『ジュディ 虹の彼方に』ジリ貧でも圧巻、これぞ伝説のステージ 3/6(金)〜公開
原題:JUDY ★★★★★
これはレネー・ゼルウィガーが圧巻。もともと彼女はいわゆる“憑依系”だとは思っていましたが、撮影時ジュディ・ガーランドと同い年で挑んだステージに運命的なものを感じつつ、
映画序盤で訪れる、ステージでのワンカットの歌唱シーンでググッと心を掴まれたら、もう夢中。オスカーもひれ伏すしかありません。
急逝の半年前、再起をかけたツアーが行われた1968年冬のロンドンと、薬とアルコールで朦朧とした中で回顧する『オズの魔法使』やミッキー・ルーニーとの共演作『青春一座』あたりの日々が交互に描かれていきます。
ジリ貧のジュディ・ガーランド、ロンドン公演の日々を追う
落ち目でホテルも追い出され、子どもとは引き離されたジュディは
ジリ貧でロンドンへ。
そこには変わらずに愛してくれるファンがいましたが、やつれ、孤独で、ステージをこなしながら、飲み続ける日々に次第に疲弊していくジュディ。
ボロボロです。
『オズの魔法使』のころからスタジオMGMの“管理”という名のもとに薬漬け。興奮剤、安定剤、睡眠剤などを交互に服用し、次第にアルコールが加わっていきます。以前にドキュメンタリーで見たキャリー・フィッシャーと母娘の姿も重なります。
いわば“ハリウッド黄金期”の犠牲者でもあるわけです。子どもたちには、業界のクソだめ(失礼)には絶対に染まらせない、という母の決意も覗きます。
ハリウッドに才能と人生を搾取された、ともいえる彼女。しかし、このロンドンのステージでも明らかになったように、観客との間には確かな愛の交流があったのです。
ゲイカルチャー、LGBTQのアイコンでもあったジュディ。レディー・ガガやマドンナらと同様、光と影を持つ、彼らの憧れの存在だったことが2人のファンとの交流を通して触れられ、フィクションではありますが、これがまた、大変ドラマチックなクライマックスにつながっていきます。
何度でもステージで立ち上がるレネー
レネーはこれまでアカデミー賞主演女優賞に3度(本作と『シカゴ』『ブリジット・ジョーンズの日記』)にノミネートされたほか、『コールド マウンテン』では見事助演女優賞に輝いています。
一時期は、容姿の激変ぶりばかりが話題になり、自ら映画業界から距離をとった時期こともありました。
しかし、もともと憑依系ともいえる演技力には定評があった彼女です。リハーサルの1年前からアメリカで歌のコーチとトレーニング。その後、音楽監督のマット・ダンクリーと4か月のリハーサルを行い、ジュディの動きや訛りなどを研究してマスター。
私、今ある映像の一部でしかジュディ・ガーランドを知りませんが、特に似てる…!と思ったのは唇の動かし方、なんですよ、もう一度観て改めて確かめますが。
ジュディ・ガーランドが“再起”をかけた復活のステージのごとく、虹の彼方に夢を抱いて、何度くじけても、ステージに立ち続けるレネー。
オスカー無冠だったジュディ(子役賞なるものは受賞しています、トロフィーがミニサイズ)に代わって、2本目のオスカーを手にしたレネーの新たな代表作の誕生ですね。
この脇役にも触れておきたい
また、ロンドン<トーク・オブ・ザ・タウン>公演での世話係だった実在の女性ロザリン・ワイルダーを演じた、英国の最注目女優のひとりジェシー・バックリーとの関係性も最高なんです。
仕事上のマナーと友情との間で葛藤するかのような。
初日に「ムリ、歌えない」とバスルームに籠もるジュディを呼びに来て、ステージ上に引っ張り上げるロザリンことジェシー・バックリーをよろしくお願いします。
今年はロバート・ダウニー・Jr.の『ドクター・ドリトル』でヴィクトリア女王(!)、主演作であり英国アカデミー賞ではレネーと主演女優賞を争った『ワイルド・ローズ』が控えています。フローレンス・ピューと同様、この1年でグッと知名度があがるに違いない注目株です。話題を呼んだ海外ドラマ「チェルノブイリ」にも出演しています。
そして、『ラ・ラ・ランド』ではミアことエマ・ストーンにあっという間に振られてしまうザ・いい人=グレッグ役のフィン・ウィットロックが、ジュディの5人目の夫ミッキー・ディーンズに扮しています。信用が置けないキャラです、チャラいです、おすすめです。
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