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【散文集④】本

 思えば小さい頃からわたしは本が好きだ。

 小さい頃は、モノとしての本が好きだった。

 小学校の図書館で随分くたびれた本があった。伝記本だった。

 その本を手にした時の喜びは今でも忘れられない。

 その本の何が好きだったかは未だによくわからないが、何か言い知れぬ魅力をその本は放っていたようにわたしには感じられた。

 中学の頃は、とにかく難しそうな本が好きになった。

 恐ろしく分厚い歴史書や数学に関する本に触れてワクワクしたものだ。

 高校の頃は、『ラーマーヤナ』や『ジャータカ物語』、芥川龍之介や、太宰治の『人間失格』に触れた。何かエキゾチックな雰囲気に魅了されていたのだろう。また、便覧が好きで、そこに書かれてある作家の経歴をずっと眺めていた。

 有名人の経歴を眺めていると、まるで自分のことのように感じ入り、もの思いにふけるのであった。

 思えば小学生の頃から有名人の経歴には関心があった。それをよく覚えては色々な人に披露して嫌がられた記憶がある(笑)

 そんなわたしがこのたび、本を出版することができたことは本当に喜びだった。

 ページは少ないが、わたしにとってはかなりの内容を詰め込んだつもりだ。

 見れば見るほど愛着がわき、本に触れただけで幸せな気分になる。

 あぁ、思えば小学生の時も全く一緒だ。

 本の形、肌触り、色合い、大きさ・・・

 どれをとっても最高じゃないか!

 ピタッとわたしの

“好き”

の鋳型にはまる感覚・・・

 こうして考えてみると、わたしにとって本は

“青春そのもの”

だと思う。

 なにかにつけ、頼りにしてきた感がある。

 そのせいだろうか、身の回りに本があると妙に落ち着く。

 机の上に

“積読”

しておくだけで、安心感があるのである。

 最近仕事のために半ば強迫的に本を乱読している。

 そうした時でも本はわたしにとって

“味方”

となってくれていて、決して嫌な気分にさせない。

 最近は乱読を仕事としてできることに喜びを感じている。

 こうして思い返してみると、わたしは本に対して恩を仇で返すような振る舞いしかできていなかったな、と思う節がある。

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