ベロニカとの記憶

『ベロニカとの記憶』1/20~公開中

映画鑑賞メモ

http://longride.jp/veronica/ ★★★★☆4.3 原題:The Sense of an Ending

40年前の初恋の記憶に向き合う…“忘却”とは本能的な自己防衛なのかも

突然、ある人物の遺言がきっかけで、40年前の初恋の記憶と向き合うことになった老年の男性トニー。記憶とは、自分よがりで不完全なもの。自分が少しでも傷つかないよう身勝手に編集し、歪みに歪んでしまうものなのかもしれません。ただ、その時の感情にまでも蓋をしてしまったら、その後の人生は空虚の中を生きるのに等しいのかもしれません。

この映画は、あくまでもトニーの心情に寄り添った描き方で、かつて彼が固く閉ざしてしまったその記憶と思いを、彼とともに探しにいくのです。


あらすじ

年代物のライカを扱う小さなカメラ店を営み、ひとりきりで暮らすトニーの元に、ある日、見知らぬ弁護士から手紙が届く。彼に、遺品として日記を遺したい女性がいると。その女性とは、40年前に別れた恋人ベロニカの母親だった。この思いもよらない遺品から、長い間忘れていた青春時代の記憶、若くして自殺した親友エイドリアンのことが脳裏に蘇る……。


「終わりの感覚」(The Sense of an Ending)というタイトルのジュリアン・バーンズによる小説の映画化。かつてノーベル文学賞のカズオイシグロも受賞したことのある、英国で最も権威のある文学賞・ブッカー賞を受賞しています。

メガホンをとったのは、インド・ムンバイを舞台にお弁当の取り違えから生まれる絆を描いて日本でもスマッシュヒットとなった『めぐり逢わせのお弁当』のリテーシュ・バトラ監督。1979年生まれ、また若い才能が出てきました。

ちなみに本作が長編2作目で、3作目はロバート・レッドフォード×ジェーン・フォンダの組み合わせで、伴侶を先に亡くした男女の出会いを描くNetflixオリジナル映画『夜が明けるまで』(配信中)。

主人公トニーを演じるのは英国のベテラン、ジム・ブロードベント『パディントン2』にも出ています。また、初恋の相手は『さざなみ』シャーロット・ランプリング

40年前の若き日のトニーには、舞台「幽霊」などで注目され、本作が映画デビューのビリー・ハウル。クリストファー・ノーラン監督『ダンケルク』にも、防波堤で「もやいを外せ」と指示を出す海軍士官を演じています。繊細でシャイな青年時代のトニー、ビリー・ハウルくんの演技には魅せられました。

これから、シアーシャ・ローナンとの共演映画2作が控えています。PRADAのモデルとしても活躍していたそうな。

また、同じく若き日のベロニカには『サンシャイン/歌声が響く街』のフレイヤ・メーバー

トニーの親友エイドリアンにはアン・リー監督の『ビリー・リンの永遠の一日』で主演に抜擢されたジョー・アルウィン

トニーの別れた妻マーガレット役には「ザ・クラウン」『つぐない』のハリエット・ウォルター、娘スージー役は「ダウントン・アビー」メアリー役で知られるミシェル・ドッカリー。さらに、「ダウントン・アビー」シーズン6に登場したマシュー・グードも出演しています。



トニーの娘スージーは妊娠中で、まもなく彼はおじいちゃんになろうとしています。しかし、遺品のやりとりのせいで心はここにあらずで、40年前と現代を行ったり来たり。

自らの記憶をたどり、別れた妻マーガレットにこと細かに話していきますが

親友は、自殺したのです。

やがてランプリングさん演じる老齢のベロニカとも顔を合わせることになりますが、なぜに彼女はああも素っ気ないのか

その謎を、我々もトニーとともに紐解いていきます。

トニーが過去の真実を完全に取り戻したとき、小さな命の存在が、トニーにとっても、観る者にとっても大きな救いとなっています。





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