2階建て、RC造、30㎡、左右おばさん

大学生の頃、誰もが憧れる下宿というものをしたく親に懇願したところ二回生からならOKという中途半端な制限を出されたのでとりあえず一回生は勉学に励んでいるように見せ、二回生になる少し前に念願の下宿ライフを手に入れました。初めての一人暮らしというと夢が溢れますよね。大学の近くに住もうか、いや近かったら友達の遊び場になり荒らされそうだな、インテリアはどうしようかな、隣に同じ大学の女の子が住んでないかな、その子と仲良くなってーー、と淡い期待を込めつつ頼りがいがなさそうなおじさんがやっている賃貸屋さんに足を運びました。出来るだけ広い!バストイレ別!独立洗面台有り!と学生には中々贅沢な条件を矢継ぎ早に叩きつけると大学からは少し遠めですが自転車で10分程の物件を案内されました。新築とは程遠いのですが小綺麗な部屋で、実家の、4.5畳!物・漫画いっぱい!未だにロックマンパネルを飾っている勉強机有り!の僕の部屋が霞んで見えるぐらいの良物件でした。壁と床の薄さが気にはなりましたが、僕の頭の中では左右には女子大生が住んでいたので却ってこれはいい、いいのでは?おほっ?と期待が膨らむ一方でした。もうタイトルで盛大にネタバレしてしまっていますが左右は50代ぐらいのおばさんでした、ちなみに下も斜め左下もおばさんでした、そうですおばさんの巣窟でした。サークルの仲間との話題では、女性専用マンションの向かいに住んでいたら毎日授業で一緒になる美人の子がいてーー!なり、たまたま住んだ部屋の隣が同じ学部の女の子でーー!なり、羨ましすぎエピソードを披露されたのでお返しに様々なおばさんの話を、下の階のおばさんの原付は冬場になるとエンジンが中々着かない話、朝いつも同じタイミングでアパートを出るでっかいサングラスのおばさんの話、ゴミ出しの日を指摘してあげたら憤怒の化身になったおばさんの話など、おばさんの話題に尽きない学生生活を送っておりましたが、下宿の効果虚しく留年後に中退してしまいました。いえ、両隣がキャピキャピの女子大生なら楽しく一緒に授業に参加し、朝も起こしてもらえて留年を免れ、素敵なキャンパスライフを送っていたはず。そう、留年や中退の原因の全てはおばさんなのです。万物を司るものはおばさん、宇宙の始まりはおばさんなのです、ちょっとふざけましたすみません女子大生とキャッキャウフフしたかった。現状はしがないサラリーマンをやっており、月の稼ぎで何とか一人暮らしが出来ております。今の住処を考えると、あの2階建て、RC造、30㎡のアパートはかなり刺激的な物件だったと思います。まだ生きてるかな、憤怒のおばさん。憤怒のおばさんに想いを馳せながら新幹線の中からお届けしました。本社のおばさん達に会いに出張、行ってきます。

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