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本が増刷・重版される目安と仕組み-出版社の企画営業が教えます

私は大手出版社で、本の初版部数や重版・増刷を判断する仕事をしていました。

よく著者や編集者から聞かれることが3つあります。

「なんで私の本は重版にならないのか?」
「どうやったら私の本は重版するのか?」
「Amazonで売り切れなのになんで増刷しないの?」

「増刷」と「重版」という言葉は、同じ意味だと思っていただいて間違いないです。

このブログでは、「重版」で統一していきます。

目次

重版の目安
重版の仕組み
まとめ

重版の目安

発売から10日で初版の3割の部数が消化、というのを目安にしています。ジャンルや本によってちがうのですが、おおまかな目安です。

この目安通り売れているかどうか、著者は知ることができません。出版社しか知りえないデータです。

営業部はいろいろなデータを組み合わせて、重版を検討します。

例えば、大御所の東野圭吾さんと、初めて本を出す小説家では、判断が異なります。

東野圭吾さんはファンがついているので、10日で3割が売れることはわかっているのです。

10日以降にどれだけ伸びるか? ということが重版の検討に必要となってきます。

初めて本を出す著者で、10日で3割売れれば、本に力があるということなので、重版を決定するのです。

重版の仕組み

Amazonとリアル書店で、まんべんなく売れることが必要です。Amazonとリアル書店では、売れ方が違うのです。

初版10,000部の本を例にします。

出版社の営業部は、このように配本(割り振り)します。

・Amazon——————–2,000部
・その他ネット書店——1,000部
・リアル書店—————5,000部
・出版社在庫—————2,000部

よくビジネス書であるのが、

Amazonでよく売れて売り切れたけど、リアル書店に投下した5,000部のうち、まだ1,000部しか売れていない、ということです。

書店は、本を出版社に返品できます。出版社はAmazonで品切れした場合、まずは在庫の2,000冊をAmazonに投入します。

これも売り切れたとします。

ただ、リアル書店の店頭にはまだ4,000冊が残っているのです。いつか返品として戻ってくるので、重版には踏み切れません。

Amazonでは品切れしたけどリアル書店には残っている。そんなことあるの? よくあるんです! こういった場合は、著名人のブログなどで本が紹介され、Amazonだけで売れたということです。

ブログやYoutubeで紹介された本は、リアル書店ではまったく売れずに、Amazonでしか動かないということがあるのです。

ほんとうによくあります。

まとめ

初版部数の7割が売れたら、出版社に儲けがでます。そして、単行本なら重版の最小部数が1,500部ぐらいです。重版分も7割売れないと儲けがありません。

本の重版はハードルが高いのです。出版社の判断もシビアになります。


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