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新型コロナ禍における「継続企業の疑義」に注目する

リスクに関連する情報は有価証券報告書内で記載されていますが、一番インパクトあるのは、やはり継続企業の前提に係る情報、ですね。継続企業の疑義!が付くと投資家が一斉に手を引いてしまうことになりかねません。

こちらの記載は、2003年3月期決算より始まりました。翌年度、事業リスク情報の開示も始まりましたので、両年度でリスクに関する情報が一気に充実した訳ですね。

財務諸表は継続企業であることを設計されているわけですが、その前提が成り立たなくなると財務数値自体の意味が怪しくなります

例えば、減価償却費は、企業が今後も継続することを前提に計上されていますが、仮に企業活動が継続できなくなる、とすれば前提条件が成り立たなくなります。

企業が継続できなくなる可能性があるということは、投資家に知らせる必要な情報です。ただし、継続企業の疑義=倒産、というわけではありません。

誤解をしないように申し上げておきます。これは、2012年の時の話です。継続企業の疑義がついても復活している企業があります。

新型コロナ禍による影響ではありませんが、ジャパンディスプレイもいま、その疑義がついています。

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こちら、2019年3月期より、です。

ジャパンディスプレイは粉飾の話もありましたね。

シャープは資本受ける先として、ジャパンディスプレイが考えられていた時期ありましたよね?確か。もしそうなっていたらどうなっていたのか。歴史にifはないですが・・。

さて、新型コロナ禍において継続企業の前提はどうなったのでしょうか?東京商工リサーチの調査結果を見てみましょう。

 2020年3月期決算を発表した上場企業2,386社のうち、決算短信で「継続企業の前提に関する注記(ゴーイングコンサーン注記)」(以下、GC注記)を記載した企業は25社だった。また、GC注記には至らないが、事業継続に重要な疑義を生じさせる事象がある場合に記載する「継続企業に関する重要事象」(以下、重要事象)は53社だった。
GC注記と重要事象を記載した企業数は合計78社で、前年度本決算(2019年3月期)の58社から20社増加(34.4%増)し、2013年3月期(73社)以来、7年ぶりに70社を上回った。78社のうち、新型コロナウイルス感染拡大の影響を要因としたのは25社(構成比32.0%)で、外出自粛や臨時休業など、緊急事態宣言のダメージが消費関連業種を中心に鮮明に出た。

前年度まではオリンピック景気!といった流れを考えれば34.4%というのは大幅増、といえるでしょう。ただし、新型コロナ禍の影響を理由に挙げていた企業は25社、ということですので、もう少し詳しく見てみる必要あります。

どういった場合に該当することになるでしょうか?監査・保証実務委員会報告第74号「継続企業の前提に関する開示について」から見てみましょう。

<財務指標関係 >
売上高の著しい減少
継続的な営業損失の発生又は営業キャッシュ・フローのマイナス
重要な営業損失、経常損失又は当期純損失の計上
重要なマイナスの営業キャッシュ・フローの計上
債務超過

<財務活動関係 >
営業債務の返済の困難性
借入金の返済条項の不履行又は履行の困難性
社債等の償還の困難性
新たな資金調達の困難性
債務免除の要請
売却を予定している重要な資産の処分の困難性
配当優先株式に対する配当の遅延又は中止

<営業活動関係 >
主要な仕入先からの与信又は取引継続の拒絶
重要な市場又は得意先の喪失
事業活動に不可欠な重要な権利の失効
事業活動に不可欠な人材の流出
事業活動に不可欠な重要な資産のき損、喪失又は処分
法令に基づく重要な事業の制約

<その他> 
巨額な損害賠償金の負担の可能性
ブランド・イメージの著しい悪化

となっています。

先ほどのジャパンディスプレイは、二期連続の減損損失と営業損失を理由に挙げていました。

2020年3月期において、継続企業の疑義もしくは事業継続の重要事象の注記を記載しなければならない企業は、新型コロナ以前に業績が悪かった企業が多そうです。

では、経済活動は再開しつつあるので、もう大丈夫!といえばそうではないでしょう。

まず、経済活動は再開しつつある、というだけで完全に再開出来ているわけではありません。そのため、ゆっくりと売上の減少が続いていく傾向にはあると考えられます。

特に固定費がかかる業種においては、利幅が小さくなってしまいますので、そのダメージは深刻です。

つまり、新型コロナ禍におけるマイナスを取り戻すにはまだまだ時間がかかる上、赤字、もしくは採算ラインぎりぎりで事業を行っていかなければなりません。

今は長期の借入金などで何とか存続できているという企業も売上減が続いていけば、キャッシュが底を尽きていくのは目に見えています。

となると2021年3月期の方が影響が大きい、と予想できそうです。

先ほどの記載で、

2013年3月期(73社)以来、7年ぶりに70社を上回った。

と記載があるように、2012年4月~2013年3月において経営状況が悪化する企業は増加してました。この背景には震災の影響があったと考えられます。

直後の決算よりも、一年後の決算の方がより継続企業の疑義に関するリスクが増す、といえるかもしれません。

どういった企業が新型コロナ禍においてダメージを受けているのか。四半期決算も出そろってきましたので、各企業の分析を少しずつ進めていきます。



 


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