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「街②」縁起の良い街

「街」シリーズ第2弾。


仙台。


東北最大の都市で、3.11 では大きな被害が出た街。
3.11 の時にテレビで見た仙台空港の姿は、忘れない。

仙台も客室乗務員時代に、何度も「ステイ」をした街。
客室乗務員みんな、仙台ステイは楽しみにしていた記憶がある。


牛タン
はらこ飯
お酒
など、美味しいものがいっぱいだからだ。

客室乗務員は、その土地その土地の美味しいお店を、本当によく知っている。
新人時代は、先輩たちが連れて行ってくれるお店に行くたびに、
「こんなに美味しいものがあるんだ」と感心していたが、そのうちに自分自身で美味しいお店を発掘するのが楽しくなっていった。

仙台の思い出といえば

今だから言える話ばかりを書こう。

仙台は夕方頃に到着して、朝早くのフライトというパターン。
だからこそ、夕食を兼ね、その後も先輩やキャプテンたちと一緒に飲みに行く。
中には酒豪のキャプテンたちもいて、付き合いが悪く途中で帰ると
機嫌が悪くなるので、翌日の仕事の支障にならないように、「飲んだフリ」をすることを先輩に教えてもらったのも、仙台ステイの思い出の一つだ。


今なら、「アルハラ」と言われるのだろうが、決して悪い人ではないが、酒癖はよろしくない人たちもいたように思う。

そして朝6時にタクシーに乗って空港まで行く時、ほとんど誰も喋らない。
飲みすぎて気分が悪いのだ。
(今は違反ですが、当時はなんの決まりもなかった)

空港での朝ごはんも誰も食べず、コーヒーだけ。
ほとんど無言でフライトの準備をして、お客様がいらっしゃると途端に笑顔。
そうして、フライトをこなして行くうちに、だんだんと元気が戻ってきて、
(若さの証拠だな・・・)その日は別の土地にステイのため、また夜の街へ・・・

という、仕事と遊びが一体化していた。

(こんなことをしているからきっと嫉妬されて、24時間ルールができたんだと私は思っている)

ある時、仙台で客室乗務員3名で食事に行った。

すると、隣のテーブルにいた男性客から声をかけられ、強引に席を移ってきた。

「会社の先輩と後輩?」


「よく飲みにくるの?」


「どんな仕事なの?」

と色々と聞かれるが、答えられないこともたくさんある。
そもそも女子3人で楽しく話していたのに、少々めんどくさいな、と思っていた。

そこで、後輩が答えた。
「どんな仕事?何関係?」

という質問に

「仏壇屋です」

と。


私は、「はあ?」と心の中で思ったが、後輩は平然と「仏壇屋も大変なんですよ」と喋っている。

客室乗務員は、機転が利く人が多い。
だからこそ、接客ができるのだと思うが、この「機転」には感心した。

男性たちも「仏壇屋」と言われたら、なんと返していいのかわからなかったようで、話はあまり盛り上がらず、私たちも早々にホテルに戻った。

そして翌朝、笑顔で「おはようございます」「いらっしゃいませ」と言っていた時、
「うん?」
という声が聞こえそうな表情の男性客がいた。

そう、昨日声をかけてきた男性3名が乗ってきたのだ。
そして、気づかれてしまった・・・

「何が仏壇屋だ」と思っただろうが、それ以上はお互いに何も言わないし、聞かない。
相手もバツが悪かったのではないか、と思う。

仙台には他にも良いところがたくさんあるはず

仙台の街の記憶は、夜しかないのが残念だ。
青葉城もある、松島もある、と聞いてはいたのだが、いずれも行くことができていない。
一昨年に数十年ぶりに仙台に行ったのだが、その時も仕事とホテルステイが目的だったため、結局観光地には行っていない。


その際エアライン希望者の方のお茶会を開催し、2名の方が参加され、その後2人とも客室乗務員試験に合格された、縁起の良い街でもある。

そろそろまた仙台にも行こうかな、とこれを書いていて思う。


はらこ飯を食べに。
青葉城と松島を見に。

3.11 の時には、寄付くらいしかできていないが、現地に行くのが復興支援と聞いたこともある。

仙台土産


お土産は、「萩の月」と「笹かまぼこ」。
もう少し季節が良くなったら、「佐藤錦」(さくらんぼ)

仙台へのフライトの時には、空港の売店に駆け込んでこれらのものを、買い溜めしていたのが懐かしい。

今は、制服姿で買い物をしていると、お客様からクレームがくるので、禁止されていると聞いた。
(なんて、世知辛い世の中だ、と思う。仕事はちゃんと終わらせて、ダッシュで買いに行っているし、売り上げ貢献にもなっているのに、と思う)

時には「ササニシキ」の新米を2キロ買って帰ったこともある。

実に客室乗務員は、少しもじっとしていないのがお分かりだろうか。


上野 博美


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