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短編小説『昼下がりの消失と出現』

 雨上がりの昼下がり、僕はいつもの喫茶店の定位置に座っていた。
通りの様子を悠然と見渡せる、窓辺のテーブル席だ。

 先程まで街に降りしきっていた雨は止み、濡れた路面には水溜りが散在している。
憂鬱な梅雨を象徴するような轟音から一転、世界は再び暫定的な静寂を取り戻したのだ。
空には重層な雲の間隙から太陽が顔を覗かせていたが、窓の外の街路樹はその陽光を阻んでいた。

 『ブリロ』というこの喫茶店の前の通りには普段から人も車も往来が少なく、束の間の安息に浸るには、僕にとってこの店は絶好の環境だった。

 そして店内は僕の望み通りの静寂に包まれている。客は疎らだ。
天井には、年季の入ったシーリングファンが一定の回転速度を維持している。そしてその一貫した恒常的な回転は、店の雰囲気を一層平和的で落ち着かせているような気配があった。
ベージュの壁には『キャンベルのスープ缶』や『マリリン・モンロー』といった色彩豊かなポップアートが飾られている。

 そのような環境下で、僕はアイスコーヒーを飲みながら通りの街路樹を眺めていた。
昨夜奇怪な仕事を終えたばかりの僕の身体は、まだ少し疲れが残っていた(私立探偵を職業とする人間にとって、奇怪な仕事というのはもはや普遍的ではあるのだが)。

 だから特にこの時間帯は何を考えることもなく、ただ窓の外の景色を眺めているに過ぎない。
そこに凝縮された具体的なイメージなど、一欠片も介在する余地はなかった。

 グラスに浮かぶ氷を見てふと僕は、南極大陸の雄大な景色を想像した。極寒の気候と広大な氷の世界。
その極めて限定的なイメージを心に保ちながら、再び僕は口内にその冷気を捉えた。
しかしやがて僕の中に表層した南極大陸は、少しずつ意識の片隅に沈んでいく。
遥か遠い世界によって僕の思考回路が凍結するのは、ほんの僅かの時間のようだ。

 気が付くと、グラスの中身のコーヒーは殆ど干上がっていた。
後には海岸に座礁したクラゲのように、いくつかの氷がグラスの底に佇むだけだ。

 不意に僕は、僕の真隣の壁に飾られたマリリン・モンローを見上げた。
額縁の中の彼女は鮮やかで耽美な表情をしている。

 しかし彼女はその蠱惑的な微笑を突如中断させて、一瞬真顔で僕を見下ろした。
永遠に固定される筈の彼女の表情が、その一瞬だけ真顔に切り替わり、そしてすぐに元の微笑に戻ったのだ。
僕はそれを見逃さなかった。そして彼女の真顔には、やはりどんな感情も込められてはいなかった。

 やがて僕は席を立ち、会計を済ませ、店を後にした。
外に出ると、七月初頭の蒸し暑い気候が僕を襲ってきた。太陽がその光を街に落とし込み、雨に濡れた世界を必死になって乾かしているかのような勢いがそこにはあった。  

 僕はシビック・ハッチバックを運転して、通りを走っていた。
平日のこの時間帯は、いつも道が空いている。
とある一点の疑念を除けば、それ程悪くはない気分だった。

 僕はFMのスイッチを入れた。
車内にハスキーな女性の歌声が流れ出した。
その女性は、どこか寂寥感が漂うジャズを歌っている。彼女は英語でその歌を歌っているので正確なことは何も言えないが、きっとその歌の歌詞はペシミスティックな内容なのだろうと僕は想像した。

 心地良い音楽と冷気が充満する車内で、僕には一つ気掛かりなことがあった。
つい先程、ブリロを出た際のことだ。

 会計を済ませてから扉を開けた直後、不意に僕は自分が座っていたテーブル席の方向に目をやった。
そしてすぐに僕はその変化に気付いた。
彼女が居るべき定位置に、当の彼女の姿がなかったのだ。
マリリン・モンローは額縁の中から完全に消失していた。

