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1月2日のJALの炎上事故について、元航空関係者だった私が思うこと


地震に引き続き、航空機の事故というニュースが流れ、2024年は波乱のスタートとなりました。

もうこれ以上の災難が起こらないように、祈っています。
また、海上保安庁の方々のことは本当に残念で、心からご冥福をお祈りいたします。

まだ事故原因は調査中ですので、なんとも言えませんが、私の周りの航空関係者たちはすでにある程度の原因予測をしていました。
昨晩グループLINEが数通飛び交いましたが、それ以降は事故の際のその後を知っているので、
誰も何も発しません。たとえ友達同士でも・・・

航空会社というのは、世間から見ればとても華やかな世界に見えることと思います。
それゆえに、誤解も生じやすい業界でもありますし、
理解してもらうことがとても難しい、と客室乗務員現役の時にすでに感じていました。

しかし、実際にはまずまたキャプテンたちは今回のような事故が起きた時、どうやって無事に着陸をさせ、どこに駐機させ、どんな指示を客室乗務員たちに出すのか、の飛行技術と、フライトコントロールの全権を会社から任されるに相応しい厳しい訓練を、日頃から受けています。

客室乗務員も、このような事故がいつ起きてもすぐに
対応ができるように、新人訓練は大変厳しく、合格できない人はその昔は解雇、今はリチェックが必須となっています。

その後一人前になってからも、緊急事態訓練は最低1年に一回、ペーパーテストと実技試験を受け、これにも合格点を満たす必要があります。
最も事故が多いとされる、離着陸時には、「緊急事態の流れ」をレビューしながら着陸をしているはずです。
だからこそ、咄嗟の対応ができたのだと思いますし、
何よりパニックもなく、(たった一つの)→(後に三箇所のドアと訂正されています)ドアしか使えない中、
全員が脱出できたという、素晴らしい結果となったのだと思います。
これは、日頃の訓練の賜物です。

SNSなどで「早くドアを開けてください」と言う、
お子さんらしき人の声が聞こえますが、客室乗務員は、自分の担当ドアを開けていいのか、どうなのかの判断をしなければなりません。

もし、火が出ている場所のドアを開ければ、
その付近の乗客全員が炎に包まれることになるからです。

このドアを守ること、開けるかどうかの判断も含めて、が客室乗務員の自らの命も賭けた仕事なのです。

人の命を救う、自分の命よりも優先して・・という仕事は他にあまりないと思います。

自分が死守するべき担当するドアを開けるべきかそうでないかの確認は、最大限慎重に行ったのだと、私は思います。

その結果、前方の左右と後方の左側の三箇所のドアが、使用が可能と判断され、そこから300名以上の乗客が、脱出を完了したことになります。

本来90秒での脱出を想定して訓練をしていますが、
それは機体の半分のドアを使用した場合であり、
たった3つしかドアが使えない場合は、それ以上の時間がかかることは、致し方ないことでしょう。

その上で、全員脱出ができたため、航空関係者はその難しさを知っているからこそ、大絶賛しています。
私も、私の周りの航空関係者たちも素晴らしいと言っていました。

ただ、この快挙について、制服のことなど、
色々と批判をする人たちがいるようです。
なぜこの素晴らしいプロの仕事に対して、ちゃんと
評価をしないのか?
これが、「この業界が誤解されやすく、理解されない例」だと感じています。

別の媒体に私が書いた、この事故についての文の一部をご紹介して終わります。
どうぞ一人でも多くの方々が、この素晴らしい仕事を
理解してくださるよう、元航空関係者の一人として、
心から願っております。

負傷された皆様のご回復を、心からお祈りいたしております。
このような事故が2度と起きないよう、徹底した調査と原因究明を希望しています。

クルーの皆様、本当にお疲れ様でした。
まだまだこの後処理があり、なかなかゆっくりと休めない状況だと思いますし、PTSDなどの後遺症も心配されます。
1日も早くゆっくり、ぐっすりと休める日が来るよう、願っております。

******

「客室乗務員は空飛ぶウエイトレスだろ」

とその昔お客様に言われたあります。
20代半ばだった私は、40代くらいの男性の
お客様に一切反論はしませんでした。
なぜなら「お客様に平常時に保安要員のことを説明しても、わかってもらえないから」です。

しかし、客室乗務員の知識と、的確な判断と誘導がなければ、今回全員の脱出、それもとても短い時間での脱出(訓練では90秒を想定しています)は不可能だったと思います。

客室乗務員は、空飛ぶウエイトレスのフリをしているけど、実際には、乗客の安全を預かっている専門職であるということを、是非知ってほしいと思いました。


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