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『信頼』で情報作成者と利用者を繋ぐ、公認会計士の役割

会計と人、社会を繋ぐ。

この観点から考えると公認会計士は信頼を創り出し、信頼という目に見えないもので財務報告と作成者、利用者をつないでいると、捉えています。

信頼とは何か目に見えないもの、です。積み上げていかないといけないもの、だと思います。そして壊れやすい。
だからこそ、公認会計士において求められる職業的倫理観は厳しく問われないといけない。

信頼のある情報とは単に不正がないというだけではない、はずです。
品質が保証されている。つまり、その情報が価値があること、ということも含まれています。料理店と似ていますよね。

その料理が味が問題ないだけではダメで、「美味しいかどうか」ということも保証しないといけない。つまり、信頼を持って利用できる情報とは、利用価値がある情報という意味を含んでいると思います。
ただし、公的な性格を持っている財務報告には品質の格付けというのはありません。それを会計士が判断するのもなんだか違う気がします。

今、KAM、いわゆる重要な監査事項に対する説明が求められているのは、監査のプロセスの可視化が問われているからです。監査のプロセスの可視化をしたからと言って、品質が向上するかどうかはわかりません。

ですが、監査対象における重要事項は何であるかを示すことで、情報利用者により安心して使ってもらえる財務報告に近づくのではないでしょうか?それは利用者だけでなく作成者にとっても、監査の信頼性を向上させることに繋がります。

意思決定に有用な情報を作成する点においては、会計基準設定、情報を作成する企業側(経営者)が担う点は大きい、と考えています。会計基準の範囲内で情報を作成しなければならないということは、基準が適正なものでないと有用な情報を作りだすことはできません。この意味で、会計基準設定が担う役割が大きいと言えます。

基準に依拠して情報作成の責任を負う経営者(財務担当者、CFO)が、意思決定に有用な情報を作成する、という意識がない限り、利用者にとって使いづらいものになってしまいます。経営者の情報作成に対する意識がとても大事になってきます。もちろん、情報を作成するにあたり、適正な内部統制が構築されていることは必須な前提条件です。

そうしたプロセスで作成された情報が公正妥当な会計処理基準に準拠しているかどうかをチェックするのが監査の役割、です。だからこそ、監査は最後のゲートキーパーと言われるわけですね。

会計基準の開発、対応という点においては収益認識、リース、金融商品、保険が終われば、大きなところは一区切り、となります。もちろん、デジタル通貨など新しい事象にも対応していかなければならないので、基準は今後も改訂が行われていくでしょう。

ただ、一つの終わり(区切り)は見えてきたのではないかな、と感じています。
この20年間、関係者は、新しい基準への対応ばかりに追い回される日々だったのではないでしょうか?

次の10年。会計士に求められていることは何か?
変わるものと変わらないものは何か?
それが問われているのではないでしょうか。

私はおそらく大きくは変わらないと思っています。公認会計士は信頼で、情報作成者と利用者を繋ぐ。そのことは変わらない。きっと。

ただし、世の中の経済状態は激変していきます。信頼の構築のプロセスやあり方は変化してくるかもしれません。

最後、少し付け足しになっていますが、デジタル化、DX(デジタルトランスフォーメーション)について触れたいと思います。一時期AIと騒がれていますが、リモート監査の対応が必要になり、まずは、AIより先にデジタル化が進んでくるでしょう。デジタル化され蓄積された情報をどのように利用するか。その付加価値としてAIが登場してくるのではないか、と思っています。

これまで対面で行なっていたもの、実地で確認していたものも、リモートで対応しなければならない状況が続くと予想されます。またデジタル化により大量の情報がインプットされてきます。情報の質、はわかりませんが、量が増えていくのは確実でしょう。

そうした情報をどのように処理していくのか。そこでAIなどが果たす役割は大きいと言えます。一方で、プログラム化されたものを疑う。つまりAIに対しても職業的懐疑心を発揮すること。その疑うことが、会計士、人でないとできないことかもしれません。


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