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『チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛』その狂熱は、いつか冷める… 公開中

原題:Tulip Fever  ★★★☆☆3.5

ようやく日本上陸、配信スルーかDVDスルーになるかと思っていましたが、さすがにアリシア・ヴィキャンデルは全国区でしょうから、これから順次公開、じわじわと広がっていくところでしょう。

不貞の愛をキレイゴトとして描くことは好きではありませんが、この映画のアリシアとデイン・デハーンのラブシーンはそれはそれは美しく撮られています。


17世紀オランダのチューリップバブルを映画化

舞台は17世紀のオランダ。江戸幕府が鎖国下に長崎・出島で貿易をしていた相手ですが、当時のヨーロッパではイギリスなどに次ぐほどの勢いがあったそうな。

そんな時代のオランダでは、世界最古のバブル経済とされる“チューリップ バブル”がありました。珍しい色合いの変種のチューリップを、球根の時点から売買するのです。世界初の先物取引ともいわれているそう。

その背景は、映画冒頭でも説明されています。

『プライドと偏見』(脚本)『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』(原作)を手がけたデボラ・モガーのベストセラー「チューリップ熱」が原作

当時、スペインとの独立戦争に勝利したオランダはかなり景気がよかったらしく、富を得た人々は絵画とチューリップに熱中したのだそうです。そうした画家の中に『真珠の耳飾りの少女』でも知られるフェルメールもおり、

本作もアリシアのブルーのドレスや窓辺にたたずむ姿など、フェルメールをかなり意識した作りに。

監督は、『ブーリン家の姉妹』のジャスティン・チャドウィック、脚本は『恋におちたシェイクスピア』のトム・ストッパード、衣装デザイナーは『ある公爵夫人の生涯』のマイケル・オコナーなど、スタッフも豪華絢爛。


海外ドラマで活躍する豪華なキャストも

物語は、修道院で育ったソフィア(アリシア)が、親子ほども年の離れた、前妻と子どもを亡くした商業貴族コルネリス(クリストフ・ヴァルツ)と結婚するところから始まりますーー。

裕福なコルネリスが妻との肖像画を残したいと依頼するのが、デイン・デハーンが演じる若き貧乏画家ヤン。お金持ちだけれど日常がつまんな~いソフィアと、画家のヤンはすぐさま恋に落ちます。

あえて、だと思われますが、

ソフィアとヤンが結ばれ、不貞を重ねるシーンはあまりに甘美すぎて、それこそ、まるでアートのよう。花としての命は短いチューリップのように、儚い夢の狂気に惹かれただけのように見えます。

そんな狂熱はいつしか、あっという間に冷めるもの。

冷めたときの代償が、まあ大きいこと…。

やがては「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」をも想起させる展開が待ち受けています。


アリシアは間違いなく、コスチューム・プレイが似合う現代女優の一人ですね。

そして、熱に浮かされるあまり、理性を失ってしまう画家役を演じるデハーン。ここ5年くらい彼のファンですが、あまり好きにはなれない役でした。

もし彼のことが気になった方、『アメイジング・スパイダーマン2』以外にも

屈折したヘタレ男子がスーパーパワーを得るクロニクル
共演シーンはありませんが、ライアン・ゴズリングの息子役を演じたプレイス・ビョンド・ザ・パインズ/宿命
ダニエル・ラドクリフに惚れられるキル・ユア・ダーリン
体を鍛えてジェームズ・ディーン役に挑んだディーン、君がいた瞬間
さらに、珍しく宇宙に行ったヴァレリアン 千の惑星の救世主』あたりをオススメします。


とはいえ、今回、人間味があり、泥くささというのか、情事に血の通った感じが本当にしたのは、魚売りのジャック・オコンネルと屋敷のお手伝いのホリデイ・グレンジャーのカップルのほう。

ジャック・オコンネルは、アンジェリーナ・ジョリー監督作『不屈の男 アンブロークン』主演やジョディ・フォスター監督作『マネーモンスター』の犯人役などで日本に紹介されているはずですが、知名度なし、と判断されてしまったようで大変に残念。

『アンブロークン』の悲劇とでもいうのか。

でも、本作で彼の魅力が少しでも伝われば嬉しいですね。ピョンピョン飛び跳ねながら屋敷を去っていく後ろ姿が可愛すぎました。

英国の人気青春ドラマ「スキンズ」に出演しており、『ベルファスト’71』や、『ユナイテッド ミュンヘンの悲劇』『名もなき塀の中の王』、

最近では、エミー賞リミテッド・シリーズ部門にノミネートされたNetflix「ゴッドレス-神の消えた町-」が超絶にオススメ。製作にはスティーヴン・ソダーバーグが名を連ね、主演は「ダウントン・アビー」メアリー役のミシェル・ドッカリー。圧倒的な存在感を見せるジェフ・ダニエルズがエミー賞助演男優賞、「ナースジャッキー」でも知られるメリット・ウェバーが同・助演女優賞を受賞しています。


そして、ホリディ・グレンジャー『シンデレラ』の意地悪な姉その1や『ザ・ブリザード』のクリス・パイン妻が最も有名でしょうか。

「ボルジア家 愛と欲望の教皇一族」ではルクレツィア・ボルジアを演じていました。おすすめは『ライオット・クラブ』かな。J.K.ローリングが男性名義(ロバート・ガルブレイス)で書いた原作をドラマ化した「刑事ストライク」に、ストライクの秘書役で出演しています!

さらに、「glee」のマシュー・モリソン(デハーンのチャラい画家仲間)、「グレイズ・アナトミー」のケヴィン・マクキッド(チューリップ投資家)などの登場も何気に嬉しい驚き。「TABOO」「ナイト・マネジャー」にも出演する技巧派トム・ホランダ-はクセ者がハマります。

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