オンライン授業で感じた成果と課題について、現役の教員がざっくりまとめてみる

 2度目の緊急事態宣言下の東京において、多くの方々が苦労なさっていることと思います。私たち教育機関も例外ではありません。通常の形での教育活動は難しく、様々な対応を迫られています。

 そんな中にあって、多くの学校は工夫を凝らし、何とかして生徒に教育を届けようとしています。私の勤務する学校においても試行錯誤を繰り返していますが、「学びを止めない」を合言葉に日々の業務に励んでいます。

 勤務校では、緊急事態宣言以降に分散登校を実施しており、そのために対面での教育活動の制限が掛かっています。生徒全員が揃った状態での一斉授業が行えていない状態です。そこで、ICTを活用したオンラインでの教育を展開しています。

 まず、前提として、各学校ではコロナウイルスへの対策を十分に行っています。具体的には、教室の消毒、マスクの着用の徹底、密の回避等です。学校業務においては、生徒及び教員が同じ空間にいることが通常の形態です。しかし、校舎や教室という限られた広さの空間に多くの人数が長い時間滞在するのは、感染防止という観点では好ましいものではありません。この点について、各学校で対応が行われています。

 1.授業実施の実態

 コロナ禍の現在、学校教育においては主に以下のパターンで教育活動を展開しています。

  ① 通常登校での対面授業

  ② 登校無しでの完全なオンライン授業

  ③ 分散登校によるオンライン授業と対面授業

  ④ 登校無しでの紙/オンラインでの課題配布

  ⑤ 分散登校による対面授業と紙/オンラインでの課題配布

 ①に関しては、コロナに関する予防以外にこれまでの教育活動と変化はないので割愛します。④⑤に関しては、オンラインでのリアルタイム授業を行っていません。ICT教育を行わない、もしくは行えない状況と考えられますが、コロナ禍で加速したICTでのリアルタイム授業の必要性を鑑みると、残念ながら遅れていると思います。

 今回は勤務校で実施している②③について言及します。違いは、すべてオンラインか対面とオンラインとの併用か、ひいては生徒を登校させる必要性があるかという議論になります。

 まず、授業についてです。勤務校ではMicrosoft TeamとBenesseのClassiを用いています。Teamsについて、元々は教育系のソリューションではありませんが、オンラインでのテレビ会議に特化したzoomに比べ、課題提出やWord・Excel・Powerpoint等のOfficeソフトとの汎用性も高いです。※先日、不具合が発生しましたが、解決しました。

 ②で実施しているフルオンライン授業では、生徒はもちろん、教員も時間と場所に関係なくHRも含めた授業を行うことが出来ます。方法にもよりますが環境が整っていれば、在宅で授業を行うことも可能です。私も実際に自宅から授業を行いましたが、ネット環境と機器さえあれば特に問題ありません。在宅ワークの推進という点で非常に有効です。

 ③での分散登校における授業における半遠隔授業、いわゆるハイブリッド型授業は登校した生徒と自宅にいる生徒に対して、同時に授業を展開する方法です。大きく分けて2つの方法があります。1つは、教室で板書を行い、それをビデオで撮影して自宅にいる生徒に届ける方法。もう1つは、教室にいる生徒にはプロジェクターでICT機器の画面を投影し、自宅にいる生徒には画面を共有する方法。大きな違いはありませんが、しいて言えば画面の見やすさくらいでしょうか。

 どちらが良いか、に関しては一概には言えません。あまり難しいことを求めて授業の質が低下するのは本意ではないので、まずは通常の授業に近い形を用いています。授業形態は教員によってそれぞれのスタイルがあります。目的は、「より教室に近い形で教育を届ける」ことと、「ICT機器を効果的に用いる」ことですが、まずは1つ目の目的が重要だと考えます。急に今まで使ったことのない技術を使用するに当たっては、誰しも抵抗があります。私はパソコンやタブレットに関して比較的得意な方なので、抵抗なくどんどん新しい技術を取り入れたいなーと思う人ですが、そうでない人が大半です。

 もちろんこのような状況下においても、教育を生徒に届けなければいけませんので、苦手な先生にも取り組んでもらいました。4月に実施した研修を根底に、2度目となる今回については、非常勤含む全教員による全ての授業においてオンラインと対面のハイブリット型授業を実施しています。

 オンライン授業への対応には大きな労力と努力が必要でした。どの仕事であっても、今までの慣習を変えて新しいことに挑戦するのは勇気が要る。そんな中で全員で取り組めていることは、非常に素晴らしいことだと感じています。良い職場、同僚に巡り合えました。

 2.成果と課題

 まず、通常に近い形で授業を生徒に届けることが出来たのは大きな成果です。ICTという技術を目的とすることなく、教育(=仕事)の手段として用いることが出来たことは、非常に有意義でした。

 ICTは非常に便利なツールです。時間と場所を気にしない、進化型の技術をある程度使いこなすことが出来ました。ブラックだと言われる教育界において、仕事効率の向上は急務です。私たちの働き方改革の一環として、ICTを用いることは良い生き方・働き方に繋がるものです。

 一方で、オンラインという対面ではない方法ならではの苦労も感じました。対面でないことによって時間が掛かる、反応が確認できない。習得の程度を確認するのにより手間がかかるんですね。丁寧な仕事と想定。これは一朝一夕では叶いません。オンライン授業とICT機器への慣れ、授業デザインの再構築。個人差はありますが、先述のように従来の方法を変えることに苦労も生じます。

 一方で、対面にしかない良さにも気付きました。それは情緒の部分として笑われるかもしれませんが、やはり「生徒が目の前にいる」「反応を聴くことが出来る」のは、学校教育の根柢にあるべきものと感じました。生徒が目の前にいない状態で授業を行う事には、どうしても違和感を感じます。生徒が目の前にいて初めて、「学校」にいる意味が成り立つ。

 効率化の極論はそうでないかもしれません。しかし、教員である以上は、やっぱり生徒がいることに大きな意味がある。その事を今回のオンライン授業で学びました。

 例えば塾で、オンデマンドで、Youtubeで、教育関係の講義も聴ける。そんな世の中です。でも、それでも僕が働く学校が持つ意味。それは、「対面での生徒とのコミュニケーション」に他なりません。

 学校の意味を考えました。塾もSNSも進化したこの時代にあって、僕らに出来ることはなんだろって思う日々。それは「誰かとコミュニケーションを取ること」です。この経験は、学校教育でしか出来ないんです。だからこそ意味があって、やりがいを感じる。

 対面の良さもある一方で、やりにくさもあるから難しい。でも、教員という仕事の目的に沿っているからどうか。その点で判断してもらうしかない。

 より良い方法を今後も模索していきます。


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