリアルな課題をテーマに、木村がコーチングを実施しました。

終了後には長村さんから「インタラクティブさ満載で楽しかった」との感想が。プロ同士の公開1on1という珍しいコンテンツから、マネージャーや経営者が学べるポイントをまとめてご紹介します。

公開1on1の動画はこちらから!

長村さん×木村が公開1on1を実施!うまくいくコツを実践

ーー普段は1on1をする側の長村さんですが、今日は「1on1される側」に立っていただきました。

長村 コーチ役の木村さんから、僕自身が意識していなかったことや考えてもいなかった部分を問いかけてもらって、とても有意義でした。例えば「長村さんは、本当は相手にどうなってほしかった?」という質問は、仮面をかぶった状態じゃ答えられません。完全に皮をはがされたなと思います(笑)。

僕はものごとを抽象的に考える癖があるんですが、コーチングを通してこの癖を乗り越え、ラインの向こう側に行けた手応えがありました。僕1人ではたどり着けない場所まで、木村さんに一緒にきてもらった感覚です。

木村からのキラークエスチョンを受けて悶絶する長村さん

木村 僕としては、長村さんに、具体的なシーンの映像をありありと思い出しながら話してもらえるように工夫しました。例えば、長村さんの思考回路は抽象度が高いので、具体化する質問を重ねるといいだろうと判断しました。

今回のように、コーチングを受ける側が長考に入るのはとてもいいシグナルです。それまで考えていなかった部分をうまく突けているということなので。それから、相手の表情から何かしらの感情を読み取れたら、その理由を聞きます。ポジティブでもネガティブでも、感情が揺れた瞬間を自覚してもらうのは大事なことです。

普段は、1on1をどれだけ重視するか、その意識の度合いは人それぞれです。まずは1on1の目的とそのために必要な準備を整理して、1on1の相手と意識を合わせた上でスタートするのが大事ですね。

長村 僕は普段たくさんの経営者やマネージャーから、1on1について相談を受けます。肌感覚では9割がた、1on1の目的があいまいですね。時間だけがかかり、マネージャーとメンバーの両方にとってもったいない状態だと感じます。

1on1の基本的な目的「メンバーが目標を達成できるよう、全力で支援する」こと。目標は短期的なものから長期的まである中で、マネージャーとメンバーが二人三脚で目標達成に向かうためのコミュニケーションと考えてもらえればと思います。

1on1に必要な「3種類のコミュニケーション」

ーーイベントの「学ぼう」パートでは、1on1に必要なスキルやコミュニケーションについてのレクチャーがありました。

長村 1on1のコミュニケーションスキルには「ティーチング、コーチング、フィードバック」の3種類があります。マネージャーはその場の状況に応じて、この3つを正しく使い分ける必要があります。

例えば、経験値が少ない新入社員には何をどうすればいいかていねいにレクチャーする(ティーチング)、中堅社員には質問を重ねて思考回路を整理してあげる(コーチング)、ベテランには周りからどう見えているか客観的に伝える(フィードバック)というふうに。

木村 1つの1on1の中で複数のスキルが生きることもありますよね。例えば、まずコーチングモードでいろいろ聞き出し、「それってこういうこと?」とまとめ直してから、ティーチングに切り替えるのもいいでしょう。

決まったゴールに向かってメンバーを導くティーチングとは違い、コーチングは会話を通してメンバーの主体性を引き出し、モチベーションを高めるものです。コーチングのスキルは汎用的で、一度身につければいろんな場面で役立つので、すべてのマネージャーにおすすめです。

「なぜ質問するのか?」目的を明確にしよう

ーーマネージャーがコーチングできるようになると、1on1の会話に幅が出ますね。コーチングには、型のようなものがあるのでしょうか?

木村 コーチングの基礎スキルといえば「質問」です。1on1では、どう質問したらいいのか、何をどう聞いたらいいのかわからないと悩んでいる人が本当に多いです。そもそも、質問する目的は何でしょう?

大きくは2つあって、1つ目は「コトよりもヒトに向き合う」こと。人は他者からの質問に答えることで、自分で意識していない思考や感情に気づけます。例えば「最近どんなことに困ってる?」「どんな気持ちで仕事してる?」と問われると、人間関係の悩みやプレッシャーに感じていることなど、言語化されていない課題や感情が浮かび上がってきます。

そして目的の2つ目は、「メンバーがハッと気づき、動き出せるようにする」こと。会話のキャッチボールの中で、メンバーが自分の中にある課題や感情を見つけて動き出したら成功です。ポイントは、誘導尋問をしないこと。コーチングは、メンバーに答えを当てさせるゲームではないと心得ましょう。

長村 質問するときは「あなた」を主語にして、答えありきではなく探索的に質問するということですね。マネージャー自身が好奇心を持ってメンバーの感情を聞き出し、わからないことを一緒に考えるのが、いい1on1のあり方だと思います。逆に、マネージャーの情報収集のために質問しているだけでは、大事なエッセンスが出てきにくいです。

木村 もし、メンバーがマネージャーに質問したい様子なら、しっかり受けましょう。1on1はそもそもメンバーのための時間なので、何がメンバーのサポートになるのか考えて、柔軟にアジェンダを切り替えるのがいいと思います。

質問を考えるときの「種類、構造、視点」というポイント

ーー1on1で、具体的にどんな質問をしたらいいかわからないマネージャーも多いようです。基礎的な考え方はありますか?

木村 質問を考えるとき、「種類、構造、視点」という3つのポイントがあります。まず質問の種類は、自由回答の「オープンクエスチョン」と、Yes/Noで答えられる「クローズドクエスチョン」の2つです。ビジネスの原則は相手が答えやすいクローズドクエスチョンですが、コーチングは逆で、対話が広がりやすいオープンクエスチョンを使います。

次に、質問の構造は「チャンクダウン、チャンクアップ」の2軸で考えます。チャンクアップはものごとを抽象化する質問、チャンクダウンは具体化する質問を指します。ロジカルシンキングは具体性を重視するので、チャンクダウンに偏りがち。チャンクアップの質問を織り交ぜて抽象度を上げると、メンバーの思考が膨らみやすくなります。

最後に、質問の視点です。人には、性格と同じように考え方にも個性があります。メンバーが持っている思考の癖を見極めて、思考回路の詰まりをほぐす質問を投げかけましょう。

長村 例えば「なぜできないの?」ではなく「どうやったらできると思う?」と質問するといいですね。問いの角度を変えると、受け手の頭の動き方が変わります。質問する側は、この視点のバラエティを増やすのがコツです。

木村 コーチングで使われるオーソドックスな質問はネットで調べられるので、使えそうなものを選んでストックしておくといいですね。「相手が言葉に詰まったときは、この質問を繰り出そう」と候補を持っておくと楽になると思います。

ーーそしてイベントの最後は「やってみよう」パート。イベントの参加者が3人1組になって、1on1を実践しました。参加者からは「無理に引き出そうとしなくてもいいとわかった」「そもそもできていることとそうでないことがあるという気づきを得られた」などのコメントが。初対面の人同士でコーチングをするという、貴重な機会となりました。

以上、イベント中「学ぼう」「見てみよう」パートの内容は、動画でもご覧いただけます。明日の1on1で参考にできる実践的な内容となっているので、ぜひ参考にしてください。

>セミナー全編のアーカイブ動画はこちらのページからご覧いただけます

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