 それに対して僕は何かしらの反応を表面に出すことはなく、そのまま店を退出した。
店内に居た僕以外の他の誰も、彼女の突然の不在に気付いた様子はなかった。
そして僕は、あまりにも極端なその変化を誰かに指摘しようという気は微塵も起こらなかった。理由は分からない。

 それから数分が経過して車を走らせている今でも、何故そんなことが起きてしまったのだろうかと僕はずっと考えていた。
その疑念は僕の心の中に、浮かんだり、消えたりを断続的に繰り返していた。
本来不変であるべき彼女の一瞬の表情の変化とも、その消失には相関関係があるのだろうか?

 しかし僕には分かっていた。
きっとどんなに考えたところで、それについて理屈の通るような思索にたどり着くことは到底不可能であると。
型に嵌ったロジックを用いて、その奇妙な現象の意味を追究しようとすればするほど、真理は手の届かない領域へと行ってしまうのだろう。
結局は、考えるだけ時間の無駄だ。

 僕はハンドルを左に切って、道を左折した。
この通りを少し先に進めば、僕の自宅のマンションに到着する。
僕はオフィスに戻る前に、一旦自宅に寄ることにしていた。仕事で使う一眼レフのカメラを部屋へ取りに行くためだ。

 そのマンションは、オフィスと先刻のブリロのちょうど中間地点に位置している。
普段からその三つ巴を満遍なく行き来する僕にとって、その位置関係は何かと都合が良かった。

 敷地内の駐車場にシビックを駐めると、僕は外に降りた。
すぐに陰鬱な湿気が僕の身体に纏わりついてきた。
僕は若干それに閉口しながら、エントランスまで歩いた。

 ガラスの自動ドアを抜けると、そこには見慣れたロビーがある。薄暗いロビーは閑散としており、人の気配は全くなく、静かだった。
管理人室の窓は色褪せた緑のカーテンで仕切られており、そこからはやはり何の物音もしてはいなかった。
僕は管理人室を横切り、エレベーターの方まで歩いた。

 ボタンを押し、僕はエレベーターの到着を待った。
しばらくして扉が開き、僕は中に乗り込んだ。僕の部屋が位置している十三階のボタンを押すと、エレベーターは静かに上昇していった。

 やがて指定の十三階に到着すると、僕はエレベーターを降りて自室へと歩いた。
およそ十五メートル直進してから、右に曲がったすぐ先に僕の部屋が待ち構えている。
僕はそこまで歩き、少し汗ばんだ右手で鍵を持ち、扉の錠を開けた。

 室内はカーテンを閉め切っているために少し薄暗く、そして蒸し暑かった。
僕はバルコニーへと続く窓まで直行し、カーテンを開き、窓を全開にした。控えめな微風が部屋に入ってきた。

 部屋の方を振り返ると、やはりそれはダイニングテーブルの上に置いてあった。一眼レフのカメラだ。
今朝、部屋を出る前にわざわざそこに置いていたにも関わらず、僕はそれをそのままの状態にして出社してしまったのだ。

 僕はそのペンタックスの一眼レフを手に持った。
カメラに内蔵されたメモリの中に、昨夜の仕事で撮影したとある証拠写真が残っている。とても奇怪な現場を撮影した決定的な証拠写真だ。
僕は再度、写真の写り具合を簡易的に確かめていた。

 その確認作業の最中、不意に僕はバルコニーの方を向いた。
何か、いつもの景色の中に妙な違和感があるような気がしたのだ。

 僕は違和感の正体を探ろうと、数秒間視線を右往左往させていた。
そして僕はそれに気付いた。そこには信じ難い光景があった。

 僕はカメラを持ったまま、慎重な足取りで歩き、バルコニーに出た。
そのバルコニーからのいつもとは変わらない筈の景色の中に、それはいた。

 巨大な舞妓だ。巨大な舞妓が舞を舞っている。ここから概算して、およそ一キロの距離はあるだろうか。
そんなに遠くからでもはっきりと視認できる程の規格外のスケールだ。
巨大な舞妓がいる位置は、方角的には南東に当たった。

