見出し画像

司書さんたちと私

私の通っていた高校の話をするとインターナショナルスクールか帰国子女だと思われる確率9割越え(※1)なので、理解が追い付かなくなったときは架空の高校の話だと思っていただければ幸いである。

(※1)盛っていない。あとは信じてもらえない。



〇司書さんたちと私

私が通っていた高校の図書館は、本に挟んである貸し出しカードと一緒に、短冊に自分の学年・クラス・出席番号・名前を書いて出す、というスタイルだった。

他の高校の図書館の様子を知らないのだが、私の通った高校の図書館は何故か漫画が多かった。漫画のジャンルも幅広く、最新の少年誌から、古い少女漫画、ここにあっていいのか?な青年誌までいろいろである。
その当時には珍しく、各社アニメ系雑誌も毎月入荷されており、確か週刊の漫画雑誌(ジャンプとか)もあったはずである。

一般書も大分おかしく、かなりの面積のライトノベルコーナーがあったり、地下の写真集があったり、エッセイかと思って読み始めたらただただアングラな経験カミングアウトした本だったり、図書館では見かけないタイプの男子生徒が2人でこそこそしていたから何かと思えば裸婦デッサンのポーズ集でニヤついていただけだったり"G” の写真集があった記憶がある。

……本当に普通の本もあったとは思うが、あまりに ”ヤバい本” の印象が強すぎて記憶から薄れている……。
私は新紀元社のF-Filesシリーズや、色の名前の図鑑(何種類かあった)、あさのあつこ先生の『No.6』等をよく借りて読んでいたと思う。

そんな魔境みたいな図書館だ。
図書館の番人である司書さんも、それはまあ愉快なお姉さんの2人組(※2)であった。

(※2)事情に明るい方は違和感があるだろうが、この点は事実である。

図書館業務は基本司書さんたちと図書委員で回っていたはずなのだが、図書館に入り浸る馴染みの顔ぶれがいたので、司書さんたちは「どうせいるならこれ本棚に戻してきて」等と、いつも良いように顎で使っていた。

私は図書館の真上に部室があったので、先輩しかいない部室に行きたくないあまりに、部活が始まるまでの時間に図書館に避難しては、本を借りて読んでいた。
その為、司書さんたちに覚えられるのも早く、私が貸し出しの処理をしている間に、司書さんが代わりに貸出の短冊を書いてくれていたことはしょっちゅうである。
ちなみに学籍番号制ではなく、毎年クラス替えがあったのだが、毎年のように出席番号まで全部暗記されていた。



そんな仲良し司書さんたちであったので、その内「私のおすすめ読んで」と、勝手に私の名前で漫画を借り始めた。

借りるという表現はおかしい。
図書館の漫画を自分の漫画のように貸し始めた、が正しい。


2人いた司書さんのうち、片方の司書さんは主に歴史モノ少女漫画を、もう1人の司書さんは主に青年向けを出してきた。
例えば大和和紀先生の『あさきゆめみし』は、少女漫画・歴史・古い絵柄の理由から、自分からは絶対に手を出さない漫画だったが、「源氏物語ってこういう話だったのか」ととても分かりやすかった。
ちなみに性格が良いので末摘花が好き。

逆に同級生との間で話題になった漫画が図書館にないか尋ねたところ「貸したくない」と職権乱用された
その後もしばらく「貸したくない」「おもしろくないよ」「一応倉庫にはある」「倉庫に行きたくない」「貸したくない」「それより違うの読もうよ」と言われ、渋々貸してくれた後も「まだ読むの?」「早く読み終えて次行こうよ」と言い続けていた。
完全に家の本棚である。



けれど、その強制貸出という経験があったから「絵柄の好みだけだと、おもしろい漫画には出会えないんだな」と、絵柄はともかく内容を見ようと努力するようになった。
そうして子供の頃「何かこわい漫画が載ってる……(※3)」と避けていたジョジョも今や好きな漫画の1つだ。

(※3)初見ヘビーウェザーは怖すぎた……。
 

本当にいろんな漫画を借してもらったが、その後自分で購入するくらい気に入った漫画もある。
その1つが『MASTERキートン』だ。

先日よりNetflixで配信が開始されたと聞き、ふと司書さんたちのことを思い出してこうして筆を執った。



高校3年の冬、受験真っただ中で登校してくる学生が少なくなった静かな校内の、冷え切った廊下を歩いて図書室に入ると、暖かな空気と、「おっ!どうだった?」と感想を問う明るい声と、勝手に上限冊数まで借りられた次の漫画の山が待ち構えているのである。
今でもよく覚えている光景の1つだ。

……ちなみに当時の私は一般受験であった。受験真っただ中である。
前述の通り、私は自発的に借りておらず、勝手に借りられて待ち構えているのである。
受験生に何てものを与えているんだ。


学校司書の仕事を私は詳しく知らないのだが、貸出の対応もあるが、メインは整理や事務作業等で、生徒との接点も本来は図書委員が多いのではないかと思われる。
少なくとも自分の好きな漫画をゴリ押しで貸すことは絶対に業務ではない。

だが、間違いなくこのプレゼン強めな司書さんたちから『外側だけで選り好みしないで、本質を見ろ』と教えていただいた。
そして、この時貸してもらった漫画から、新しい出会いにもつながった。

 
私にとって、かけがえのない、たのしかった高校生活の思い出のひとつである。



〇余談:実際読んだ本

記憶を頼りに、話題に出した読んだ本を探してみた。

話題に出した『強制貸出』の1つ『あさきゆめみし』

新紀元社のF-Filesシリーズ。近接武器はロマン。

言わずと知れた名作『No.6』

内容はそこそこ覚えていたが、内容があまりに過激なので、言葉をものすごく選んだ『エッセイかと思って読み始めたらただただアングラな経験カミングアウトした本』

わくわくしながら読んだ『地下の写真集』


『"G" の写真集』はマジで表紙からヤバくて私の精神衛生上よくないので出さない。
タイトルは『G(カタカナ)だもん』で、amazonでその強烈な表紙を見せてもらえるので、本当に苦手な人は検索をかけないことを強くお勧めする
ただ内容はかなりおもしろかった。大分アグレッシブなことをしていたりするが……。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?