旅立ちの空 桜色
担任だった子たちが卒業していく。地方の大学に進学する子もいる。この前学校に挨拶しに来てくれたけど、東京から離れたくないらしい。その話聞きながら、うんうんと頷いて、急に自分のことを思い出した。
東京の大学を受けて合格し、しばらくは有頂天だった。ただ、新しい家が決まって実家を出る日も決まり、段々と寂しくなってきた。地元の大学を受けた方がよかったんじゃないかとか思ったりして、不安が募っていった。
旅立ちの日、中学から毎日のように使っていた最寄りの無人駅に立って、電車を待った。何度見たか覚えてない風景。田舎だし何にもないけど、そこには僕が生きてきた家族との時間が確かにあった。晴れの日も雨の日も、しんどい日も楽しい日も通った学校も、帰ってきたら用意されている美味しいご飯も、笑って話してくれる家族も、もういないんだ。もちろん、帰っては来るんだろうけど寂しかった。そんな時、頭の中にはケツメイシの「新生活」が流れていた。
旅立ちの空 桜色 新しい風 吹き吹かれ
少し寒いけど、春の訪れを感じられる日だった。古い駅舎も川も山も今でも覚えている。
あの日からもう16年経って、東京で過ごす時間の方がもうすぐ長くなる。それが僕の選んだ道だ。あの桜色の風景を忘れず、また頑張ろうと思えることは幸せ。
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