 僕は唾を呑み込んだ。あれは、何だ?
舞妓は周辺のビルやマンションよりも遥かに巨大だ。
少なく見積もっても、全長は二百メートル以上はありそうだった。

 巨大な舞妓は白塗りの化粧に、紫色を基調とした着物を着て、雨上がりの空の下で優雅に舞い続けている。
空は先刻よりも雲が少しずつ薄れていき、太陽の光が地上を照らす割合が高くなっていた。

 よく見ると、どうやら彼女は小学校の校庭に立っているようだった。
その校庭を、あの舞妓は彼女の舞を披露するための演舞場として使っているのだ。
校庭の面積は、彼女の身体で殆ど埋まっている。

 学校周辺の通りには数台のパトカーが陣取っていた。
おそらく現場はよっぽど混乱し、緊迫した状況にあるのだろう。
無理もない話だ。あんなに巨大な舞妓が小学校の校庭に突如出現するなんて、一体誰が予想できただろうか?

 しかし当の舞妓は、周囲の様子など気にする素振りを見せることなく、彼女の舞に集中していた。
まるでそれが自分の使命であるとでも言わんばかりに。

 いや、もしかすると、彼女は舞妓ではなく芸妓なのかもしれない。
実際のところ、僕にはその区別が付かなかった。ただ僕は便宜的に彼女のことを、「舞妓」だと呼んでいるに過ぎないのだ。
しかし僕にとってその相違はもはや、差して重要なことではなかった。

 彼女の舞は美しかった。
それは彼女自身の圧倒的な存在感にも関わらず、静謐な雰囲気を放っていた。
その舞は蒸し暑い梅雨の気温を、急速に冷ましていくかのような不思議な効果さえあるようだった。

 彼女の背後には太平洋が広がっている。そんな海でさえも、彼女の演舞を引き立てるために世界が急遽セッティングした背景美術なのではないかと錯覚する程、その一連の動作に僕は魅了されていた。

 咄嗟に僕は、手に持っていた一眼レフのカメラを彼女に向けてシャッターを切った。
その行為に何か特別な意味がある訳ではない。それはただの反射的な行動に過ぎなかった。

 だが僕は抵抗不能なブラックホールに吸い込まれるように、巨大な舞妓の写真を撮り続けた。
さらにもう一枚シャッターを切った際、一瞬彼女が僕に視線を向けたような気がした。
まさか、あの距離から僕の行為に気付いたのだろうか?

 それを契機に、僕は彼女に向けてシャッターを切るのを辞めた。
おそらく僕は私立探偵という職業柄、無断で他人の写真を撮影することに慣れ過ぎているのだ(勿論、普段の僕は私用で他人を撮影するようなことはしない)。
いくら彼女が一キロ先から視認できるほど巨大であっても、勝手にその姿を被写体に収めることは褒められた行為とは言えないのだろう。

 しばらくの時間、僕はレンズから顔を上げて彼女の舞を鑑賞していた。
ふと突然、彼女は今まで続けていた舞の動作を中断し、腰を屈めた。
それから彼女は右腕を校庭の外に伸ばし、周囲の通りに停まっていたパトカーの一台をその手で掴み取った。

 彼女の突然の行動に、周辺の警察官達がその様子を呆然と見上げていることが確認できる。
僕も彼らと同じく、ただそれを眺めている他なかった。

 彼女はパトカーを片手に持ったまま、それをじっと見つめ続けている。
およそ一キロの距離がある白塗りの顔からは、正確にその表情を読み取ることはできない。

 だが僕は何となくではあるが、彼女は微笑んでいるような気がした。
そして何か穏やかでないことをするつもりではないかと僕は思案した。
車内に人は乗っているのだろうか? 距離が遠くてこちらからは確認できない。
この時初めて僕は、自分が冷や汗をかいていることに気が付いた。

