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スタートアップがコーポレート部門を立ち上げる時に意識すべき4つのこと

スタートアップにおいてコーポレート部門を立ち上げる第一の目的は、経理や労務などのバックオフィス業務を切り離すことでそれ以前の担当者(経営者やコーポレート業務を兼務している従業員)の負担を軽減し、本来の業務に専念してもらうことです。
そのうえで、コーポレート業務の効率化を図ります。この2つの目的を達成するために、コーポレート部門担当者がコーポレート部門立ち上げ時にやるべき4つのポイントを紹介します。

コーポレート部門を円滑に立ち上げる4つのポイント

コーポレート部門として何を扱うかは、企業によって多少異なりますが、ここでは「経理、労務、総務、法務」の4つの機能を担当すると想定して説明します(企業によっては、コーポレート部門に人事や広報などを含むこともあります)。
コーポレート部門を立ち上げるときに押さえておくべきことは、専門的な領域や企業規模の拡大とともに負担が増える部分については、外注するなどしてコーポレートが担う業務負担そのものも減らしていくという点です。この点について、4つのポイントに分けて説明します。

経営者等のコーポレート業務巻き取り

コーポレート部門設立後に、コーポレートの担当者がまずやるべきことは、コーポレート業務の巻き取りです。ここでは先述した4つの機能(経理、労務、総務、法務)が、コーポレート業務に当たります。
そのため、まずは既存の担当者やコーポレートが本来の業務ではない人間が担っているこの4つの機能を、コーポレート部門として一括して引き取ることが必要です。その後、コーポレート業務の担当者間で業務を分担していくという流れになります。

業務の巻き取りは、コーポレート部門がどのような役割を担うのかということを、社内の人間に知ってもらう役割も果たします。さらにコーポレートとして新規参画した担当者においては、既存の業務の全体像を把握する手がかりとなることから、自社の理解を深めるといった効果も兼ねています。そういった意味でも、巻き取りは立ち上げと同時に進めていくことが肝要です。

前述のとおり、巻き取った業務はコーポレート業務の各担当者で分担して、やるべきことを書き出していきます。
専門外の領域があるなど、やるべきことが判然としない場合は、経営者や専門家などにヒアリングを行います。スタートアップ経験者に相談するのも良いでしょう。何をするべきかを明確にしていくと、必要となる人材がおのずと見えてくるはずです。
やるべきことがはっきりしたら、次の段階(アウトソーシング)に進みましょう。企業規模が小さい場合は、人材を増やさずに既存のメンバーで内製するという結論に達するかもしれません。内製するほうが早いのであれば、それも方法の1つです。
ただし、企業規模が大きくなるにつれて内製の負担が増加すると、アウトソーシングに切り替えるといった対応が必要となります。

専門分野はアウトソーシング

コーポレート部門の立ち上げと同時に、請求書の支払いや労務の手続きなど、本来は専門外である経営者や従業員が行っていた業務をコーポレート部門が巻き取りました。
こうして経営者や従業員から巻き取ったさまざまな業務を、次は各専門家に外注していきます。

外注は、内製にともなう負担を減らすことがその目的です。内部に専任の担当者がいる(あるいは、専門の担当者を雇い入れる)場合は、もちろん彼らに任せて問題ありません。
ただし、内製には業務をコントロールしやすいという利点がある一方で、コストの面で忌避されることがあります。また、特定の期間だけ担当者の負担が大きくなるといった事態も起こり得ます。そのため、内製か外注かは事業内容や予算を加味して判断されると良いでしょう。

外注か内製かを判断する際の目安は、専門的な知識が求められる部分かどうか、内製すると時間がかかるかどうかという2点です。
専門的な知識が求められる部分とは、弁護士や税理士、会計士といったいわゆる士業に関わる業務などのことです。採用までに時間がかかるケースもあるため、外注することが決まったら、早めに取り組むほうが良いでしょう。後者(内製すると時間がかかるかどうか)については、次項で説明します。

