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南イタリア・カンパニア州の古代小麦パスタ

 パスタと言えば、もうすでに日本では国民食のように当たり前に食されている材料です。どこのスーパーに行っても、コンビニの棚にも、パスタ麺やパスタ製品が並んでいます。そんな競争が厳しい材料を、小さい規模で回している私たちが、あえてパスタを輸入することになったのか、少し皆さんに知ってもらいたいと思い、筆を(キーボードを)取りました(叩いています)。

​ ロンドンで仕事をしていたときに、ナポリから山の方に向かったところにある村の出身の友人がいました。私たちがロンドンを離れる前に、最後にヨーロッパを見ておきたい、と思い北から南へ、いわゆるバックパック旅行をしていたとき。その道中で、「イタリアに行くなら、俺の実家に泊れよ!」と声を掛けてくれたその友人。でも、その友人はロンドンにいる。実家にいるのは、両親と、2人の弟。

​ ​完全、アウェーの状況で迎えてくれた村人たち。私たちの友人の友人が、駅まで迎えに来てくれたり、村のパブには、たくさんの友人の友人が集まって、言葉の壁を大幅に超えて楽しめたり、友人のお父さん、お母さん、従兄弟たちが毎日素敵な時間や食べ物を提供してくれました。

​ そんな歓待を受けた私たちが、この村を好きになるのは当然で、その村の周辺で「古代小麦」とやらを育てていると知った日には、『食べたい!』『日本に輸入したい!』と思うに至るのは当然の流れでした。


​生産者の「レンタメンテ農業協同組合」

​ 古代小麦パスタの原料の古代小麦を作っているのは、「レンタメンテ農業協同組合」という農業集団です。彼らはナポリがある「カンパニア州」のトレックーゾという村の出身。いわゆる『農家』という肩書だけでは語り足りない話を少し。

​ 都市に働きに出て経験を積んで、地元のトレックーゾに戻ってきた彼らは、たくさんの放棄地があることを知ります。イタリアでは教会が放棄地を引き取り管理するのですが、引き取ったものの何にも活かせていない広大な土地を畑に転換することを決意。教会と自治体と協業し、畑を開墾していきます。

​ オーガニック認証も受け、自然に寄り添い、環境に必要以上に負荷を掛けない作物に選んだのは、古代小麦。彼らはパスタ用に3種類の古代小麦「サラゴッラ」「セネトラ・カペッリ」「マルゼリーナ」を育てています。中でも「セネトラ・カペッリ」「マルゼリーナ」は彼らを含めて数軒の農家だけで育てている品種です。数軒の農家で育てるのは、一旦広がってしまうと種の保存が危うくなってしまうため。

​ また、2019年には国連の出先機関の「国際土地連合(International Land Coalition)」の会合をトレックーゾで主催するなど、足元の事業のみならず、持続可能な土地の利用と、作り手に利益が還元されている土地の活用方法を広めよう!という考えを世界中に広げる活動もしています。


古代小麦パスタに関して

​ 彼らの育てる古代小麦は、「サラゴッラ」「セネトラ・カペッリ」「マルゼリーナ」の3種類。それぞれの品種の「種の保存」を目的として、栽培を始めて今ではパスタを作れるほどの収穫量となりました。

​ 2020年製のパスタは4月以降の天候が芳しくなく、「サラゴッラ」が主な原料となっています。

​ 現代の小麦は、収穫量を増やすために雨風に強くするために、背の高さを低くしたり、嗜好に合わせて食感を改善したりするなどして、人類の叡智が詰まった作物になっています。一方、古代小麦は、人的な改良を行っていないので、グルテンの量が昔のままの少ない割合であったり、収穫量も天候によって大きく左右します。

​ 私たちが食べて感じたのは、古代小麦パスタは食後のお腹の「もっちゃり感」が少ないということ。

 また古代小麦を、石臼で挽いて、銅の型に通して成形し、低温長時間乾燥を掛けるので、古代小麦本来が持っている栄養成分をほとんど失うことなく製品にすることが出来ます。

​ 毎年、パスタに使用する古代小麦の割合は変わるのですが、自然に沿った産物を日本人は楽しめる文化を持っていると感じますので、是非その風味の違いを感じてください。



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