 やがて彼女は立ち上がり、パトカーを片手に携えた状態で校舎の方まで歩き出した。彼女にとってはほんの数歩の距離だ。
そして彼女は校舎の前に立ち-その後ろ姿は毅然としている-そっとパトカーを校舎の屋上に置いた。

 その間、周辺に駐車していた他の数台のパトカーは、小学校から距離を取っていた。
それから彼女は校庭に戻り、あの静謐な舞を再開した。

 その突然の奇妙な行動に、僕は少し呆気に取られていた。
彼女の印象と今の行動には明らかに整合性が取れていない気がしたからだ。それほどまでに、その二点の間には致命的なギャップがあった。

 しかし僕は彼女の何を知っているというのだ?
つい今しがた初めて目にしたばかりじゃないか。ましてや、あんなに遠くにいる彼女の性格や本性など、僕に分かる筈がない。
彼女の行動の真意など、理解できる筈がないのだ。

 それから僕はバルコニーからの光景に見飽きて、部屋に引き返そうとした。
するとその直後、あることに気が付いて僕は顔をしかめた。

 バルコニーに置いてある観葉植物の傍に、吸う筈のない煙草の吸殻が落ちていたのだ。
僕はそれを見て、溜め息を吐く代わりに口笛を吹いた。
溜め息というのは吐けば吐くほど、それに比例してストレスが増長していく傾向にある。
一方で、口笛というのは吹けば吹くほど、それに反比例してストレスが減少していく傾向にあった(しかし吹き過ぎは逆効果になってしまうので要注意だ)。

 そしてこれらの法則は全て僕の個人的な経験則に基づいているため、そこには何ら客観的な根拠はない。
だが僕はストレスを感じたり、ある種の焦燥感に駆られた際には、口笛を吹くことが独自の習慣になっていた。

 皮肉を込めた口笛を吹き終わった僕は、その吸殻を指先で掴み取った。
そして僕は薄い青空を覗かせる曇り空に向けて、思い切りそれを放り投げた。
僕の放った誰かが吸った吸い殻は、空中に曲線を描いて、すぐ真下の通りに墜落した。

 僕はその様子を見て、それなりに満足した気分だった。
僕は煙草なんて一切吸わない。吸ったことさえない。脳内の血の巡りを悪くさせ、身体に悪影響を与える代物など何の合理性もないからだ。

 見上げると、やはり彼女はまだ舞い続けていた。
しかしさっきの彼女の行動以来、僕は彼女の舞にもはや魅力を感じることはなくなっていた。

 鬱屈とした季節の影響によるものか、少し喉が渇いていることに気付いた。
僕はバルコニーを後にし、部屋へと上がり、冷蔵庫まで向かった。

 冷蔵庫の中身はすっかり空だった。まるでそれは今の僕の頭の中のように、虚しいくらいに閑散としている。

 そうだ。僕の頭は混乱し、一時的に真っ当な思考力を失ったような状況に陥っていた。
マリリン・モンローの突然の表情の変化とその消失。巨大な舞妓の出現とその奇妙な行動。

 僕の精神状態はかなり疲弊していた。
僕の平穏な昼下がりの日常に、亀裂が走るような出来事ばかり先刻から立て続けに起こっている。
そのために僕の思考回路は、幾多の理解できない不条理によって急激に熱せられ、ショートしてしまうような気配さえあった。

 だから僕は文字通り今すぐにでも、頭を冷却する必要があった。
冷蔵庫の中は、人が一人入れるスペースが充分に確保されている。
この陰鬱で理解しがたい現実から逃避するために、いっそのことそれに入ってやろうかと僕は思った。
しかしすぐにその考えは陳腐に思えて、それを僕は放棄した。

