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多言語的日常を是とすべし

先週から今日にかけて、トルコ語的でないものにちょこちょこお金と時間を使っています。新版の『しくみ』シリーズ、1件残念なトラブルはあったものの、先日の記事を書いた後『ポルトガル語』と『オランダ語』が届きました。

『ポルトガル語…』は先日横瀬浦に行ったときにちょっと頭の中にキーワードとして残っていたので、軽い気持ちで改めて読んでみました。そういえば旧版も買いそろえてはいたけれども、全然手をつけていなかった(つまり、読まなかった)気がします。

まだ途中なのですが著者の市之瀬氏、相当うまい書き手だなという印象があります。なんだろう、雑文というか随筆的な文章を書きなれているような気がするというか、円熟した書き方というか。

以前『クロアチア語…』を著された三谷恵子先生の文章にもすごみを感じた、という趣旨の記事を書いたこともありました。『ポルトガル語…』の文章は、その三谷氏ともまた違ったテイストがあるように思います。

各著者が紹介する言語が個々に異なるということはもちろんそうなのですが、書き手のキャラクターというか味というか、そういうものが語学書に出るというのはちょっと面白いなと改めて思います。

自分の『トルコ語』は果たしてどう思われたのだろうなとも改めて思うのですが、そうはいってもあれももう最初に書いたのが15年くらい前、新版だって10年近く前になりますからね。今また1から書き直せばずいぶん違うものになるんでしょうねえ。

さておき。そう、週末に『ポルトガル語…』を読み、先週は動詞の例が見てみたくて『フィリピノ語…』をめくっていました。そして前述のポルトガル語、オランダ語を買いそろえて、新版のコンプリートを目指すという。

人がみればこの酔狂っぷりはどういうことですか、とも言われそうですが、今週明けにやっているとある授業のためにいろいろとシンプルな動詞なり名詞のサンプルを見てみたいという事情があったことが大きく関係しています。

自分自身はなにか「世界の言語について語って」といわれると、トルコ語の話になりがち。せいぜい背伸びしたところで、テュルク諸語だけに落ち着くのが関の山です。それじゃあなんだか自分の得意なところばっかり話すようで、なんかつまんない(し、聞いている人にまさにそう思われそう)じゃないですか。

前回の繰り返しになってしまうのですが、専門としている外国語は一つとしても、興味関心は広いほうがよいと思っています。その理由の一つには、自分の専門を「言語学」と称しているからということがあります。

「自然言語とはなんぞや」に興味があるという意味なわけで、言語は現実として非常にバラエティに富んでいるわけです。その多様性の「た」の字だけでも伝えられるようにはなってみたいと最近思うようにもなりました。

20代後半から30代前半は、今みたいなことは考えていなかったですねえ。トルコ語にしか焦点が定まっていなかったはずです。その後いろんな事情や経験を経て現在のようなライフスタイルになっているわけですが、「できるだけ多くの言語をマスターする」が目標というわけでもないんですよね。ここ大事なところなのですけど。

そうではなくて、「できるだけ多くの言語に関心を持ち続ける」と、ハードルとしてはやや低いとは言えます。でも、関心を持ち続けるということはその言語にこういう現象があるんだとか、その言語はどういった特徴があって、ほかに同じような特徴をもつ言語にどういうものがあるんだとか、話者はどれくらいいるのかとか世界地図でいうとどのあたりに話し手がいるんだとか。

断片的なことだけでも拾っておくことは自分の仕事の役に立つと思っているのです。前も書いたように、収集癖も満たせる。趣味と実益を兼ねた活動と結論付けてよいのでは?

いやまあ、もちろんお金にはならないと思います。金銭的な見返りは語学に期待してはいけないでしょうね。

むしろ新版コンプリートだーとか行ってみたり、ウクライナ語ニューエクスプレス買ってしまったよ…とか、今日は午前中久しぶりにペルシア語の勉強をしたぜ(まだエザーフェの話に入ったばかりだけどな!)とか。お金と時間は逆にまあまあもっていかれます。人生短いのにねえ。困ったもんさ。

そして、その見返りを将来的に回収するアテはまったくない。
ないですがしかし、それでいいとちゃんと割り切れるかどうか。あるいは今までそういったある種の「多言語ライフ」を送ることによって、ちゃんと自分に別の形で恩恵が返ってきていると思えるかどうか、といった側面もあるのかもしれないな、とも思います。

そう思えば、自分はとりあえずかなり報われている側の人間ではないか、とも。

じゃなきゃ、もっと別のところにお金と時間使いますよ。たとえば将棋とかね?将棋もあれはあれで、お金と時間の投資が報われない趣味説 is あるばってんさ…

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