外注にかかるコストを抑えたい場合は、前述の基準、つまり社内でできないことを社外の人間に任せるという判断になります。
しかし、「無駄のない組織づくりを行う(つまり、社内の人間にしかできないことに注力する)」という別の観点から、外注を推進した企業も存在します。この例のように、コーポレート部門で目標を掲げて、それをもとに外注か内製かを選ぶという方法もあるということです。
コストを抑えるだけでなく、必要に応じて適切に投資するという姿勢(外注だけでなく、内製にかかるコストを負担するという意味を含めた先行投資)が、事業の成長を促進させることにつながります。ここまでがコーポレート部門立ち上げの第2段階です。

社内人数増加に伴いアウトスケール

企業の規模が拡大してくると、これまでは中の人間がやった方が早かった業務が、次第に時間を要する業務へと変化していくことがあります。例えば、給与計算や請求書の発行などは、企業規模が大きくなるほど処理件数も増えていきます。つまり、内製すると時間がかかるのです。
こうなると当然、内製をやめて外注したほうが良いのではないかということになってきます。この外注を進めて内製を減らしていくという流れが、コーポレート部門立ち上げ後の第3段階です。

この段階では、前述のとおり、従業員が増えると規模が大きくなる部分を切り離していきます。先に例として、給与計算と請求書の発行を挙げましたが、この2つの取扱い方は少し異なります。
どのように異なるかというと、給与計算はイレギュラーなケースが発生しやすい一方で、請求書の発行は規則的であるため、自動化が可能です。そのため、請求書の発行は外注ではなく、自動化を進めていくことになります。次項では、この自動化と外注について説明します。

ルーティン業務の自動化

企業規模拡大によって処理件数が増加した業務のうち、イレギュラーなケースが少ないものを自動化します。ルーティンワークは自動化し、イレギュラーなケースが発生しやすい業務は外注するということです。

このように外注や自動化を進めていくことで、企業の規模が拡大するにつれて遅くなりやすい意思決定や実行のスピードを維持することができます。さらに業務負担を軽減し、時間や気力に余裕をもたせることで、前線の情報をつかむ余力も生じてきます。
コーポレートが経営層と話し合い、考えをすり合わせる時間をとることも可能です。特にスタートアップは成長が速いため、スタートアップのコーポレートは前線の情報をよりすばやくキャッチして、動向を先読みしなければなりません。

事業のスピードを維持しつつ適切な判断を行うためには、意思決定や実行の際に、従業員が「やらなければならないこと」を最小限に抑えておく必要があります。具体的には、ルールを設計する、職務権限を明確化するといったことが挙げられます。
手数を最小限に抑えて、従業員の心理的負担を軽減することは、設計したルールを従業員に守ってもらうという意味でも重要です。仮に意思決定や実行にあたって「しなければならないこと」が多い場合、従業員がストレスを感じて、設計したルールが形骸化する可能性が高くなります。
こうなってくると、ルールを設けていても適切な運営はできません。事業を適切に管理するという意味でも、前線の情報をキャッチして、柔軟に運営していく姿勢が求められるということです。

まとめ

スタートアップのコーポレート部門は、はじめに経営者などから、コーポレート業務の巻き取りを行います。巻き取った業務のうち、外注するか内製するかを判断します。

社内で対応するとコストがかかるもの、つまり、士業等の専門領域を外注するのが一般的です。外注できるものは可能な限り外注を行い、社内の人間にしか行えない業務に注力するのも良いでしょう。先行投資として、自社でコントロールしやすい内製を選ぶというのも方法の1つです。企業規模が小さい段階では、社内で行ったほうが早いというケースもあります。

企業規模の拡大により、処理件数が増加してきた部分についても、外注や自動化を行います。これは業務負担を軽減することで、コーポレート本来の業務に注力するためです。また、請求書発行などのルーティンワークは自動化が可能です。

外注や自動化によって業務負担を軽減することは、スタートアップの成長速度を維持するという意味でも重要です。適切な管理のもとで、従業員がスピーディーに意思決定や実行のための行動を起こせるように、前線の情報をすばやくキャッチして反映する姿勢がコーポレート部門に求められています。