 冷蔵庫に入って頭を冷やそうなんて瑣末な考えに至った時点で、僕の頭はすぐに何かで冷やすべきなくらいに冷静さを欠いている。
しかし僕の目の前には、その頭を冷やすことができそうな冷蔵庫がある。
そして僕は、この堂々巡りの思考を永遠に抹消するために、何度もかぶりを振った。

 それから僕はキッチンに向かい、グラスに一杯の水道水を注いだ。
僕はそれを一気に飲み干した。それは僕の渇いた喉を潤してくれ、歪んだ思考を正常に戻してくれた。

 不意に、それまでの静寂を切り裂くかのように室内に電話の音が鳴り響いた。
音の出所は、僕のすぐ隣にある固定電話からだった。僕は受話器を取った。

 通話口からは雑音が入り混じっていた。
「もしもし?」
『あぁ、良かった。やっと繋がったわ』聞き覚えのない女の声が言った。ガラスのように透き通った若い女の声だ。
仕事で関わった人間だろうか。電話の相手が誰なのかを見極めるため、記憶の海を彷徨っていると、続けて向こうから声がした。
『あなたは、あの舞妓を見た?』

 あの舞妓。おそらくどう考えても『あの舞妓』のことだ。しかしどうして僕にそんなことを訊くのだろう。
「えぇ、見ましたよ」
『あなたには、あの舞妓が何なのか分かるかしら?』
「さぁ、見当もつかない」
『そうね、あなたにはきっと分からないでしょうね。そうよ、きっとあなたにはそんなこと分かる筈がないのよ』

 何なんだ、この会話は?
彼女が一体誰なのか、僕に電話を掛けてきた要件も、そしてこの話の着地点も何もかもが分からない。
しかし何故だか僕は受話器を置けなかった。
「それで、あなたにはあの舞妓が何なのか分かるというんですか?」僕は訊いてみた。それについて少し興味が湧いたのだ。
『当然でしょ。知ってるに決まってるじゃない』
「差し支えなければ、教えてくれませんか」
『そうね……良いわ。教えたげる。あなたになら教えてあげても良い気がするの。うん、あなたになら教えてあげても良い気がするわ』

 それから彼女はこう続けた。『あれはね、幽霊なの』
「幽霊?」僕は訊き返した。予想外の返答だ。
『そうよ、あの舞妓は幽霊なのよ』
「真っ昼間に小学校の校庭で舞う巨大な舞妓の幽霊か。どうしてそう思うんです?」
『私がその舞妓の幽霊だからよ。今あなたの部屋をじっと見つめながら話してるの』
僕は受話器を降ろして電話を切った。

 悪戯電話か? 受話器を握っていた右の掌が少し汗ばんでいた。

 僕はふとバルコニーの方に視線を向けた。
およそ一キロ先に、巨大な舞妓が怪しげな微笑で僕の方を見ていた。
彼女の微笑は、明らかに近寄り難い不気味さを宿していた。

 彼女は右手で電話のポーズを作り、三十度ほど顔を右に傾け、こちらに笑いかけた。
その直後、再び部屋に電話の音が鳴り響いた。
僕はもう受話器を取らなかった。

 僕はバルコニーへと通じる窓を閉じ、錠を掛けて、カーテンを閉めた。
それからペンタックスの一眼レフを手にし、部屋を後にした。

 エントランスから出ると、やはり梅雨特有の陰鬱な空気が僕の身体に張り付いてきた。
僕は口笛を吹きながら軽快な足取りでシビック・ハッチバックに乗り込み、エンジンキーを回した。

 バックミラーを確認すると、後部座席にマリリン・モンローが座っていた。
すぐに振り返ると、そこにはもう彼女の姿はなかった。

 全ては一瞬の出来事だ。
再び僕は口笛を吹き、オフィスへと車を走らせた。

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