サレ男のきろく ~暴露~

「浮気、したんだね」

夏の短い夜を恨みながら、帰路に着いた。
蒸し暑い、扇風機の羽音も五月蠅かった朝方、私は寝られるはずもなく、早朝に起きだした妻に打ち明けた。

ラインを見たこと、核心の文面、ありのまま。
この日も妻とEが会うことは、ラインから知っていたから、また泳がせても良かったのだけれど、私の性格上、それができなかった。

贖罪の涙はなく、妻の謝罪は終わった。
「悪かった」と聞けはしたが、それよりも 「Eは友達として大事なのだ」、「久々に話の盛り上がる人ができた」、「Eは悪くない」、とその男の擁護と好意の言葉ばかり、私の耳には残った。

私の性格がこの発言を呼んでいるので、まだ妻への批判はやめてほしい。

妻を強く問いただし、反省させたり、負荷をかけることはできなかった。
私も初めてのサレる経験ではないし、私は平静を保ちたかった。
普段のキャラ通り、ユーモアを取りながら、事実を確認し、シリアスな空気にはしなかった。

できなった。

だから、妻はEを擁護する言葉を発せたのだと思う。
この期に及んで。
私に全ての発言が録音されていることも知らず。

こういう場面において、当事者本人からの直接の発言は重要な証拠の補強となる。
怠惰な学生だったが、"幸運にも" 私は法学部卒である。
こんな些末な話題より、どう比べても酷い案件ばかりだが、頭の中にはいくらでも参考サンプルを持っていいた。

私がこの場に及んで、ユーモアで忘れずに入れること、妻を攻め過ぎないこと、それができたのは、テスト期間しか行かなかった大学教育のお陰だ。
知、って大事ですねー。

次の手札の準備は、既に終えた。
妻が出社した後、その妻の録音を何度も聞いた。

その声を聴いている間は、数時間前の絶望を忘れ、恍惚に浸った。


                                                                                                            2022.06.25

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