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友情が長続きする友人としない私

SNSを見ていたら、学生時代の仲の良い友人Aが「Bとその子供と遊園地に行ってくる」と投稿していた。

AとBと私は、三人揃って仲が良かった。それどころかBは私の一番仲の良かった相手でもある。
しかし、今の私はAとBのような仲良さはない。一緒に遊びに行くどころか、連絡すら取らない。
それを寂しいと思うかどうかはさておき、卒業してから10年以上経っても仲良さを維持できることはすごいなと正直感心している。


私は、どちらかと言えば、友達が入れ替わるタイプの人間である。

私の性格は、他人に言わせると「優しすぎる」「裏表がない」「絶対に良い人だなって分かる人」らしい。一応客観的事実として、自分から積極的に友達をなくすような難のある性格ではない、ということを記しておこう。
自覚しているのは、来るもの拒まず去るもの追わずであるくらいか。

Aとは小中高と同じ学校だったのでいろんなタイミングで会うことがあるのだが、Bと最後に会ったのは、Bの子供が生まれた少し後くらいなので、少なくとも5年以上は会っていないと思われる。

女性間では「子供ができるとタイミングがね~」などと言われたりもするが、子供がいるのはBだけである。私もAも恋人すらいない。
そもそもBの住んでいるところと、Aと私が住む町は300km以上離れているので、そうそう会えるものでもない。ちなみにAとは2kmしか変わらないので、Aと私がBに会う条件は大体一緒である。
恐らく会えばそれなりに話は弾むのだろうが、今はAとBの思い出話の中に私がいるだけだ。


一応自分なりに、友情が長続きしない理由を考えた。

ここまで現状を述べたが、正直に言ってしまうと、何ら悲しくもないのである。
「遠い地で元気にやってるのか」とか「AとBが遊びに行ったのか、二人とも元気そうでよかった」とかその程度である。

何故か。
どうせ会っても話す内容がないからだ。


昔の友人との話題となると、仕事か、男女関係か、家庭か、過去の思い出話になりがちである。

が、仕事の話は、あまりに価値観が違いすぎたり、こちらに守秘義務が多いので成立不能である。

子供のいるBの話はいくらでも聞けるが、こちらは結婚もしていないので、向こうが恐縮してしまう。

男女関係は、Aが人のゴシップとエグイ下ネタが大好きで、世の中に下ネタが嫌いな人間はいないとすら思っていそうな勢いに対し、私は潔癖気味で下ネタが苦手なため、ただただ苦痛な時間を強いられることになる。

そして過去の思い出話に関して「そんなこともあったね」程度にしか関心がない上に、過去の出来事に対して意見の相違が出てくる(※)ため、基本的に反論しないで聞く私は苦しみを抱くだけになる。
(※Aの一番嫌いな人が、自分の好きだった人なので、終始好きだった人の悪口を聞かされるため)(なお、Aはそれを知っている)

では趣味の話でもするか、となると、もうお互いに未知の世界の話なので、相槌合戦になってしまう。

ところで、最近の私の周りの人間との普段の会話について考えてみた。
おおよそ、時事問題や政治経済の話題、最近見た映画やテレビやyoutube、最近読んだ本、仕事の話、学校(※去年まで社会人学生だったので)の話……などである。


はい。
まあつまり、人が同じところに留まるのは難しい、ということだ。
それぞれのステージ、舞台が変わった。
ただそれだけだ。


かつてAとBと3人で一泊二日の旅行をしたことがある。
バスと電車を乗り継ぎ、景色を見て、食べ歩きをしながら、学校の話に花を咲かせ、旅館で美味しいご飯を食べて、温泉に浸かり、また大移動するというかなり忙しなくて愉快な弾丸旅行だった。

先日、ゼミの卒業旅行に卒業しているにも関わらずついて行ったのだが、実はこの時、かつて3人で出かけた町にも立ち寄った。
「昔、友人と遊びに来たことあるんですよ」と私は言った。
同じものを見て、当時の私は学校の話をしていたというのに、今は歴史や地学や経済の話が飛び交っている。なのに突然川で水切り始めたり、冬の海に入ったり、全力で遊びに行く。
今の私は、今の私がいるこの環境が楽しい。



ということで、
私が卒業旅行で「人生最高の贅沢をしてしまった……」と言っている頃、かつての親友たちが仲良く遊園地に行っているのはちょっと面白いな
と思って、これを書き始めた。


長々書いたが、結局本当の違いは『何』に重きを置いているかよりも『誰』に重きを置いているか、だと思う。
AもBも『今まで出会ってきた人を大切にしている人』で、私は『今そばにいる人を大切にしている人』という違いなのだろう。どちらが良いとか悪いとかではない。


ただ、私の好きな漫画『ARIA』に出てくる、主人公の先輩アリシアさんのセリフを思い出す。

あの頃の楽しさに囚われて 今の楽しさが見えなくなっちゃもったいないもんね
あの頃は楽しかったんじゃなくて あの頃も楽しかった…よね
きっと本当に楽しいことって 比べるものじゃないよね

ARIA 6巻

今ーー楽しいと思えることは 今が一番楽しめるのよ
だから いずれは変わっていく今を この素敵な時間を大切に ね

ARIA 6巻

昔3人であちこち遊びに行ったことも、あの当時の私にとっては人生最高に楽しかった時間であることは間違いない。
今でも大切な友人たちだと思っている。

しかし、今の私は、来月の卒業式で終わりが来てしまう今がかけがえのない一瞬で、今一緒にいる人を大切にしたい。



私はコメントを残すことなく、『いいね』だけをぽちっと押してSNSを閉じた。
私の「今」は2人の間にはないのだ。

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