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『はちどり』この韓国映画もまた「女はいつも、女に優しい」と教えてくれる 公開中

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原題「벌새」 英題:HOUSE OF HUMMINGBIRD ★★★★★

『82年生まれ、キム・ジヨン』とはよく似ているようで、やや異なる鑑賞後感。
でも、確実なのは、キム・ジヨンの少女時代と重なる思春期映画であり、これもまた女性の連帯を描いたシスターフッドの映画でもあるということ。

「女はいつも、女に優しい」これをやってくれているということ。
じんわりときますが、タオルが必要です。

韓国の新鋭女性監督キム・ボラが、自身の少女時代をベースに脚本から手がけ、ベルリン国際映画祭で14歳以上を対象にした若年の審査員が選ぶコンペ部門「ジェネレーション14plus」をはじめ国内外の映画祭で絶賛され、韓国の単館映画としては異例の観客動員15万人に迫る大ヒットとなったという作品。

『パラサイト 半地下の家族』と並んで、2019年の韓国映画で最も注目された作品です。その羽ばたきこそミニマムですが、とても貴重で尊いものです。


舞台となるのは、1994年。

中学2年生のキム・ウニは、ソウル大に入れと期待されているすぐ上の兄から暴力をふるわれ、遊びたい盛りの姉にも便利使いされる日々。父親は怒鳴りつけることが日課みたいなもの、母親はいつも疲れ切った表情です。お餅屋を家族経営するその家庭は、閉塞感に支配されています。

また、その年頃といえば、付き合っている彼氏とも、親友とも、告白された後輩の女子とも、たった1日で関係が微妙になることがままあります。

そんな時に出会ったのが漢文塾(習ってみたい!)の講師、年上のヨンジ先生。

その出会いがなければ、キム・ウニはずっと黙って耐え続ける女性のままだったかもしれません。

あなたの人生は、世界は輝いているよ、と教えてくれた唯一の大人なのです。


観ていてハッとしましたが、この1994年という年は韓国にとって大きな出来事が2つありました。1つは北朝鮮の国家主席キム・イルソンが亡くなった年。「死なないと思ってた」とのセリフも飛び出す(ウニの言葉ではありません)隣国の神格化された首領の死と、

もう1つ、とても身近で起きた、あまりにも突然な、日常が文字通り足元から崩れ去るような大事故、不正や怠慢の蔓延のために起きた“人災”。

加えて、ウニ自身もあることで日常から切り離されることになります。

思えば、喪失と別れだらけです。

その中で、自分こそ何かを諦めてきたようなヨンジ先生の存在、その言葉が、その声がウニにも、かつて少女だった私たちにも沁みていきます。そして、母の慈悲深い眼差しによる包容も。

その温かさを一身に受けて世界を見つめていきなよ、キム・ウニよ。
一瞬『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』を思い出したりもしました。

その意味でも今、必見。



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