見出し画像

抹茶のなかみ

「抹茶はどうやってつくられているのですか?」と時々聞かれます。
抹茶は碾茶(てんちゃ)を用いてつくられます。「覆い下栽培」といって、茶畑に覆いをかけて日光に当たらないようにして育てた生葉を、揉まないで乾燥させたものが「碾茶」です。その碾茶から茎や葉脈などの余分な部分を取り除き、茶臼などで挽いて微粉状に製造したものを「抹茶」といいます。

画像2

日差しを当てずに栽培することで、うまみの多い柔らかな新芽に育ちます。そのため、うまみ成分であるテアニンは煎茶よりも抹茶の方が多く含まれていますし、ビタミンCやβ-カロテン、食物繊維などもたくさん含まれています。
抹茶の成分を調べてみると、面白いです。

”スーパーフード”として注目される

茶葉を抽出して飲む煎茶や玉露とは異なり、抹茶はお茶の葉を丸ごといただくので、身体によい栄養素をより多く摂取することができます。

栄西*が1212年に著した『喫茶養生記*』の冒頭に「茶は養生の仙薬、延齢の妙術なり」と書かれているように、茶が古来より健康飲料とされ、薬として珍重されたというのも納得がいきますね。

*栄西 日本臨済宗の開祖。宗から茶種をもたらして栽培し「喫茶養生記」を著す。
*国立国会図書館デジタルコレクションより

海外ではスーパーフードとして注目され、北欧でもお土産に喜ばれるとか。
抹茶入りのお菓子もたくさんありますね。抹茶の生産量は爆発的に増加していて、その原因はいわゆる加工用抹茶だそうです。ハーゲンダッツやスターバックスの日本進出の影響は大きいものがあるといわれています。

一台の石臼が挽ける量は…

一台の石臼が挽ける量は1時間に40グラム。ちなみに、市販されている抹茶一缶は20~30グラムです(大きいものですと、100グラム缶や150グラム缶もあります)。

画像1

『宇治抹茶問屋4代目が教える お抹茶のすべて』誠文堂新光社より

濃茶と薄茶は、どこが違うの?

昔は、老齢の茶の木からとったものが濃茶、若い木から摘んだものが薄茶とされていましたが(参考:ブリタニカ国際大百科事典)、今はそうした区分けはされていないようで、「薄茶」に対し、うまみや甘みに勝るものが「濃茶」とされています。

抹茶を求めるさいは、ひと缶1000円ほどのものですと美味しいといわれています。
濃茶向きの抹茶は値段も張りますが、それで薄茶を点てると甘くて美味しく、逆に薄茶用の抹茶で濃茶を点てると苦くなるようです。もっとも、濃茶にも苦みが強いものもありますしので、一概には言えませんが……。

そして、美味しくいただくために大切なことは、点てる前にふるっておくことです。専用の抹茶篩(ふるい)を使うときめ細かくなりますが、手早くしたいならば菓子用の粉篩でも十分です。

画像3

5月は新茶の季節ですが、抹茶の新茶は11月まで待たなくてはなりません。碾茶の新茶は、茶壺(写真参照)や茶櫃に入れて、夏のあいだ涼しい場所で熟成させることが必要だからです。そして、飲みごろをむかえる11月に炉が開かれ、茶壷の口が切られます。口切の茶事は、茶人のお正月ともいわれます。

参考文献:




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?