上田信治

俳人

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成分表②今からクリスマスを作ることは、誰にもできない。

クリスマスシーズンになると、街に電飾がほどこされ、東京で言えば表参道や六本木ミッドタウンのそれを、人がわざわざ見にいく。 それを見て「わあっ」と声をあげる心は、万人に分け持たれているものだ。 今からクリスマスを作ることは、誰にもできない。 クリスマスは、何世代にもわたる人々が、集合的に寄ってたかって夢を見て、今のかたちに作った。ピラミッドもそうだし、野球も、映画も、俳句も漫画もそうだ。 それらのものを生んだ集合的な心は、人間の初期設定であり、何万年かを経て、現代人にた

    • 成分表①『ビースターズ』のジュブナイルな大人らしさについて

      マンガを読んで、そこに大人らしさを見出すと、感動する。 それは、何十年も好きで読んできたマンガというメディアに、本質としての子供っぽさがあることに、気がついてしまったからだと思う(自分はその子供っぽさをジュブナイル性と呼んでいる)。 ● さいきん読んで「大人らしさ」を感じた作品に『ビースターズ』(板垣巴留/「少年チャンピオン」連載・単行本①〜⑪)がある。 ディズニーピクサーの『ズートピア』とよく似た設定の、動物擬人化キャラが活躍する少年マンガだ。 作者・板垣巴留は『

      • 「勝手にふるえてろ」に、なぜ、文化系の男性が熱狂するのかを、考えた(前レビューへの短い追記)

        「勝手にふるえてろ」に、文化系の男性が熱狂している。 これは、そのことについての、短い考察です(大島弓子「バナナブレッドのプディング」にも触れます)。 ● 多くの人がもう気がついていると思うけれど、映画「勝手にふるえてろ」に熱狂する、文化系のツワモノの人が続出している。 それは、ツイッター上の、それこそ、いたるところで目撃できる。 この人とか。 この人とか。 この人とか。 これらの人たちによる連続ツイートは、豊かな教養を背景に、視点が良く、趣味が良く、なにより

        • 映画「勝手にふるえてろ」の、どこに感心したかを考えていたら、ノートを書くことにした。

          まず、映画は、主人公ヨシカに、その独白の「聞かされ役」となる、街の人たちを与えた。 ミュージカル映画で、主人公たちが歌い出すと、通行人や店員が、とつぜん絶妙なサポートにまわる、アレのようなものだ。 「聞かされ役」たちは、ヨシカの一方的な長広舌を聞いて、微笑み、いい言葉を返してくる。 それぞれむやみと個性的な彼ら、金髪のウェイトレスや釣りおじさんやバスの編み物おばさんたちは、通りすがりでありながらレギュラーであり、主人公ヨシカの「隣人」なのだ。 原作の奔流のようなモノロ

        成分表②今からクリスマスを作ることは、誰にもできない。

        • 成分表①『ビースターズ』のジュブナイルな大人らしさについて

        • 「勝手にふるえてろ」に、なぜ、文化系の男性が熱狂するのかを、考えた(前レビューへの短い追記)

        • 映画「勝手にふるえてろ」の、どこに感心したかを考えていたら、ノートを書くことにした。