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心の底からの『有難う』を最後に言ったのはいつの日か(前編)

「有難う」を言って泣き、「有難う」を言われて泣いた。

いつも発してる5文字の言葉が、
いつもとは違う特別な言葉だと気づかされたエピソードを
未来のわたしのために、書き残そうと思います。

新卒で入社して丸12年勤めた会社を卒業しました

最高だった12年。
一言で言うなら、こうなります。

弊社の事業内容は、全国の看板業者のネットワークを生かし、多店舗展開している大手FC企業や代理店向けに、制作施工を一貫してお届けするプロジェクトマネジメントを主軸にしたサービスを提供しています。

私は入社から6年をメイン事業のプロマネとして、後半6年を人事として過ごしました。
”会社”というにはほど遠い、立ち上げ3年目だった入社当時。
事業も社内体制も手探りでカオスな時期にJOINしたわけです。
組織のいい状態、最悪な状態、どちらも体験できたし、みんなでいい会社を作ることにも取り組めた。人としての在り方も、業務スキルも身につけられた12年間は、本当にかけがえのないものでした。

看板職人さん達の義理人情

入社してすぐ、社会人のイロハもわからない、施工のセの字もわからない、クレームと赤字を出しまくってすべてを他責にしていたそんな頃から、一緒に仕事をさせてもらっていたのは全国の看板職人さんです。

この”看板職人さん”は、別の言い方をすれば、看板の会社を経営している”中小零細企業の社長さん”たちです。
 
なんの知識も持たないワカモン、しかも女子が指示を出す。
やりづらかっただろうな・・。と今となっては思いますが、現場に顔を出し、差し入れをし、雑談をし、恋愛相談に乗ってもらい、体を労わる言葉がけを心掛けました。自分の言い分だけじゃなく、相手の言い分を理解して仕事ができるようになったのは、社会人を4年くらい経験してからだったと思います。職人さんたちには現場のことだけじゃなく、商売の厳しさも教えてもらいました。

関係性を少しずつ積み重ねていく中でいつの間にか、入院時にお見舞いに来てくれたり、結婚式の2次会に来てくれたり、仕事を超えてよくしてくれる人たちにも恵まれるようになりました。

”退職の挨拶”は仕事相手と人生最後の会話かもしれない

本当はどんな瞬間も、"今が最初で最後"、ですが、人はつい次があると思ってしまいます。何か区切りが目の前に迫らないと、そういう意識を持つのが難しいようです。

退職を控えた5月上旬。
お世話になった職人さんたちに、12年間の感謝をちゃんと伝えきりたいと思い、退職挨拶の電話を掛けました。
立つ鳥跡を濁さず。と言いますが、何事も「美しいエネルギーで終わらせる」ことが非常に大切だと私は思っています。

数年ぶりに電話をかける人もいましたが、どの職人さんにも、人生最後かもしれないという気持ちで『有難うございました』を伝えました。『寂しくなるね』『いつでも困ったことがあったら連絡してね』『こっちに来たら遊びに来てね』『やりたいことにチャレンジするのがいいよ』。皆さん本当に温かい言葉をかけてくれました。
 
ですが、中にはどうしても『有難う』が言えない人達がいました。

最後の最後で、有難うが言えない

そう、困ったことに有難うが言えないのです。

言えない、というのは、感謝することがない、とか、言いたくない、ということではありません。

沢山助けてもらって、沢山気に留めてくれて、これまでの関わり方が有り難すぎて気持ちが言葉にならなかった…
有難うって言いたいのに、それより先にあついものがぐわわーって込み上げて、声を出せなかったのです。

心底しんどい時に、仕事も心も助けてくれた職人さんたち。
仕事での付き合い以上に、金銭的な関係以上のもので繋がっていたんだと実感せざるを得ませんでした。

どうにかギリギリ音になるかならないかの『有難うございました』を喉からふり絞り、あー、感謝の気持ちってこういうことだなぁ。と体の底から感じたのでした。

言行一致しているか

毎日「ありがとう」って言葉を使っているけど、肚の底からの有難うを最後に言ったのはいつの日か。

みなさんは覚えていますか?

私は今回の件を通して体感した、身体から湧き上がってきた感覚を忘れずにいたいと強く思います。身体を通して出てきた言葉だから宿るエネルギーがあったと思います。

身体の感覚(魂の感覚)と、自分の口から出る言葉を一つにする。

自分の魂に嘘をつかない。
腹の声に従った生き方を。

もし、みんなも「有難う」って言いそびれている人がいたら、伝えてみて欲しいと思います。

あの時照れて言えなかった一言を、強がって言いそびれた一言を。

その人との最後の時がやってくる前に。
相手のためにではなく、自分自身の人生の為に。

ありがとうは挨拶ではなく、肚の底から湧き上がってくる感情を、どうにか言葉にしたものなんだと知りました。この感覚が日常にあふれていたら、心はたぷたぷに満たされるし、毎日が彩り豊かになると思いませんか。

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ありがとうを言われて泣いたエピソード、は後編で書きます。

心の底からの『有難う』を最後に言ったのはいつの日か(後編)