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2023-24シーズン 振り返り 個人編その2 齋藤拓実

・試合時間は残りわずか、逆転を狙う名古屋D最後のポゼッション。
トップの位置でボールを保持する齋藤。エサトンが駆け上がり、それを待って齋藤が動き出すいつもの光景。ダイブするエサトンに一瞬ディフェンスが後手にまわり、その隙を逃さずシュートを放つ齋藤。その弾道は独特な高い軌道を描き、綺麗にネットに吸い込まれるー
大観衆の歓声がこの日1番の盛り上がりでアリーナを震わせた。
シーズンの終わりはそんなシーンであるはずだった。

・今シーズンの始まりは、プレシーズンゲームで負傷しながら、アジア競技大会に参加するというタフなものだった。
無理を強いた影響もあったのか、シーズン序盤に怪我で離脱。
怪我人の悪夢がまたドルファミを不安にさせたが、復帰してからの齋藤はエースガードとしてチームを牽引。
チームが一向に成熟しない苦しみを抱えながら、何とか勝率をキープ。
試合後のインタビューなどで口にする危機感。
不安定なチーム状況で、良くなったと思ったら、途端に駄目な姿が現れる。
そんな状況が思ったよりも長く続く事になった。払拭できたのは、なんと終盤の残り6試合。
しかしそこから怒涛の6連勝を成し遂げて、地区優勝を勝ち取る。

・齋藤個人のシーズンの成績は素晴らしく、
ベスト5は逃したものの、セカンドチームに選ばれ、齋藤の力を改めてBリーグファンに知らしめた。

・シーズンホーム最終戦で、琉球に連勝し、最終節アウェイ佐賀戦に逆転優勝の可能性を残した。試合後のインタビューで思いを語る齋藤。連勝したとしても琉球が負けなければ逆転優勝はない。そうなれば、今シーズンはもうドルアリに帰ってくる事はない。
そこで齋藤の名言がうまれた。
「またドルフィンズアリーナで会いましょう」

・CSでは見事な活躍を見せた。
QFでリッチマンHCにスペシャルと言わしめ、おでん君とのマッチアップを制して、三河の挑戦を退ける大車輪の活躍。
チームとして初めて臨んだセミファイナルでもオフェンスを牽引。三遠を抑えた完成度の高い広島のディフェンスを攻略する起点になった。
このままファイナルまで勝ち上がれば、今CSは齋藤拓実のためのCSとして記憶に刻まれることになる。
そんな期待は、しかし唐突に霧散した。

中村のマークにつく齋藤。
独特のリズムでペイント内に侵入する中村のドリブル。前後左右にフェイントをかけられて、小刻みに体重移動して付いていくが、無理なタイミングでの方向転換で足を捻ってしまう。
コートに崩れ落ちる齋藤。
これが今シーズン最後の光景だった。

・最後の試合の終盤、そして試合直後、コートの外にいる彼にかけるべき言葉は見つからなかった。
しかしオフシーズンになり、そろそろ傷が癒えてきた頃合い。視線は過去から未来へと向けられる。今、我々ファンから齋藤へかける言葉は一つしかない。

またドルフィンズアリーナで会いましょう

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