『15時17分、パリ行き』この3人もサクラメント出身じゃないか! 3/1(木)~公開中
映画鑑賞メモ
原題:The 15:17 to Paris ★★★☆☆3.5
当事者の若者たちが“本人役”で登場し、実際に起こった「タリス銃撃テロ事件」に至るまでを、クリント・イーストウッド監督が描いた『15時17時、パリ行き』。
カリフォルニア州サクラメントのキリスト教系の学校で出会ったスペンサー、アレク、アンソニーの3人。学校から問題児のレッテルを張られ、一度は離れ離れになったもののその友情は大人になっても続いていました。
そして7年ぶりに再会した初めてのヨーロッパ旅行で、彼らはこの事件に遭遇するのです。
何か大ごとが起きれば、人は結果ばかりを見ます。
そこに至るまでのプロセスも時には取り上げられますが、あるバイアスがかかって紹介されることが多いもの。
本作にも全くバイアスがないというわけではありませんが(原作にあったテロリスト側のプロセスを排除)、そのプロセスを本人たち自らが演じることで生まれる説得力に圧倒されます。
高速列車という逃れられない密室のヤバさは、『新感染 ファイナルエクスプレス』でも立証済み(!?)
彼らがしてきたどんな選択、決断もまるで必然に思え、それがあったからこそ、この英雄譚に結びつきました。人生、何が待っているか、本当にわかりませんよね。
教育者に恵まれなかった子ども時代を経て、イタリアなどヨーロッパを巡りながら、自撮り棒でセルフィーをとりまくる観光客然とした彼らはますます親しみの沸く存在となり、
特にスペンサーはもしかしたら、太古からの人間の歴史に触れ、自分は何のために生きているのだろうと改めて思いを巡らせていたのかもしれません。
例えばスペンサーが、多少ふてくされながらでも、空軍として“地上”でやってきたことが一切なければ、間違いなく死者が出ていたでしょう。あの方もご本人だったんだ! と後から気づいたマークさんはもしかしたら亡くなっていたかもしれません。彼自身も危うかったのです、一歩間違えば。
ラストのオランド大統領(当時)からの受勲のシーンでは、スペンサーたちが噛み締めているものを思い、思わず涙していました。
長すぎるほどの助走の末、行き着いた誰もが知る結末に至るまで、もはや無駄なカットは何一つなかったんじゃないか、と思えてくる不思議。ハメを外しすぎたアムステルダムでのポールダンスでさえも!
これをちゃんと映画として再現させ、成立させるイーストウッドって、やはりすごい。御大、健在。
また、当事者本人たちで実際にタリスの車両の中で撮影したことを聞き、まずよぎったのは彼らのトラウマは大丈夫なのか、PTSDへの配慮は大丈夫なのか、ということだったのですが、プログラムなどを読む限りは、むしろこの撮影が感情の浄化につながったとあり、ホッとしました。
スペンサーやアレクは
確かにADDやLDだったかもしれない…だから何だ?
学校のいう問題児が将来、問題を起こすわけじゃないですものね、必ずしも。
ちなみに、カリフォルニア州サクラメントは『レディ・バード』でも舞台になっています。
なお、ご本人たちの子ども時代は、本作が映画デビューの子もいますが、一応プロの子役たち。
中でもアレクを演じたブライス・ゲイザーくんは、『僕のワンダフル・ライフ』の子どもイーサン。
次回作は、『ルーム』ジェイコブ・トンブレイくんの『ワンダー 君は太陽』。ジェイコブくん演じる主人公オギーをいじめる子らしいです。
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