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『ビッグ・シック』共感や受容を阻む、大きな病いを笑い飛ばす 2/23~公開中

映画鑑賞メモ

原題:Big Sick ★★★★★

ドラマ「シリコン・バレー」などで知られるパキスタン出身アメリカ人のコメディアン、クメイル・ナンジアニと彼の妻エミリーの実話を、その2人が脚本を務め、クメイル自ら本人役を演じた『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』

異文化の中で生きる、異文化とともに生きるという今日的なテーマを、笑いたっぷり、身近にも感じられる距離感で描いたロマンティックコメディで、期待をまったく裏切らないおもしろさ。アカデミー賞では脚本賞にノミネートされています。

妻エミリー役を演じたゾーイ・カザン、なぜにいつも、ああもかわいいのか!

そして、随所に差し込まれる「X-ファイル」やB級映画ネタ。「X-ファイル」に関するあるシーンでは、劇場で私だけ爆笑していました。

久しぶりに聞いたわ、あのセリフ。


当初は昨年夏、全米でたった5スクリーンでしか上映されていなかった作品でしたが、口コミにより2,600スクリーンまでに拡大公開。トランプ政権下において、高い支持を得てきました。

納得。この映画、好きだな~、大事なことをユーモアで包み込み、でもちゃんと届くように伝える。とても好きな映画です。

製作は、最近では『エイミー、エイミー、エイミー! こじらせシングルライフの抜け出し方』もよかった、さすがのジャド・アパトー

あらすじ

パキスタンで生まれ14歳のときにシカゴに移住したクメイルは、故国のパキスタンネタを主に客を笑わせるスタンダップ・コメディアン。ある日、波長があい、つき合い始めたのはセラピストを目指すアメリカ人大学院生のエミリー。

ところが、クメイルの母親は、同郷の独身女性たちを毎週のように彼に引き合わせ、お見合い結婚を勧めていた。

やがて、そのことがエミリーにバレてしまったクメイルは、2人の未来についても「わからない」と応じ、破局を迎えてしまう。

ところが数日後、エミリーは原因不明の病(Big Sick)で昏睡状態に。病院へ駆けつけたクメイルは、彼がエミリーを傷つけたことをすべて知る両親テリーとベスに出会うーー。


パキスタンでは両親が決めた相手とのお見合い結婚が常。クメイルのいとこは白人女性と結婚したことから、勘当されてしまったといいます。

伝統。そして宗教。その大切さはわかりますが、

クメイルが実際に14歳の頃から暮らしているのは、人種のるつぼといわれるほど多様性にあふれたアメリカなのです。

彼がピンチの最中に直面するバーガーショップでの押し問答は、今や万国に通じる、不寛容の一歩手前の事象のメタファーだと思わずにはいられません。

その辺り、脚本が本当に巧み。

そこで完全にキレきらないのが、彼のいいところだし、彼が育んできたもの、両親によって育まれてきたもの。


義理のお姉さんが、「サタデーナイトライブ」に出たらいいわよって軽くいうのが面白い。

全米俳優組合賞(SAG)などにノミネートされていた義理の母役ホリー・ハンターが切った啖呵も、すてきでした。


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