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学校は何のためにあるのか~こども会議~

こども会議からの問い

12月のある日、子どもたちと保護者数名が学校の中庭で話し合っていた。「こども会議」は、学校に対しての疑問や不満・要望についての話し合い、興味深く私も横で拝聴していた。

その保護者から、後日手紙とその「議事録」が届いた。

疑問
・なぜ学校があるのか?(塾とかでいい)
・だまってそうじをするのはなぜ?
・なぜモップがあるのに、ぞうきんでやらないといけないのか?
・なぜ水曜日は6時間目になったのか?
・なぜフェイスシールドはだめなのか?
・ゲームやお菓子などがOKでないのはなぜ?
・計算ドリルはなぜ書きこみはダメなの?
・ベランダに出てはいけないのはなぜ?
・なぜ下校は集団でないといけないの?
・なぜ白い服でないといけないのか?
意見・要望
・遊びや図書の時間を増やしてほしい。
・お楽しみ会をしてほしい(スランプラリーや宝探しなど)
・毎日地区別下校がいい。(一斉下校は毎日密になるから)
・給食を運ぶワゴンやエレベーターがほしい。
・音楽会の事前撮影したものを販売してほしい。
・怒られたとき「そんなんやったら来なくていい」という先生がいる。言い方や怒り方に気を付けてほしい(不登校の原因にもなる)。
不満
・苦手な先生がいる
・言ったら怒られる。 ・説教が長い
・連帯責任にされるのがいや(個別に怒ってほしい)。
・自由がいい 
・コロナで休校になった分、授業や宿題にしわ寄せがきている。
・換気のため窓を開けたら、カーテンが邪魔になる。
・登下校のボランティアさんがこわい
・こどもが言える場がない。 ・児童会がない。  

「先生に話を聞いてもらえない」

疑問などを見ていると、担任の先生が答えてくれないのだろうかと思った。

自分が担任なら、話し合い以前にまずこれくらいに答えたうえで、さらに必要なことを話し合うようにするだろう。とにかく、いちばんいけないのは、それを「きまりだから」と一言で片づけてしまうことだ。

実際、「先生に意見を聞いてもらえない」という意見もあった。

疑問については、子どもにとって自然な考えだと感じた。むしろ、こういう考えは、成長してきたことの証だ。だから、そのことを認め、「それでいいんだ」と認めてくれる大人が彼らには、今必要なのだと思う。だから、真剣に誠意をもって答えねばならない。

私はどう返事したらいいか…冬休み中に悩んだ。悩んだ末に、上記の疑問について自分なりの「お返事」を書いてみた。

その中でも、なぜ学校があるのかについては一番時間を使った。不登校の児童とかかわる中で、またコロナ禍の中で、自分なりに学校の意義についていろいろ考えてきたことも含め、昨年よく考えたことでもあった。

私は、できるだけ子どもたちや保護者にも伝わるような言葉を意識して、こう書いてみた。

なぜ学校があるのか

 なぜ学校があるのか?
 まず、この質問の答えから考えてみましょう。他の質問の答えにもつながっていく、いちばん柱になることだから。答えを一言でいうと、すべての国民が教育を受けられるようにするためです。
 塾だと、お金がかかりますよね。塾代を毎月払えるおうちはいいですが、払えない家の人はどうなりますか?「お金がなければ学べない」世の中だとどうなるか、少し考えてみましょう。
 学べないということは、まず「読み書き計算ができない」ということにつながります。字が読めなければ、説明書も新聞も読めません。ということは、高校や大学に入るためのテストも受けられず、なりたい仕事にもなれません。本が読めないということは、いろんなことを考え知識を吸収することも難しくなります。お金が計算できなければお金もたまりませんし、高い収入のある仕事につける可能性はますます低くなります。お金のあるなしで、自分の人生が決まってしまう…。それってどう思いますか?
 かつて日本にもそういう時代がありました。その反省から、日本国憲法をつくったときに、日本国民がすべて平等に教育を受け、自分のなりたい自分になれる権利があることをはっきりと書いたのです。つまり、子ども一人一人が自由に生きることができるには、教育が欠かせないということなのです。
 そして同時に、大人は子どもに教育を受けさせる義務もあるとされました。だから小中学校のことを「義務教育」というのです。だから教科書は無料でもらえるのです(一度、教科書の裏表紙を見てください。)。また、機会があれば外国の教育について調べてみてください。
 日本のすべての国民が、学ぶことで自分の可能性を伸ばし、本当に自由な人生を生きていくためには「学校」という仕組みが欠かせないと、私は思います。
 その考えを基本として、他の質問にも答えていきたいと思います。
 ただ、あくまでも一つの考え方としてとらえてください。それでも意見があれば、考え直してもいいと思っています。

このあと、各問いに答えていくと、最終的に4000字を超えるボリュームになってしまった。子どもに伝えるには、もっと短く端的にしないと…

また、このお返事にどのような声が返ってくるのか。出てきた声を受け止め、話し合いを深めることができるのを楽しみにしている。

多様性を認め、話し合いのできる学校に

これが正解だとは思っていない。むしろ、これを機に話し合いを重ね深めていくことが大切だと思う。

学校も変わらないといけないと思う。それは、多様性を認めること、児童や地域保護者と共通のビジョンを持ち、話し合いを重ねる関係をつくることの2つだと、今は思っている。

そして、それらはおそらく日本の社会全体の課題でもある。

ただ、それには問題が山積している。コロナ禍の中、保護者との関係づくりはいっそう複雑になってきている。現場にゆとりをつくるための予算配当や人員確保、世間の声の醸成が必要だ。それにはまだまだ時間がかかるだろう。

まずは自分にできることから始める。3学期は学活などでくらしのきまりを見直すなどの提案をして、「先生は話を聞いてくれない」という思いを変えたいと思う。

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