Bリーグについて、今後の日本プロバスケットボール界について考えたこと

 広島ドラゴンフライズの初優勝で幕を閉じた2023-2024シーズンのBリーグ。九州出身者としては、西日本の2チームでの決勝に心が躍りました。後ほど詳しく書きますが、これまでの日本のプロバスケ界は東高西低の構図だったから。これが本格的に変わり始めたことを印象付ける優勝でした。

 琉球は昨年度王者としてレギュラーシーズンから強さを見せてくれたし、広島はワイルドカードからの出場で「失うものは何もない」という下剋上精神を体現してくれた。また、全てのチームにドラマがあり、感動を貰った。そして日本人NBAプレーヤーの活躍と代表の躍進。今後の日本バスケットボール界がどうなっていくのか。ちょうど転機に差し掛かっていると思います。

 はっきりと言えるのは「時代は変わった」ということです。本当に変わったし、今後も変わっていくでしょう。その方向性について考えてみました。

 元々日本に根付くプロスポーツと言えば、プロ野球とJリーグに尽きるでしょう。歴史が長いプロ野球と1993年に世界的な選手を迎えて華々しくスタートしたJリーグ。この2つのリーグは少年たちの夢となり、プロを目指す選手と言えば野球かサッカーに限られていました。

 一方、バスケットボールはプロリーグが存在しておらず、トップリーグは社会人の企業チームで構成されていました。野球とサッカーを除き、部活動である程度の競技人口が存在するチームスポーツはバスケットボール、バレー、ラグビーの3つに絞れます。この3つは大学カテゴリー以降、実業団でのリーグが長年トップリーグでした。だから、「競技を仕事にする」ことが出来なかったんです。

 バスケットボールの競技人口は世界でも日本でも上位に入ります。しかし、トップリーグを観戦に行く人は決して多くなかった。25年前、僕が小学生だった頃はアリーナではない、地域の総合体育館で開催される試合に招待で観戦に行ってました。しかも当時は天皇杯で優勝に絡んでいたアイシンやいすゞ、ボッシュの試合です。試合後には選手たちが体育館の外に出てきて、サインをお願いできるような状況。ワイス団さん、高橋マイケルさんにサインを貰ってとても嬉しかったのを覚えています。

 それと同時にミニバスや中学、高校の大会もその体育館で開催されていました。競技者にとっては親しみやすい中で、規模が「プロ」ではない状況だったと言えます。

 バスケットボールの中心は関東である、と上京してから感じるようになりました。代々木体育館、東京体育館、関東学生リーグ。聖地と呼ばれる場所やチームの伝統がずっと根付いています。これは今でも変わりません。ただ、それはバスケットボールをある程度知っている人にとっての概念であり、そうでない人にバスケットボールを伝えるものではなかった。日本リーグ、スーパーリーグは企業の業績に左右されていた側面もあったし(いすゞギガキャッツ)、メディアに取り上げられることも多くなかった。当時は新聞のスポーツ欄の片隅に、結果が小さく載っているだけでした。

 そんな中で、2005年に完全なプロで構成されたbjリーグが誕生します。嬉しいことに地元にもチームが発足しました。しかし、各チームに意向があり、ここで日本バスケ界は実業団メインとプロに分断してしまいます。お互いにトップを目指しながら、並行してリーグが開催されるねじれの状態。実業団チームには伝統と資金力があるけど、新設のプロチームにはそれが無い。ジレンマが続きます。

 お互いに譲らなかった結果、2014年にFIBAからこの状態を問題視され、国際大会への出場が出来なくなりました。そこで、Jリーグを発足させた川淵キャプテンが中心となり、2015年に「Bリーグ」が発足したのです。

 それから今に至るまでの期間、様々なドラマを見てきましたが、強豪は元々の企業チームであることが多かった印象があります。しかし、今回決勝に残った2チームはそうではなかった。これまでに当たり前が当たり前ではなくなりつつある。だからどうやって変わっていくかが気になったのかもしれません。

 更なる改革を進めるBリーグは「Bプレミア」を発表しました。これは、戦績での昇格降を廃止し、アリーナや入場者数、言い換えると経済的な面の安定、成熟を材料として、各チームの参加の有無を判断するものです。これはイギリス型(各カテゴリーを勝敗数で判断し、入れ替え戦を行う)つまりはJリーグ方式ではなく、アメリカ型(チームの規模で判断し、基本的に所属は変わらない)への移行を意味します。

 日本では、プロ野球がアメリカ型、Jリーグがイギリス型と言えます。これまではB1~B3、そして地域リーグと門戸を開くことで各地域に応援するファン層を確立し、リーグ内の力(選手、資金、ファン)を分散させていました。

 イギリス型では各地域に熱曲的なファンが存在し、それでチームも成り立つ、すなわち経済も回ってチームが運営されます。しかし、一方で分散することによって個々のチーム力が決して強いとは言えず、様々な問題も生じます。特に資金面。僕の地元にあった大分ヒートデビルズ。子供ながらに心躍ったチームはもうありません。また、プロに行った知り合いもいますが、資金力が豊富でないチームの選手たちの事情も聞いています。

 アメリカ型への移行によって何が起こるか。恐らく、プレミアリーグに力が集中し、選手たちもそちらに流れるでしょう。純粋な競技力は上がる。まさにトッププレーヤーたちが鎬を削るリーグが出来る。しかし、一方でプロを目指す選手たちは減るかもしれない。全体への普及という点では少し狭まるかもしれない。

 これが良いことなのか悪いことなのかは判断できません。何というか、「バスケットボールで飯を食う」という幅が変わる感じです。ただ、NBAのレベルが段違いなのは、バスケットボールという競技の特性だとも思っています。サッカー、野球とは違い、5対5という少人数での戦いはこの力によるところが大きい。だから、本当のトップ同士の戦いの中で鍛え上げられていくんだと思う。人数が少ないバスケットボールという競技は面白いが厳しいものでもある、だからこそトップリーグの更なるレベルアップを目指してこの形に決めたのかと。

 昇格、降格のドラマは無くなるかもしれない。しかし、トップリーグのチームに懸ける思いは強くなる。そして、そのチームに所属し、活躍するという夢も膨らむ。一方でそうでなくなるチームも存在する現状をどうするか。選手、球団、ファン、そこにもちゃんとした価値を見出してほしいです。

 恐らく今後はNBAのようなリーグ、日本のプロ野球みたいなリーグを目指しているんだと思います。各地方の都市に大きな規模のアリーナが設置されて、試合自体が市民にとって毎週行われるイベントとなるような。グッズが売れて、レプリカジャージやウェアを一般の人も部活生も好んで着るようになる。休日の夜にはテレビで観戦するようになる。バスケットボールが野球、サッカーに負けない日本を代表するプロスポーツになる未来を想定している。

 日本バスケットボール界の新しい未来は始まったばかりです。

 

 

 

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