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闘う日本人 4月 入学式

このショート小説は、約5分で読める
ほんとにバカバカしいショートショートの物語です。
毎日、日本人は頑張っていつも何かと闘っている。
そんな姿を面白おかしく書いたものです。
わずかな隙間時間に暇つぶしにでもなればと思います。

今回は4月の闘いで入学式です。
新しく小学校に入るユウ君もいろいろと不安や野望があるようです
 今回はそのユウ君の心の中を覗いてみました。

「ほら、あの学校が明日から、ユウ君が通う小学校よ。楽しみよね」

「うん」

 母親は俺に楽しみだと言ったが、別に俺は楽しみなどしていない。

 あのコンクリートで出来た白い建物に、俺は明日から通わなければならない。

「これからは遅刻できないから、きちんと早く寝るようにしましょうね」

「うん」
 前にここであの小学校というものを見たことがある。なんでも『チャイム』とかいう音とともに、人が出たり入ったりする。あの音の正体は何だろうか?どうやらあの音で人を操っているらしい。怪しい音だ。

 それと、朝一番に鳴るチャイムの音までにあの学校に入らなければ『遅刻』という罰があるようだ。一体遅刻とはどんな罰なのか?考えれば考えるほど不安だ。

 しかし俺も、あさひが丘保育園の年長・キリン組のユウと言えば知らない園児はいないほどの人間だ。そんな事で怖じ気づいてはならない。

 今までは楽しかった。特に何もしなくても保育士たちが俺たちのご機嫌を取っていてくれた。果たして今度から通う学校の先生と言われる人たちは、俺たちのご機嫌を取ってくれるのだろうか。

 聞くところによると、『勉強』と言うのもしなければならないようだ。

 その為にランドセルと言われる、道具を入れるものを背負って登校しなければならない。今まではハンカチやティッシュや少しの身の回り品だけで良かったが、明日からは、あのランドセルという重い荷物を背負う事が課せられる。これは今まで楽をしてきた罰だろうか? 

 そしてその勉強は『先生』と言われる人たちが指導するようだ。

『勉強』とは一体なんなのだ?

 今まで俺は年長・キリン組のトップとして君臨してきた。しかし明日からは最下級生になってしまうではないか。そんな理不尽な事があるか。トップからいきなり一番下だなんて・・・・・・屈辱だ。

 しかし、その勉強というもので成績が良ければ、またトップに君臨できるらしい。

 勉強は国語・算数・理科・社会が主要項目になるらしい。
 
国語は、俺の話術に掛かればどんな女のイチコロだ。過去には保育士の先生もずいぶん泣かせたもんだ。ただ、漢字というものがあるらしい。それについては未知数だ。

 次ぎに算数だ。それは全く問題ない。なぜならば俺は100まで数えることが出来るからだ。そんな奴は他にいまい。

 その次は理科だ。一体何の勉強をするのかよくわからないが、花の観察とかもするらしい。花の事はよくわからないが、花言葉なら知っている。バラの花言葉は愛情だ。

 次ぎに社会だ。これも問題ない。なぜならば俺は今まであのあさひが丘保育園を牛耳って来たからだ。『年長・キリン組のユウ』が一言言えば大体がまかり通っていた。

 しかし問題なのは明日の入学式の新入生代表の挨拶だ。どうして俺じゃないんだ。俺以上の人間がいるというのか?明日の新入生代表挨拶は、あさひが丘保育園の卒園者ではないことはわかっている。他の園からきたものか。ふん、今に見ておれ。新入生も上級生も先生も俺の力を思い知るがよい。

「じゃあユウ君。今夜はお祝いに回転寿司に行きましょうね」

「は~い。楽しみ」

 俺は母親にそう言った。

 そうさ、俺は羊の皮を被った狼なのさ。

 しかし、明日は給食は出るんだろうな。当然お祝いの日だから、デザートはプリンかケーキだと思うのだが。

 もしそうでなかったら、俺はこの学校に深く失望するだろう。
 
フッフッフ。明日が楽しみだ。

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